ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

いずれ氏の関連作品はコンプせねばなりますまい……。

 

2006年11月16

 

さて、ヒデキ、感激! の巻

(指定BGM: ロマンポルシェ / 裸で書いたラブレター

 

 

――その昔、まだ吾が輩が小学校低学年のみぎりのお話にございますワイ。休み時間に教室のオルガンに数人の女の子が群がって代わるがわるに弾いておりましとお思いくださいマセ……そちらだけでございますれば、別段めずらしくもございません日常の風景ではございますが、とある女子が軽快に 『猫ふんじゃった』 を弾いておりました際にそれは起こりましたのでございます。

 

曲の中盤に差し掛かりますと、やにわにその女子は手を交差し、いつしかテムポも畳み込みますようなアップ・ビートにて弾きはじめたのでございますワイ。吾が家では日々朝日ソノラマのソノシート もといショパンやモーツァルトに親しんでおりました吾が輩も 『猫ふん』 のような俗な 庶民的な曲の演奏法など存じ上げませず、すっかり “ノリノリ” 気分にてアクロバティックなオルガン・プレイをば披露されております彼女の姿に、

 

『ああ、吾が輩はいま、21世紀の日本を代表する天才奏者の誕生に立ち会っておりますのか!』

 

と、無知蒙昧 純情無垢な感動にマジ胸をふるわせ、吾が輩証券取引所の彼女株も、一気に 『ただのクラス・メート』 から 『お嫁様候補』赤丸急上昇しましまもの……その後、かの演奏法が曲弾きでもなんでもございませず、『猫ふん』ではポピュラー以前の至極当たり前な奏法でありますことが判明し、吾が輩おのれの不明を恥じ入りますとともに、彼女株もお嫁様からまたぞろセフレに格下げ もといクラス・メートに落ち着きました次第。

 


 

その後、吾が輩の人生のなかでそれなりに各方面の 『どてらい男(ヤツ)』 には出会いましたものの、その道に長じまして天下を取り、名を全国区にされました御仁は悲しいかな、ついぞ現れませなんだ。やはり一世の傑物にめぐり逢えます機会というものは、そうそうございませんようで――。

 

マァつとに名を世に馳せられておりますアーティスト諸氏を指しまして、『彼奴らは才能に恵まれておりますナァ』 と申しますのも当たり前に過ぎますし、まず才能がございますからこそいまのお姿がございますのが彼ら。斯様な評は本末転倒もいいところにございましょう……と申しますか、なまなかな作品ではシレツな過当競争に生き残れませんのが “芸の道”。ヘタな褒め言葉は却って失礼というものかもしれませぬナ。

 

されど、ヘソがワーム・ホールよろしく四次元的に曲がっております吾が輩は、いかに愛好しております作家さんでも、ダメ出しに関しましては容赦いたしませんのが流儀。そんな吾が輩でも、覚えず両の手で柏手を打ってしまいます “真実(ほんとう)”の漢(おとこ)がこちらにお一方。その御仁のお名前とはこれなん、“大和田秀樹”氏にございますワイ。

 

 

――さよう、かの 『魔法峠』 シリーズや、『機動戦士ガンダムさん さいしょの巻』 にて吾が愚考録でもおなじみの漫画家さんでございますが、今回ことさらに氏をクローズ・アップいたしましたのは、氏の作品の幅広さにマァ圧倒されましたからに他ありませぬ。昨今では主にカドカワ系の雑誌にて仕事をなさっておいでのご様子にございますが、先日の 『HELLSING』 の折りの駅前マンガ喫茶にて、『HEVENイレブン』 なる背表紙を見掛けておりましたのでございますワイ。

 

その時点では、 正直さほど食指が動きませずスルー致しました次第。ただ注意を引きましたのは、発行が秋田書店さんという点。それこそ 『〇×先生の作品が読めるのはジャン〇だけ!』 のキャッチ・フレーズでおなじみましたように、漫画家の雑誌専属がフツーでございました80年代に比しまして、昨今はまこと出版社の垣根が低くなりましたご様子にございますが、秋田書店と申さば代表的な雑誌 『ちゃお』 と並びまして 『週刊少年チャンピオン』(注1で名を馳されております有名どころ。

 

ヤング・アニマル誌は技来静也氏の 『拳闘暗黒伝セスタス』 第一巻を拝見いたしました際に、

『アレ……吾が輩いま1970年代後半の少年チャンピオンを読んでますのかナ?』(注2

と戦慄の錯覚に陥りましたが、かの大和田氏の画風からはあまりイメージが湧きませぬナァ……せめて、『大魔法峠』 に広告のございました 『警死庁24時』 でございましたら手を伸ばしておりましたやもしれませぬが。

 

そんなこんなでまたぞろ本屋を(注3そぞろ歩いておりますれば、ずらり並びます背表紙の壁の中に 『大和田』 の文字が。マァこのところ “旬” な氏のことでございますゆえ、またぞろ新作が発刊されましたものと合点しましたが、ことさらに吾が輩の気をば引きましたのは、発見いたしましたのが講談社のコーナーという点。

 

それもサイズが青年誌掲載作品が一般的なB6版でございますと申しますから、もしやと思いまして手に取ってみますれば、これなん “ヤンマガKC” の名を冠しました作品名 『野獣社員ツキシマ』 第一巻。こちらには吾が輩も、『なんと、大和田氏もついに“パパと踊ろう”地下沢中也氏(注4なみになられましたのでございますナァ』 と、驚きを禁じ得ませんとともに、ついつい落涙に暮れますことしばし。

