ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

まさしく “目からウロコ” の新発見 !!

 

2006年07月29

 

さて、『 怪奇漫画にも涙 』 の巻

(指定BGM: 女神転生U / 魔界の屋外BGM )

 

 

さて、先日ふらりと中古本屋に立ち寄りまして、故・田中角栄元首相関連の書籍か、ないしは矢作俊彦氏著作・ 『あ・じゃ・ぱん』 がございませんか探してみたのでございますが、どちらも旬を逸してございますからか、影も形も見当たりませんでした次第(注1)。そんな中、マンガ単行本コーナーに足を向けますれば、ふと吾が輩の愚眼を引き寄せます背表紙がひとつ。

 

これなん 『蔵六の奇病』。かの楳図かずお御大に次ぎます怪奇恐怖マンガの大家、日野日出志氏の代表作のひとつにして氏のプロ・デビュー作ございますナ。ヴィニールがかかっておりませんでしたので、まずは試読とばかりにページをめくりますれば……、

 

現在にも続きます氏独特の人物フォルムはすでに確立されておりますものの、初期の作品のためか画風はまだ可愛らしく、話も悲愴ではございましてもせつなく、かつ儚いまとめ方でございましたのにはオドロキでございましたワイ。他にもこちらの単行本には 『叙情怪奇シリーズ』 と銘打たれました短編がいくつか収められているのでございますが、いずれも健全で “お子様に安心して読ませられ” ますレヴェルの良質な悲劇の数々がそこに。

 

とくに 『鶴が翔んだ日』 は起承転結もしっかりとした展開に加えまして、そこはかとないブンガク臭を感じさせますストーリー。そして素直にポエジィな絵柄の主人公キャラ・ユキを中心に織り成されます美しくも可哀想な物語とはこれなん――

 

 

生まれつき体の悪い少女・ユキはほとんど寝たきりで、障子をあけて見える外の景色と、その障子を使った影絵でひとりで遊ぶのが数少ない楽しみでございました。ユキは冬にやってくる鶴たちに名前を付けて毎年待っておりましたが、年々数が減っていることに気がつきます。

そんあある年、とくにお気に入りだった鶴たちも目の前で衰弱し、死んでいく光景を目の当たりにします。思わず外に飛び出したまま気を失ってしまい、肺炎をこじらせてしまうユキ。家で使用している農薬が原因だろうとお母さんもおばあちゃんも話していますが、治療費を稼ぎにお父さんが都会に出ていて男手がないため、無農薬で作物を作ろうなどとは逆立ちしてもできません。また、現在のように農薬の含有成分に環境への配慮が浸透していない当時では、現実に起こってもおかしくないお話

 

 

そうして、死期を迎えたユキの夢に出てきたのは――ここまでの話の流れで、ベタとは百も承知の吾が輩をしましても、胸の奥より募り来たります激情の鎌足 かたまりをどうにも御しかねました次第。それでもさすがに店内でございますゆえ、こみ上げて参ります激情を懸命に歯がみにて堪えようと試みておりましたが、吾が心の中ではヴァーチャル・ファットマン(注2)がだれ憚りませずうなり声&滂沱の涙をほとばしらせておりました次第。

 

 

……そんな吾が輩の激勉中の東大通(注3)よろしき面相に困惑げな視線を注がれております店員さんに気が付きまして、そのまま本を万引き もとい棚に返しますこともできませず、思い切りまして購入を決心しました次第。結末につきましては吾が家にてロッキング・チェアに揺られつつ拝読いたしましたが、こちらで申し上げますような無粋はいたしませぬワイ。

 

こちら 『鶴が〜』 には他にもメルヘンチックなエピソードなどもちりばめられまして、氏の多面的な感受性の高さを教えていただきましたナ。また、いずれの収録作品も物語としての完成度はすこぶる高うございまして、こちら以後に恐怖とおぞましさを媒介に、人間の心に何面何層にも数限りなく広がります闇とみにくさを、かの象徴的な筆致でもって描き綴られていきましょうとは……マァそちらの片鱗がチラホラと散見されますので、ある程度の予想はできますが。

 

さるにても、こちらの収録作品におけます日野氏の作風には、どことは無しにつげ義春先生のセンスが感じられますのは吾が輩だけでございましょうか。画風ばかりではなしにお話の流れも含めましてなのでございますが……氏はこのまま 『叙情怪奇シリーズ』 路線でも十分にやって行けましたような気もいたしますが、そうなりましても日を待たずして持ち前の鬱屈しました創作意欲が、いずこかでグジュリと破裂してしまいますでございましょうことは必定。

 

なにより下手にまとまりが良すぎますと、よくございます 『子供の頃に読んだことはあるけど、名前がしかと思い出せない漫画家』 のひとりに甘んじねばなりませんでしたことも確かではございますまいか。要しまするに日野日出志氏の日野日出志氏たります所以は、

『この本を読んだ奴は三日後に死ぬ

 

と、『地獄の子守歌』 のあとがきのように、お子様がたを無根拠かつ無闇に絶望のどん底に突き落としまして即乾性ポリマーで蓋をなされますようなオチと、生理的嫌悪に揺さぶりをかけますかの画風表現に尽きますことは、やはり疑いなき事実でございますかナ。

 

されど、意外なところで認識を新たにいたしましたこちら日野日出志氏。こちらの愚行録を書き上げますに際しまして、ネットにて資料を検索いたしますれば、なんとパロディ・マンガのオムニバス誌にて、藤子・F・不二雄氏の大代表作 『ドラえもん』 をカヴァーされておりますとか……う〜ん、興味がそそられますワイ。

 

 

 

注1:とくに『あ〜』 はAmazon.com にて現在も高額取引中

注2:サンライズ作品 『戦闘メカ・ザブングル』 に登場。

注3:小林よしのり氏著作 『東大一直線』 より。

 

 

 

 

 

おいおい、そっちじゃないぜ!

 

 

2006.07.29 (C) Mephistopheles von Münchhausen

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