ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

愛玩犬に備わる恐るべき攻撃能力!!

 

2006年08月18

 

さて、『 美と醜のはざまで の巻

(指定BGM: 中尾ミエ / 可愛いベイビー )

 

 

さて、吾が輩が三軒茶屋に住まいして “世田谷区で274番目に美しい納税者” の誉れ高かった頃でございますから随分と前のお話。うららかな陽射しに包まれながら、吾が輩が駅に向かいまして歩いておりますと、前方に何やら蠢(うごめ)きます小物体に気付きましたのでございます。

 

色合いは薄茶色。サイズとしましてはフットボールよりも大きい程度。そして愚眼を疑いますのは脚らしきものが無く(注1)、強いて申しますればカプセル型の胴体のうえに頭部とおぼしき球が乗っかり、そちらが全身を左右に小刻みにくねらせつつ前進しているのでございますワイ。

『うわっ、巨大イモムシ!!』

――直感的にそう認識しました吾が輩は全身が竦(すく)み上がりまして進むも退くもままなりませず、無弁状態となりました食道から今にも噴出しそうな胃酸をどうにか押し止めますのが精一杯。 そんな吾が輩の様子に気が付きましたものか、UMA(未確認生物)の奴めはスキマスイッチ くるりと振り返ったのでございます。てっきりビロウドスズメガの幼虫のようなニセ蛇フェイスがこちらに向けられるものと合点し、吾が輩は 『毒でも噴き付けられましたら如何いたしましょう』 と、正味なおハナシ腰が抜けます寸前という体たらく。

 

……が、こちらに向けられましたのは、タンポポの綿毛に包まれましたかのような真ん丸顔のポメラニアンちゃん。あの短躯極太巨大イモムシから、輝かんばかりの愛くるしさを振り撒くまでの月面宙返りな豹変ぶりは、実際吾が輩しばし認識と反芻のためのお時間を要しました次第。よく見ますれば、こちらのポメラニアンちゃんは全身の毛を立たせましたうえで上手に丸く刈っておりますご様子。なるほどアイデアでございますナーなどと感心しきりに可愛いらしさを愛でておりますれば、またぞろ何事かに興味を引かれましたものか、ゆず くるりと背を向けましたのでございます。

 

さすれば恐怖ふたたび!あれだけ抱き上げて頬ずりしてあげたかったポメラニアンちゃんが、またも巨大短躯イモムシに!その正体と先刻の可愛いらしさは承知しておりますのに、イモムシ姿にはどうにも強烈な吐き気を禁じ得ませんから不思議。すると側の焼鳥屋さんの店内から声がかかり、ポメラニアンちゃんが振り返りますと、胃酸のたぎりもどこへやら。いつまで眺めていても飽きのこないでございましょう天使の笑顔がそこに。

 

喩えますれば正面でございますれば絶頂期の桜玉吉氏がタッチのファンシー・フェイス。背を向けますればまさしく古賀新一氏が筆にによります 『妖虫』。双方でまわりを取り巻きます風景、人物の描写までも(注2)がらりと一変してしまいますとは……ある意味ケルベロス級の魔犬。この超合金Zでございましょうとも疲労破断を起こしてしていまいそうな超絶的な寒暖の落差に身をゆだねておりましては、吾が輩の胃壁も断裂してしまいますので、ポメラニアンちゃんあらためまして魔犬ケルベロスが飼い主さんとじゃれておりますうちに DAT もとい脱兎のごとく逃げ出したのでございますワイ。

 

 

ようやく落ち着きを取り戻しました新玉川線駅のホームにて、列車を待ちつつつらつら愚考いたしまするに、『常軌を逸した恐怖に遭遇すると吐き気を催すと申しますのはけだし真実(注3) という事と、RPGゲームにおけます “チャーム” ならびに “パニック” の魔法とは、けだし斯様な状態ではございませんか、という実感。

 

“チャーム” は相手によりましては逆に猛々しくいきり立たせてしまう場合もあるやもしれませぬが、“パニック” は攻撃力の無力化にかけましては非常に有効ではございませんかと。魔法、念動系の攻撃でしたらどうにか反撃出来ましょうが、遠からずあの身の竦みようと腰の砕けようでは、武器などてんで振り回せませんものナァ。

 

さるにても、一般にイモムシやナメクジなどに抱きます生理的嫌悪感とは、そもいずこを源泉としておりますのでございましょうや。生命を脅かしますほどの危険はございませぬし、直接痛みを与えてくることもまずはございますまい。おそらくはあの外観と動きに、本能的な拒絶反応を示すのではないかと愚考いたします限り。理屈ではなしに 『なんとなく』、『何は無くても』 見ていられないのでございますナ。

 


 

ときに、第三者の吾が輩は彼奴(きゃつ)の後ろ姿に、高橋よしひろ氏(注4)が代表作 『白い戦士ヤマト』 の必殺技、ブーメラン殺法の尋常ならざる恐怖を感じましたが、果たして飼い主、ないしはカットを担当されましたトリマーさんは、吾が輩のように不意の恐怖に襲われましたりしませんのでございましょうか。

 

かの慈愛恐怖という相反する存在の完全なる合一体を受容できます精神の高み、そしてを深み会得されましたその極意とはこれ如何に。もちろん吾が飼い犬へのあふるる愛ゆえに恐怖を克服されましたものでございますことは申し上げますまでもございませんが、やはりかの魔犬と地下室に二人っきりで篭り、天使の笑顔悪魔の背中とのめくるめく万華鏡を、髄喜の涙と吐瀉物とにまみれながら目を反らさずにしかと眺め続けましたが末の賜物ということにございましょうか。あるいは拘束服を着用し、スクリーンに大映しになりました愛犬の遊ぶ姿を、器具にて強制的に開放されました瞼に目薬を射されつつ、深層心理に刷り込まれますまで見せ付けられたのやもしれませぬナ。

 

ないしはロボトミィ手術なる方法もございますし、はたまた 『可愛がるぞ、可愛がるぞハードに可愛がるぞ』 という、ぬめるようなイヤラしい声色にて囁き続けられますテープを聞いていらっしゃったのかも……あるいは、かの後ろ姿を捕まえまして、 『巨大イモムシだ!』 などどファンシーな妄想 イマジンなどをいたしますのは吾が輩ぐらいというお話なのかもしれませぬナァ。……されど正味なおハナシ、かの魔犬をダッコしまして上から見下ろしますれば、どのように見えますのでございましょう。キュートなタワシ???

 

 

 

 

 

注1:角度的に見えませんでしたワイ。

注2:吾が輩を含めまして。

注3:小学生が喜んで読みそうな超常現象や怪奇体験本などでよく拝見した表現でしたワイ

注4:氏の神懸かり的な 『お犬様フリーク』 ぶりもまた恐怖感を禁じ得ませぬナァ……

 

 

 

 

 

 

おいおい、そっちじゃないぜ!

 

 

2006.08.18 (C) Mephistopheles von Münchhausen

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