ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

お前も吸血鬼にしてやろうか!!(デーモン小暮閣下風)。

 

2006年09月15

 

さて、『 刮目してご覧あれ! の巻

(指定BGM: The Dammed / New Rose )

 

 

さて、先の “角さんブーム” の真っ只中と申さば、その余熱にてアルミホイルにくるみましたサツマイモがホクホクに焼き上がりますくらいヒート・アップしておりましたほどの吾が輩。そんな頃、ふと駅前にございますマンガ喫茶に、さいとうプロ作画によります 『小説・吉田学校』 が全巻ございましたことを思い出しまして、拝読に足を運びましたのでございますワイ。

 

か つての 『天上天下事件』 以来じつにご無沙汰いたしておりましたゆえ、蔵書のラインナップが変わっておりませんか少しく心配ではございましたが、棚の隅の方ながら無事全巻揃ってお りました次第。本にはそこそこの回転がございました痕跡も残っておりまして、吾が輩つい満面の笑みとともに、

『ゲボハハハ』

と貴族ならではの怪物大王笑いを漏らしてしまいましたワイ。

 

されどいざ拝読いたします段となりまして、角さん初選挙からお亡くなりになられますまで……要しまするに日本の戦後政治の歩みは、既にいくつかの書籍にて知悉しておりますゆえ、これと申しますような特段の発見もございませぬまま、ストーリーとしましてはサラリと読み流しの体でございましたナァ。

 

また、本そのものも正しくは 『小説・吉田学校』 に加筆修正を加えられました 『歴史劇画大宰相』 シリーズと名を改められておりましたワイ。こちらは各話の冒頭で当時の世相や流行を紹介され、トビラにはその象徴的な人物、品物を配されておりますという 作り。もちろんさいとう氏も大いにゆかりのございます貸本漫画や、大阪万博などの解説は外せませぬが、トビラ絵のほうはなかなかにそのチョイス基準に珍なるセンスがございまして、『人気を博したNHK人形劇 “プリンプリン物語”』 はまだ頷けはいたしましょうが、『泉谷しげるが好演した“吉展ちゃん事件”の犯人』……とは、あまりにマニアックに過ぎませぬかと。

 

またピンクレディー・ブームをば 『子供が熱中していたその人気が大人にも飛び火し』 と、漫才ブームを 『毒舌と本音のトークは刺激を求める若者の支持を得たが、程なく人気も下火となった』 など、まるでなにがしかの遺恨でもございましたのかと疑いを禁じ得ませぬほどの容赦なき斬りつけぶりにはチト唖然。

 

――そちらはサテ措きまして、現在に至りますまで劇画界のトップを突き進まれてきましたさいとう氏。特に劇画は絵の表現技法におきましては開拓者でもございまして、よりリアルかつ鮮烈な描写を求められて、様々な小道具を用い工夫を凝らされたらこそ、今日の漫画文化が築かれましたことは、吾が愚考録をご愛読いただいておりますお客様がたはご存知のことと思われますが……これを知っている奴は三日後に死ぬ!!

 

 

――などという無責任なハッタリもまた措いておきまして、そんなアカイ もといパイオニアでございますさいとう氏も、このIT時代まっただ中のご時世に、手の動きなどの軌跡や驚愕の際の顔横のトゲトゲが作画に欠かせませんのには、『習い性となる』、『三つ子の魂百までも』、『ダッセぇ』 など感慨さまざま。

 

も ちろん全編をさいとう氏のみが自ら執筆されたわけではございませんで、氏が認められましたアシスタントの手によります部分も多々ございますのは申し上げま すまでもございませぬかと。師匠の薫陶を十分に受けられながらも昨今の流行りに応じた軽妙な筆致がございますのを拝見いたしますと、『石森プロにもMEIMU氏(注1)のような御仁がいらっしゃいますしナァ』 と、老舗の看板を守っていかれます新時代の担い手を頼もしく思いますことしばし。

 


 

 

するうちに予定よりはるかに早く 『漫画大快楽』 『劇画大宰相』 を読み終えてしまい、サテ帰りまして 『探偵!ナイトスクープ』 の録画を観ましたものか、あるいはネタ探しにもう一作品拝読いたしましょうかひと思案……さすれば棚をひと廻りしましてから進退を決めましょうと背表紙の 列を一瞥しますれば……吾が目に映りましたるは平野耕太氏が作品 『HELLSING』 の文字。

 

かつて大滝よしえもん閣下の日報で取り上げられましたナーと思い出しまして手に取りました次第―― して、始まりましたる第一話。

 

