ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

NHK衛星第二放送の粋なはからい??

 

2005年03月11日

 

さて、『あの時君は……』の巻

(指定BGM: 勝新太郎 / 座頭市子守歌 )

 

 

二月第三週のBS2におけます昼の映画放送帯は、これと申しますようなことわりも触れ込みもなしに、何故(なにゆえ)か1960〜61年の大映映画で占められておりました次第。されどキャストに目を通しますれば、一瞥するのみで “隠れ勝新ウィーク” と銘打ちましてもおかしくはございませんラインナップ。そのタイトルをば列挙させていただきますれば、これなん……。

『まらそん侍』、『ドドンパ酔虎伝』、『天下あやつり組』、『飛び出した女大名』、『元禄女大名』

にございますワイ。

 

『天下あやつり組』 には出演されておりませんものの、 とくに 『まらそん侍』 とは、ジーク・ノイ太郎(注1)こと勝新太郎氏主演デビュー作にございます次第。氏の映画デビューそのものは、1954年の 『花の白虎隊』 におけます小林八十次郎役なのでございますが、こちらの主役は当時鳴り物入りで大映映画が世に送り出しましたる市川雷蔵氏。大映ニューフェイス揃い踏み作品として制作されはしました 『花の白虎隊』 でございますが、まぁキャメラの中心に据えられますのは、誰を置きましてもまずは市川氏。完全に “添え物” 扱いにされました勝氏の忸怩たる内心たるや、察するにあまりあるものがございますナァ……。

 

その勝氏。なんとか市川氏を超えます看板俳優にならんと粉骨砕身、真摯な芸道談義から祇園での夜の豪遊まで、それはそれは一心に映画に打ち込んでおりましたのでございますが――いかんせん上記タイトルからお察しいただけます通り、コメディないしは歌謡バラエティ映画がほとんど。これではいかに勝氏が芸達者でありましょうとも、

『いくらあくせく演(や)ってみたところで、これじゃ雷蔵に勝てねぇよ!』

 

という、氏のやるせなき慟哭が聞こえてきそうでございますワイ。

 

事実、各映画を拝見してみますれば……マァ、出来につきましては吾が輩も苦笑いでお答えしますのが精一杯。そもそもがジャンプ往年のスポーツ・ラブコメ 『キックオフ』(注2)を、勝氏と高田康子(東宝)女史実写ドラマ化したような雰囲気。かの有名な 『由美ちゃん……』 『永井くん……』 の冗漫シーンを、時代劇で再現され見せつけられるようなものでございますゆえ、腰が砕けてしまいますのも致し方ございませんかと。

 

 

『ドドンパ酔虎伝』 はその名の通りの歌謡バラエティ映画となりまして、ドドンパ歌手として一世を風靡しておりました渡辺マリ女史や、“低音の魅力” でおなじみの――さらにはのちの “東の借金王”(注3)としても名を馳せることとなります水原弘氏も出演。そして脚本は “月光仮面” から果ては “愛の戦士 レインボーマン”、“正義の戦士 コンドールマン” へと至り、子供向けヒーロー・メイカーからトラウマ・メイカーへと変貌されました川内康範がご担当。

まぁこちらは “ミュージカル” と申せますほどのクオリティはございませんで、イメージとしましてはプレスリー映画全般に漂いますあんな感じ。歌と見せ場をユルいお話で縫って結んだ、映画以外にさほどの娯楽がない時代ならではの、かなりトホホな内容でございましたワイ。ただ見所としましては、“酒のみコンクール”(劇中ママ)参加者に 『脱線トリオ』 の故・由利徹故・南利夫の両御大と、お役人に益田喜頓氏お顔が。その他には……ムムム。

 

『まらそん侍』 は、もともと安政二年(1855年)より、遠足(とおあし)(注4)の伝統がございます上州は安中藩を舞台としたコメディ。『〜白虎隊』 でも競演いたしました千葉登四男氏と勝氏が恋の鞘当てを繰り広げ、その決着を遠足でつけるという筋でございますが、コメディとしましてもロマンスにしましても味付けがとってもチィプかつ(注5)お子ちゃま向けじみておりまして、この温厚なる吾が輩をしまして、