 

まだ第一巻のみという事もございまして、『ヤンマガ掲載記念』 としましてご祝儀万引き もとい購入をいたしまして帰途につきましたが、帰りの電車内では保阪正康氏『東條英機と天皇の時代』 を拝読中でしたので 『野獣〜』 は家までの刺青 ガマンといたしまして……と申しますより、車内でマンガやゲームに興じられておりますリーマンは、いかなる面構えでございましょうともIQが低く見えますゆえ、吾が輩は車内で開きますは小説のみ。あるいは雑誌なれば 『ネイチャー』誌『ニューズ・ウィーク』誌『鳩よ』誌(注5と限らせていただいております次第――あとはこちらの愚考録の下書きをケータイにてしたためておりますくらいでございますが、傍目にその姿がどのように写っておりますかは、吾が輩が斟酌いたしますところではございませぬ。

 

 

……して、帰宅しまして早速 『野獣〜』 を拝読いたしますれば、主人公ツキシマはかつてのバブル好景気時代に入社いたしました、いわゆる“バブル組”(注6。昨今の実社会におけます “バブル組”は、当時の景気にウカれ切りましたユルい審査基準安易な大量雇用により、“余剰人員” あるいは “リストラ要員” という不名誉な目され方をされているなどと聞き及んでおりますが(注7、こちらツキシマ氏もご多分類に漏れませぬものか、所属は 『社史編纂室』 といういかにもな部署。

 

されどひとたび社に巨大プロジェクト、ないしは難事業が持ち上がりますれば出動し、尋常ならざるヴァイタリティと胆力の太さ、そして余人には及びつきませぬ深慮をもちまして見事解決いたしますという “モーレツ社員奮闘譚”。つまり彼は、24時間戦えますか?』(注8 と問われておりました往事の “ジャパニーズ・ビジネスマン” におけますポジティヴな面を純粋に培養しながら、今日まで精勤しておられましたのでございますワイ。

 

コマ内よりヒリヒリと吾が輩のデリケートゾーンな肌を焼きますかのようなツキシマ氏の“熱さ” はただただ圧巻にございまして、拝読しておりまして気恥ずかしさ もとい気圧されてしまいますことしばし……ただ唯一、どうにも不審な点を挙げますれば、イシャギャグはどこだ?』 と、まったくをもちまして吾が輩を笑みに誘います展開がございませぬコト。全編が 『サラリーマン金太郎』 レヴェルの血の滾りぶりに包まれておりますのは、あるいは大和田氏一流のギャグと考えられなくもございませんが、そちらの反面、

『じゃっどん、ものごつか漫画家のごたる!』

と、聞きかじり鹿児島(かごんま)にて氏の作風の幅広さを思い知らされましたものにございますワイ。

 

 

 

ときに大和田氏。作品の構成力もさることがら、その画風も吾が輩のお気に入り。吾が輩はとくに背景が写実的な漫画家さんが♪ヘェイヘェ〜 DAISUKI!(注9にございますから、建物や物品をリアルに描きつつも、そちらからキャラクターが乖離を起こしておりません大和田はまさにどストライク……マァ、どことは無しにキャラがやや縦にヒョロ長いような気もいたしますが。そのお気に入りぶりを喩えますれば、在りし時期の星野桃嬢のようなもの。

 

 

今様の画風に切り口するどいギャグ・センスにて広くマンガ雑誌を席巻されつつございます大和田氏。吾が輩おそらくは新進気鋭でノリにノリまくられております三十路前あたりの御仁かと思い込んでおりましたが、さてプロフィールを拝見いたしますれば1969のお生まれとか……1969年?なんと、吾が輩のたった1コ上! それでいて、斯様にテンション高き馬鹿さ加減 もといハジけっぷりにございますとは……吾が輩、正直申しあげまして少々引いてしまいました次第。

 

さるにても、同世代であれだけ目覚ましきご活躍をなされておられます方がいらっしゃいますのはなんとも心強きもの。今後も年齢相応に落ち着いた雰囲気 もといこれまでに吸収されてきました技巧や蘊蓄を盛り込まれた“ゆかいなまんが” を期待したいものでございますナ。

 

 

 

 

注1:逆でございますかナ?

注2:画風がたまにミョ〜な貫禄を醸しますことしばし(笑)。

注3:最近は方々の本屋で面白そうな書籍を物色し、TSUTAYAにて注文しますという姑息な 無駄のございません活用を実現

注4:けっこう好みの作風でございましたワイ。昨今はなにをなされておりますやら……。

注5:まちがいはどれ?

注6:作中では“バブル世代“。

注7:ケッコウ前にNHKにて、この“バブル世代“ どストライクな連中の現在を扱った特番がありましたナァ……MCはなんと伊集院光氏でしたワイ!!

注8:本来的には黄色と黒で書きとうございました。このコピー、吾が輩的には奴隷みたいでイヤ〜ン。

注9:アイキャッチ=若かりし日の藤崎奈々子女史。

 

 

 

 

 

 

おいおい、そっちじゃないぜ!

 

 

2006.11.16 (C) Mephistopheles von Münchhausen

GeoCities Japan