『ハハァ、吸血鬼をより強力な吸血鬼を使役し、かの者の銃器にて退治していきますお話でございますナ』

 

と概要を掴みますのは容易でございましたものの、吾が輩の勘に障る箇所がかなり多い……と申しますかAU ドコモかしこもイヤ。 ありきたりかつ長ったらしいキザなセリフも鼻につきますし、見せ場の描き方も教則本通りと申しますか、 『マァこう来るでございましょう』 という予測の範囲を越えませんのがなんとも愚眼もションボリ

 

 

そのうえで展開のテムポと話のノリはかなり高めでございますゆえ、吾が輩をしまして、

「作者はいま、『おれカッコいいマンガ書いてる』 ってご満悦なんでございましょうナァ」

と失笑の体。まさしく第二の 『天上天下』 遭難事件と落胆の色合いが強まったのでございますが、ただ 『やりたい事は判るのでございますが……』 と、平野氏の作品イメージが掴めますのが 『天上〜』 との大きな違い。

 

さらには中途に入ります脱力ギャグ(注2)や巻末に断続的に収録されております、不定期読み切り掲載作品と思われます 『CROSS FIRE』 を拝見いたしますれば、氏の脳内にては作品世界が確立されまして久しいものと判り、あるいは氏も想像に結びます暴力奇譚をケント紙上にまだ縦横に活写できず、懊悩されてらっしゃるのかも……などと愚考しつつ、手直しの余地が見受けられますコマに対しますダメ出しにも手心が加えられていきますという展開に。

 

 

――そうしまして早くも二巻も半ばともなりますれば、描写力ならびに演出力も安定し、英国国教会VSヴァチカンという宗教的ならびに吸血鬼掃滅をめぐる闘争に加え、文字通り 『第三の』 勢力が出現。ナチス・ドイツの残党にして全員吸血鬼と化すことで不滅の軍隊 『ラスト・バタリオン』 を創設せしめた少佐(注3)とその “ぶっ翔んでる” 仲間たち……称しまするに “ミレニアム機関” にございますワイ。

 

そも、戦後61年目を迎えまして、洋の東西を問いませず “第三帝国の生き残り” におきましては、虚実いずれも様々なドラマを生み出して参りまして久しいもの。特に親独的で犯罪者引き渡し協定を批准しておりませんでしたブラジルと、近隣の南米諸国はそのテのお話の宝庫でございますことは、吾が輩が申し上げますまでもございますまい。

 

とくに劇映画にては、“世界の平和をおびやかします悪の組織 として規模も大小さまざまに登場させられましたのは、お客様がたのご記憶にもございますかと。例を挙げますれば米国は人気テレヴィジョン・ドラマ 『特攻野郎Aチーム』 の劇場版にて、はたまた本邦にてはクレイジー・キャッツの映画 『怪盗ジバコ』 にも、制作費に応じましたほどよくチープなナチスの残党が現れておりましたナァ。

 

あんな連中が本当に後継者でございましたら、かのアドルフ・ヒトラー総統が、『敗北を迎えたドイツ民族は、祖国とともに滅ぶべきだ』 と、頑として国外逃亡を潔しとせずに首都ベルリンの地下壕にて自決を選ばれましたのも頷けますというもの――そちらはマァさて措きまして、かの少佐率います当大隊は元来から 『永遠の軍隊』 を編成する目的で組織されました特務機関。総勢1,000人の大隊を基本単位に据えられましたのは、かの伝説の脱出部隊をモチーフにされましたとは申せけだし正解かと。

 

ヘタに地方軍閥規模の団体を出されましたところで、却って胡散臭さが増すばかりでございましょうし、また戦後日本に政界フィクサーとして君臨されました故・児玉誉士夫氏が、大戦中ご自身の名を冠されました機関を率いられ、中国大陸にてあんなコトやこんなコトをなされていらっしゃいました事実をば考慮いたしますれば、結構リアルな規模ではございますまいか。

 

――そんなミレニアム機関は斯様な連中にありがちな “世界征服” などは志向いたしませず、戦争とそちらに付帯しますすべての破滅的状況を現代世界に再現いたします事こそ至上命題という、世にもストーリーを小理屈要らずに盛り上げられます便利な ……もとい世界中のが恍惚の表情で失神しかねませぬ究極的快楽に目覚めてしまいました困った集団……されど、そちらこそ不死の生命力を得られましたからこそ体感可能の高等至極な愉悦ではございますが。

 

 

