ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

お笑いで申しますれば “テンション芸” ???

 

2005年02月25日

 

さて、『続・栄光の光と影』の巻

(指定BGM: 筋肉少女帯 / 踊るダメ人間 )

 

 

前回はチャンピオン・カーニバルと日米戦で大きく作風を変えました部分まで申し述べました 『リンかけ』 でございますが、いま一歩踏み込んで申し上げますれば、高嶺竜児のボクシングにおけます “戦いの意義” も変化いたしました次第。それまでの姉弟のボクシングが、貧困と苦痛とにまみれた逆境を打破するための階級闘争の手段(注1)でございましたのが、日米戦以降は確たる理由はなくなっているのでございますワイ。

 

もはや単純に、『そこに敵がいるから戦う』 という、まさにジャンプ格闘マンガの典型に……ぶっちゃけ軍鶏(シャモ)闘犬レヴェルになりおおせているのでございます。竜児から社会的な成功への執着が薄れていきます代わりに、やたらと顔を出すようになりましたのが、車田先生一流の 『男の美学』 でございます次第。

 

古いも新しいもなく、ないしは男尊女卑であるなしとも関係なく、こうした 『ダンディズム』 について臆面なく講釈をたれる手合いと申さば、おおよそがかなり手前勝手な 『ひとりよがり』(注2)以外の何物でもございませぬゆえ、ファンでもない読者に取りましては、『うるせぇよジジイ』 と読み飛ばされるのがオチ。

 

それでも描かずにはいられませぬからは、よほど “俺様汁” が体中からあふれ出ていらっしゃるのでございましょうが……まぁどのようなジャンルでありましょうとも、創作作品とは自己主張と自己演出の反映でもございますので、そちらはある程度クリエイターとしまして必須の資質とは申せますものの、ただカッコつけたいだけという理由はいかがなものかと――さらには、そちら 『車田流ダンディズム』 そのものを、ダセェダサくねぇの程度のチープなヴォキャブラリーで語らせてしまいますのも、輪をかけていかがなものかと!!

 

 

――して、日米戦以降の展開パターンは、その後の車田作品におけます基本フォーマットの完成となったばかりではなく、前回も少し触れましたように、少年ジャンプ誌が現在に至るまでもあまた世に送り出しました熱血(対決)マンガ全般におけます “ヒット作の方程式 のひとつを編み出すこととなりましたのは、もはや吾が輩が申し上げますまでもございませんでしょう。

 

そもそもジャンプにおけます熱血(対決)マンガのパイオニアと申さば、本宮ひろ志先生の 『男一匹ガキ大将』 となりまして、こちらを大きな礎(いしずえ)に、前回 『朝太郎伝』 にてお名前の出ました中島徳博先生の代表作 『アストロ球団』 が、大胆な構図の取り方や緊張感の演出法などに磨きをかけ、さらにはこの汗にまみれるばかりか血まで噴き出します(おとこ)の戦場を、美形キャラの採用によりひろく女性に開放できましたことで一気に市場を拡大しましたのを、後続のマンガ家にも応用できます愚直な……もとい、シンプルな “ひな形”(注3)に落ち着かせましたのがこちら 『リングにかけろ』 となるようでございますワイ。

 

上記のエピソードは、太田出版さんの再編集版 『アストロ球団』 の第二巻にて、車田先生ご自身によります解説がございまして、そちらでは本宮先生の荒々しいタッチが女の子から敬遠されがちだったのを残念に思っていましたところ、その系譜にありながら見事に女性ファンを獲得していきました中島先生の力量にいたく感銘をうけたそうでございますワイ。それ故に、車田先生はご両者を師と仰いで精進をかさねるのでございますが、やはり演出面では中島先生により強い影響を……と申しますより、飾らない憧憬を抱いていらっしゃったようにお見受けいたします次第――マァ、好意的に見ますればのお話ではございますが。

 

そのようなジャンプ誌内におけます “熱血精神” の流れを存じておりますれば、対峙します両者のあいだにやたら巨大な太陽が描かれます図などは、チャンピオン・カーニバルでもいくつか散見できますことや、そして日米戦からは “あれもこれも”(注3)といった感じに 『アストロ的テンション』パク……もとい、流用されますことの甚だしさがなおのこと判るのでございます。されどバッサリ言い切ってしまいますれば、そのどれもこれもが安易な猿真似でしかございませんで、喩えますれば小学生がその有り余る熱狂的ファン心理のほとばしるまま、登場人物の面相を書き換えただけの “キン肉男”(注4)をノートに殴り書きしているようなレヴェルとしか、吾が輩には申しようがございませぬ次第。

 

要しまするに 『アストロ』 のいいとこ取りだけしているにも関わらず、画力、構成力、演出力すべてが中島先生には遠く及んではおりませぬため、大韓○国などで堂々と臆面もなく売られております性格の歪んでいそうなピカチュウよろしき粗悪な模倣品と、さして変わらないのでございますワイ――それ以前に、話の流れも展開も決着の付け方も安易すぎて、モウ――(溜息)。