『もっと時代を鑑みまして、太陽族映画っぽくやりませい。太陽族っぽく!』

と、ついその作りのヌルさに(注6)をいれたくなりました次第。良くも悪くも、映画が大衆娯楽の王様でございました時代だからこそ作られ、封切られもしました作品でございますことをつくづく痛感いたしましたワイ――それでも、監督はのちの座頭市や、ひいてはフジテレビ版木枯し紋次郎でもメガホンを執ります森一生氏なのでございますがナ

 

そんな本筋をよそに、お城のお宝 “金の大煙管(キセル)” を狙います泥棒一味に先の益田喜頓氏と、かのトニー・“あんたのお名前なんてぇの?”・谷氏出演されておりまして、銀幕上に彩りを添えてらっしゃるのでございますが、そちらお二方を凌駕して引き離しますこと、優に五馬身というまさに文字通りのダーク・ホースが出現!

そのお方のお名前こそ、これなん大泉滉氏。当時よりかなりの美男(注7)でありますにも関わらず、口を開かばあの独特のテムポと抑揚にて、まわりの空気をかっ攫っては “マクー空間” ばりの大泉ワールドと化してしまいますインパクトと存在感は、ある意味勝新以上でございましたワイ。のちに 『おじゃまんが山田くん』岡田ファミリーの声を担当されました際に、あの声色はお年を召されてからの “味” だとばかり合点しておりましたが、まさかあんな若かりし頃からの “持ち味” でございましたとは……。吾が輩ただただシャポーを脱ぎますばかり。

 

 

――そのほか、『飛び出した女大名』、『元禄女大名』 などはもはや特筆すべき点もございませんが、 『元禄〜』 にて奥様・中村玉緒女史と競演したくらいでございましょうか。玉緒女史は “梨園の名家” 出身のお嬢様として、やはり大映挙げての華々しいデビューを飾っておりまして、当時はすでに人気女優の仲間入りをしておりました花形でございました。もちろん声もお顔も現在のようなアクの強さは微塵もなく、可愛らしい仕草がなんとも自然で、『さすがは役者一家の娘』 と感心するとともに、『こりゃあ勝新が惚れるのも道理でございますワイ』 と得心いたしました次第。

 

して、デビュー以後の勝氏がいかに役と(脚)本に恵まれず、役者として低迷苦悩していたその渦中の姿を垣間見れましたことはまこと幸甚。そちらもある意味、いかに中途半端な役柄でございましょうとも、器用にそつなくこなしてしまえる勝氏の才能がございましたからこその悲劇であったのかもしれませぬナァ……。

 

そんな勝氏に 『お前は男臭さで売ってみろ!』 と喝を(注8)入れてくださいましたのが、日本のプロレスリング開祖にしまして一躍国民的スターの座に登り詰めておられました力道山氏。そうして試行錯誤の末に、勝氏は 『不知火検校』 にておのれの “役者道” に開眼するございますのは、あまりに有名なお話。また力道山氏ばかりでなく、映画評論家諸氏も 『勝新に白塗り(注9)の二枚目を演らそうなんてのがどだい無理』 などと、当時を顧みまして口を揃えておっしゃられておりますが、吾が輩もそちらのご意見に異論はございませぬものの、皆さまがたが触れられませぬ一点のみに絞りまして言及させていただきますれば――

 

『勝新よ。市川雷蔵に勝つには演技力を磨きますよりも、まずあご下にたるんだ肉を取りませい!

 

と口を酸っぱくレモン・フレーバーに、かつライムの香りに載せましたうえで、手厳しく申し上げたかったものでございますワイ。

 

 

 

 

 

注1:伊集院光氏風言いまわし、“ヴィクトリー・ニュー太郎” をドイツ語にてアレンジ。

注2:ちば拓氏によりますジャンプ漫画。連載時はいろんな意味で各方面に名の知られたある意味の名作。

注3:ちなみに “西の借金王” は、かの藤山寛美師匠。

注4:城内から碓氷峠の熊野神社までの約30`を走るそうでございますワイ

注5:話題が勝氏だけに!?

注6:話題が(以下略)

注7:ロシア系クォーターとのこと。父・黒石氏(作家)はなにやら興味を引きますご生涯のご様子。

注8:話(以下略)

注9:時代劇などで銀幕映えさせるためのメイク。

 

 

 

 

 

 

おいおい、そっちじゃないぜ!

 

 

2005.03.11 (C)Mephistopheles von Münchhausen

GeoCities Japan