まぁそのあたりの細かいくだりは本編を読んでいただきますといたしまして、このように何やかやございまして決戦会場はブリテン島はロンドン。少佐一味は “空中戦艦” と称されますV2ロケット塗装の超巨大飛行船に、不老不死かつ精強無比の武装親衛隊を乗せて押し寄せます――主人公アーカード氏はとある任務にて大西洋上に赴かれ、彼の主人インテグラ・ヘルシング女史も対策会議に外出中。そんなヘルシング本部の留守をワイルド・ギースどもと預かりますは、元婦警にして吸血鬼途上のサブキャラ、ヴィクトリア・セラス嬢

 

既に人間とは異なる存在であることは承知しながらも、最後の一線を踏み越えられません彼女。吸血鬼化武装親衛隊の襲撃を受け、死線を戦い抜きつつも敢えなく斃れられました傭兵隊長ベルナドット氏の亡骸を食らいますことで完(まった)き吸血鬼へと変貌を遂げますのでございますが、その女性らしい葛藤といい仲間の喪失によります生への諦観の克服といい、マァ申しますれば真っ向直球勝負のベタ展開ではございますものの、吾が輩手放しに 『こーでなくっちゃ!』 と膝を打ち、シャポーを頭上に振り回さんばかりにはしゃいでしまいましたのは、平野氏が演出技量の円熟のほどを知らしめてくださいます好例でございましょう。

 

 

して、混乱を極めますロンドンを、さらなる混沌へと掻き混ぜますマドラーがまたしても投入されます……これなんヴァチカン・イスカリオテ第13課を率いておられましたマクスウェル司教が、新たに大司教と栄達されますとともに編成されました修道騎士軍団にございますワイ。

 

大司教は大英帝国に対し異端の審判を下し、死刑を 宣告。そうして裁きの鉄槌を振り下ろしますかのように、大型ヘリが続々と降下。ヘリの後部ハッチから甲冑を鳴らし、クー・クラックス・クランよろしき白い 三角頭巾を被りました騎士団が白十字の楯を押し立て、これまた長槍とも見紛う超ロング・バレルのライフルを携えましてザシザシ隊列を組みます様はまさに圧巻! 斯様に時代を違えました連中とM44迷彩野戦服を纏いました武装親衛隊とが、古都ロンドンせましと破壊ならびに殺戮の限りを尽くしますのは、ヴィジュアル的な構成といたしましてはもちろんの事、彼らを同次元に並べようと申します発想そのものの奇天烈加減もまた、じつに肌が粟立ちますほどにとってもエキサイティング!!そしてロンドンっ子らはまったくをもちましていい面の皮

 

 

さてすっかり舞台が調いましたうえに、ロンドンの一般大衆の盛り上がりもグルーピーならぬ食屍鬼(グール)にて否が応にもヒート・アップ。そこへ満を持しましても舞い戻りますは主人公アーカード氏。立ち姿もアングルの採り方も申し分ございませず、まさに千両役者の貫禄にて群がります敵対者どもを睥睨いたします……歌舞伎の舞台でございますれば 『よっ、鳴駒屋!』『音羽屋!』 などと喝采に湧く一大クライマックスにございますワイ!!

 

吾が輩もはやこの辺りから辛抱たまりませず、実際6巻以降からはいちいち1ページめくりますたびに、「スゴい、こいつぁスゴい!」 と声に出しておりましたほど。こちらを“マカロニほうれん荘”で喩えますれば、『ステキよぁ〜お客さ〜ん!』 でおなじみのクマ先生状態でございますワイ。

 

――では今回も長尺となりそうでございますゆえ、一度こちらで “第一部  〜男爵先生の次回作にご期待ください〜(注4)” とさせていただきとうございますワイ。

 

 

兎にも角にも、かの “第一回男どん賞” 受賞作 『BLEACH』 すらも、『とどのつまり亜・ドラゴンボール路線避け得ませんのでございますナァ』(注5) と、言い知れませぬ先細り感にわびしい思いでおりました昨今。そんな吾が心の “ヴァーチャル懺悔の神様 も、莞爾と微笑みまれながら頭上に特大の円を形作られましたこちら 『HELLSING』。次回はいま少しディティールにつきまして触れてみましょうかと思ったり思わなかったりでございます次第。

 

 

 

 

注1:『キカイダー02』 はコンプ継続中。

注2:これ重要。

注3:具体的なご尊名はどのあたりで出ましたでしょうか?

注4:少年ジャンプ的に解釈いたしますれば、次回は……???

注5:もはやギャグ部分しか拾い読みしておりませぬ……戦闘シーンはすでにインフレ進行中。

 

 

 

 

 

 

おいおい、そっちじゃないぜ!

 

 

2006.09.15 (C) Mephistopheles von Münchhausen

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