 

前回も申し上げましたように、菊ねえちゃんから巣立っていった竜児ならびに日本 Jr の五人とは、詰まりますところ車田先生ご本人のお姿そのものでありますことは容易に察しがつくのでございますが、その “姉離れ” を英断したのは編集者サイドからなのか、それとも車田先生のご意志でございましたものか……遠からずは人気も安定し、創作技術も問題なしと踏んだ編集部が、先生のさらなる独自色ならびに作家性の発露を願って自由裁量に任せたのではないのかと愚考するのでございますが、結果としましては “車田スタイル” の完成は見ましたものの、先生のストーリー・テラーとしての能力は根こそぎ腐ってしまったのでは……。

 

もはや対ドイツ戦あたりからは、セリフなどを真面目に追わずとも、斜め読みでおおよその内容が理解できてしまう有様でございますゆえ、これではマンガではなく絵本ではございませぬか。とくにギリシア十二神のくだりではそのあまりのお粗末さに、『くっだらねぇ』 と思わずお店の中で声を出してしまい、周囲の怪訝な視線を頂戴してしまいましたくらいでございますワイ。

 

日本 Jr の面々がいちいち死んでしまいますのも必然性のかけらも感じられませぬばかりかイキナリな印象はぬぐえませぬし、何よりヒキもタメもないあっさり過ぎます展開でクライマックス・シーンにぶち当たりますのもマンガとしていかがなものかと。さらにはオーラスで大将格の敵がそれらしい前置きを用意して出てきたにも関わらず、ちょっと苦戦する程度で主人公サイドが当たり前に勝つというのは、“男の美学” としてカッコいいのか? そちらって予定調和にもなり得ませぬ、ただの “砂場のガキのヒーローごっこ” 心理ではなくて何なのでございましょう。

 

もし吾が輩が連載開始時からの担当編集者でございましたら、十二神をめぐりましては先生と泣き喚きながらの掴み合いの喧嘩をしておりましたことでございましょう――忌憚なく申し上げますれば、やはりチャンピオン・カーニバルまでがなまじ “地に足のついた” 正統派ボクシング・マンガでございましたゆえ、口惜しいくらい残念なのも本心なのでございますワイ。

 

 

以降は、もはや速読法かパラパラ・マンガかといわんばかりに(注5)、ページをめくらずに流し読みをしてラストに至った訳でございますワイ。かつて程度の低いオトナが、『マンガを読むとバカになる』 などと放言したものでございますが、こちらの後半ほとんどは場当たり的な展開ばかりなうえに動きのないイラストじみたカットが多く、『たしかにこれではバカになりますわナァ……』 と、ものすごく悲しくなってしまいました次第……と申しますか、こちらの作品のみで大雑把にひと括りとしてしまいますのは、他のマンガに失礼でございますかナ。

 

とまぁ、それでも伝説の “カラー最終回” に実際お目にかかれまして、曲がりなりにも一時代を築きましたクリエイターの力量のほどを確認できた気はいたしますが、最終的な感想としましては、『思っていたよりもヒドかった』 この一言に尽きますワイ。もちろん、以後の諸作品を追います気など毛頭ございませなんだ。

 

 

――途中の気休めとしまして、アシスタント諸氏が描かれてますとおぼしきカットから、その担当者を推量してみるなどということをしてみたのでございますが、吾が輩が思い描きましたお名前とは、飯盛広一氏(注6)野部利雄氏(注7)、富沢順氏(注8)などが挙げられますが、ただ画風がそれっぽく見えましたのが散見できたのみで、もちろん根拠はございませぬので悪しからず。ちなみに当時のアシスタント諸氏につきましては車田先生の主催されます “神輪会” というプロダクションがございまして、こちらに実名(ペンネーム?)で紹介されていた記憶がございますワイ。

 

この神輪会。たしか増刊号か何かの読み切りに、対ギリシア戦をセルフ・パロディしたマンガとして先生をはじめとしますアシスタント諸氏が登場されましたことがございましたような――それも 『実録・神輪会』 なる題名できちんと単行本化されていた記憶もございます次第。ともあれ、あのラストで菊ねえちゃんがほんとうに幸せになれましたのかどうか、非常に疑問に感じました男爵でございましたとサ……。

 

 

 

 

 

注1:なんだか60年代の学生運動の闘士っぽい??(笑)。

注2:よく考えますと物凄い言葉

注3:ショーペンハウエル。

注4:ペンネームは 『やきたまご』 あたり

注5:もう真面目に目を通します気も起こりませんでしたワイ

注6:「これから動物園」「レース鳩アラシ」などが有名。当時もう活躍されていたかも。

注7:「わたしの沖田くん」「弥生の大空」などが有名。

注8:「企業戦士YAMAZAKI」が有名。デビュー作「コマンダーゼロ」は人気があったのに、師匠の車田先生の横槍で打ち切りになったとか……。

 

 

 

 

 

 

おいおい、そっちじゃないぜ!

 

 

2005.02.25 (C)Mephistopheles von Münchhausen

GeoCities Japan