ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

群衆シーンなら、旧ソ連の映画も負けておりませぬワイ。

 

2005年06月10日

 

さて、 『これこそが “映画〜其の弐〜 の巻

(指定BGM: Popol Vuh / 黄金郷(其の弐)

 

 

『カスパー・ハウザーの謎』 ……こちらの作品におけますなによりの出色は、主人公カスパーの配役に尽きますかと。このキャスティングは監督みずから執り行われまして、抜擢を受けましたるは当時すでに40代でございました、役者未経験のブルーノ・S氏。 そんな彼が、発見時推定年齢15歳のカスパーを演じねばなりませぬと申しますと、チト不可解に思われますお客様がたも多くいらっしゃいますのでは。

 

――1828年は5月のこと。南ドイツのニュルンベルクにふらりと現れましたカスパーは、まるで決め事のように同じ文言(もんごん)を繰り返しますばかりで、周りからも当然自分からも意思の疎通がまったく叶いません状態でしたとか。して片やブルーノ氏は知的障害をお持ちで、幼少時より施設を転々とされ、その後は大道芸人として糊口をしのいでおられましたお方。

 

この世に生を受けましてこのかたを石牢(本人は 『塔』 と仰っておられましたが)に幽閉され、言葉はおろか知識の一切を摂取ならびに育みます機会に浴せませず、まさに赤ん坊の如くに真っ白なカスパーを知的障害を持たれますブルーノ氏が演じられます時、そこにヘルツォーク監督の仕組まれました巧妙な “からくり” が作動いたしますのでございますワイ。

 

遠からず、あたかも産まれたての子馬がいましも立ち上がらんとしますかのように、たどたどしくも覚えたての言葉を紡ぎ出さんとしますカスパーの姿と、その持ち前の障害から懸命に頭に働きかけつつ単語を絞り出さんとしますブルーノ氏の姿は、いつしか 『演技ならざる演技』 によりまして、20数年分の年齢差をも超えまして見事に重なって来るのでございますワイ。

 

そんなヘルツォーク監督ならではの、他に並ぶ者なき卓越した映画的表現のもの凄さもさることながら、盛り込まれましたメッセージの骨子をば、吾が輩がかいつまみまして纏めますれば、

 

『規制概念に捕われないピュアかつ自由な発想が浮き彫りにする、偏狭な文明とそれに盲従して疑わない人間たちの滑稽なまでの醜さ』

 

となりましょうか。牧歌的な映像美のお皿にゆるやかな味付けのストーリーが載せられますも、そのソースにはピリリと辛辣な隠し味が煮込まれているのでございますゾ。

 

 

さらに次作は、ドラキュラ伯爵にキンスキー氏を迎えましたる 『ノスフェラトウ』 と相成るのでございますが、こちらにつきましてはまことに勝手ながら割愛させていただきますワイ(注1)。ヒロイン役にはかのオリヴィア “布施明の元奥さん”ハッセー女史が。

 

 

さらに次なるは、またまたキンスキー氏と組みましたる 『ヴォイツェク』 なのでございますが、こちらの映画は相手役の女優さん、エーヴァ・マッテス女史カンヌにて助演女優賞を獲得されてますにも拘わらず、何故か東北新社さんからDVDがリリースされておりませぬ次第。マァ、確かに女優さんの本邦におけます認知度は高くはございませんやもしれませぬが……東北新社さん、マジでDVD!DVD!

 

 

して、お次は 『アギーレ』 と並びまして監督の代表作に挙げられます 『フィツカラルド』

 

こちらはキンスキー氏が主演でございますにも拘わらず、恋人と一緒に観られましても完全OKの保証が付きますという、類い稀なるヘルツォーク監督異色作(笑)。お話はペルーの奥地に拓けました街イキトスに、オペラ歌手のカルーソー大好きオヤジがオペラハウスを建てようと奮闘しますお話。鉄道会社設立で一度失敗しているフィツカラルド氏以下フ氏)になかなか出資してくれます実業家はおりませず、まだ開発の手が届きませぬさらなる奥地にゴム農園を拓きますことで一攫千金を狙います彼は、娼館を経営します恋人マリー(注2)から援助を受けまして船をば購入いたしまして、いざ夢に向かい文字通りの “船出” を果たすのでございますが……

 

奥地に向かいますにはアマゾン川から支流に入っていくのでございますが、途中上り下りが危険な早瀬がございますために進入は不可。そこをフ氏は別の支流へと進みます。中途で頓挫し遺棄したままの線路など鉄道資材を回収し、相変わらずアサッテの方向に進路を取りますフ氏。やがて行く手に現れましたる川の蛇行ポイント……そちらは奥地へと至ります支流も同様で、ふたつの川がもっとも近付きます地点なのでございますワイ。

 

サテ、ではいかにして船をば向こうの川に移しますのかと申しますれば……吾が輩極力ネタバレは避けとうございますが、マァこちらのからくりはカヴァー写真にも使用されておりますゆえ開陳してしまいますが、つまりは積み込みました資材をば用いまして、船を山越えさせますのでございますワイ。

 

このような壮挙、かつてイスタンブール攻略戦にて 『山を走る艦隊』 戦法をば実現させましたオスマン・トルコ帝国はメフメトU世くらいではございますまいかと。して、フ氏をこの地に光臨しました神と合点しましてマンセー状態の現地住民の協力もありまして、木をば伐り倒し、山肌をば開削しまして船の道をこさえます様もさることながら、ウィンチにて本当に320dもございます船が斜面を登っていきます姿には、掛け値無しに 『いやぁ、映画って本当にいい(以下略) と、全身全霊をもちまして感じ入られますこと請け合いにございます次第。

 

ただ一方で、『う〜ん、プチ環境破壊!?』 (注3)と思ったり思わなかったりでございますが、特撮やCGなどの小手先の技術を一切用いませね総天然素材のみにより程よく醸し出されました興奮は、“作りモノ映画” ではなまなかに味わえますものではございませぬゾ!

 

……して、見事未開の密林地帯に先鞭をばつけましたるフ氏。しかしてその結末たりますや……さすがに吾が輩そこまで不粋ではございませぬゆえ、ラストは是非皆さまにもご覧いただきたく存じ上げます次第。とにかくオーラスにキンスキー氏が見せます表情が飛び切りイカス〜ッのでございますワイ! モウ “素敵” とか “カッコいい” と申しますレヴェルなどではございませんで、ただただ惚れ惚れしてしまいます次第。

 

 

もし 『わたし映画が大好き!』 と広言なされておられますお客様がいらっしゃいましたら、こちらの映画をばご覧いただいておられませぬのでしたら、ハッキリ申し上げまして “モグリ” の烙印を押し付けられましたうえに頭髪まで剃られ、さらに 『私はドイツ兵と寝ました』 と書かれまして、嘲笑と罵声の渦巻きます街中を引き回されますこと請け合いにございますゾ!!(注4)

 

――オヤオヤ、またぞろ今回も予定より長くなってしまいましたゆえ、こちらの続きはまた来週にて。

 

 

 

 

 

 

 

 

注1:正直吾が輩にはピンときませんでしたワイ……。

注2:クラウディア・カルディナーレ女史。

注3:実際こちらの点は少しく問題になったそうにございますワイ。

注4:こちらのネタもまた判らないようでございますれば、さらに輪をかけてというお話になってしまいますが……

 

 

 

 

 

おいおい、そっちじゃないぜ!

 

 

2005.06.10 (C)Mephistopheles von Münchhausen

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