ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

懲罰大隊の数そのものも異常に多すぎ(最終話エンドロールにて)。

 

2006年12月01

 

さて、ソヴィエト赤軍かく戦えり の巻

(指定BGM: 筋肉少女帯 / イワンのばか

 

 

――前回の愚考録にて、吾が輩決して電車内ではマンガ雑誌、単行本のたぐいは拝読いたしておりませぬ旨をば申し上げましたが、そのくせここしばらくの愚考録と申さば、なべて漫画のお話ばかり。これではいずれ、『ええ格好しい男爵』、『よそ行き貴族』、『似非知識人階級』 などの不名誉極まりませぬレッテルを貼られかねませぬかと被害妄想 危惧しております次第。

 

そこで、吾が輩かねてより考察にいそしんでおります、『日本の開国と軍国化とその帰結』 をば解珍・解宝(注1) もとい開陳いたしましょうかと存じますものの、いかんせんそれでは “愚考録” ではなしに “賢考録” になってしまいますゆえ、『開軍帰』 論はいずれの機会に譲らさせていただきます所存。

 


 

して、今回は最近拝見いたしました洋ピン もとい海外の“戦場ドラマ” について申し述べさせていただきます次第。まず最初は旧ソヴィエト連邦発、『捕虜大隊』 シリーズ5編。こちらは現在吾が輩の形而下におけます一大情報収集元、TSUTAYAさんにて、しばらく前に発見しまして気になっておりましたのを、先日の半額キャンペーンがございました際にレンタルいたしましたのでございます。

 

原題はロシア語なので吾が輩トンと見当もつきませぬが、ご聡明なお客様がたにございますればすでにお気付きのことと思われますが、いわゆる小林源文氏が代表作 『カンプグルッペZdf』 の旧ソヴィエト赤軍歩兵版にございますワイ。劇中のセリフでは 『懲罰大隊』 と称されておりますことからも明白な通り、軍規違反者から刑事犯罪者、ならびに政治犯らのいわゆる “人民の敵” たちで構成された囚人部隊。そんな彼らが、無罪放免と元の階級への復帰を勝ち得るべく 『血で罪を購う』 という、ただでさえ苛酷な東部戦線中さらに 『ヒジョ〜にキビシ〜ッ!』 日々を描きましたお話。

 

 

主人公は部隊全滅後にいったん捕虜となりながら、辛くも脱走して参りました元少佐、ワシリー・ステファノヴィッチを大隊長に、元暗黒街のボス・グリモフとその手下の泥棒“いかさまトランプ”ことリョッカ、労働組合の幹部や元革命の闘志、上官を殴打した者など、その前身経歴は各人さまざま。ご想像に難くなく、赤軍におけますこの部隊の扱いはすこぶる付きに悪く、軍服は支給されません(注2)のはもちろんのこと、食糧配給の遅延、地雷原の突破命令や陽動作戦での捨て駒的使用はまぁデフォルト仕様

 

もともとが全11話のテレヴィジョン番組でしたご様子で、ために要塞攻略や戦車戦など派手な戦闘シーンはございませんで、重点が置かれますのはやはり人間ドラマのほう。ただドイツ第三帝国の侵攻はかりではなく、スターリン独裁政権下におけます農地の強制的な集団農場化によります大飢饉や赤軍粛清など、当時の国内事情も織り込みましたなかなかに深みのございますストーリーが展開されます――それでも、“本物よりも丈夫で足回りも東部戦線向きな”四号戦車が数台と、45_対戦車砲が数門出て参りはいたしますが、マァ戦争スペクタクルを望まれます御仁には強いてオススメはいたしませぬワイ。ちなみに吾が輩的には〇でございました次第。

 

 

 

お話のアンタッチャブル山崎 もといヤマといたしましては、ワシリー元少佐と同じく捕虜となり、収容所にて反スターリン主義からドイツ軍に転向した同僚将校をのちに捕らえたり、ボスことグリモフ中隊長(注3)と農家の寡婦とのラヴ・ロマンスなどがございますが、中でも印象深い挿話といたしまして、斥候に出ました連中が途中で見掛けました禽獣を 『食えるかな?』 と質問したのがやがて、『人肉はどうだ?』 にハッテン もとい発展。

 

さすがに体験者は皆無かと思われましたが、唯一グリモフ氏がむかし官憲に追われている際に食に窮し、仲間をバラしてこれをいただいた、というウソともホントともつきませんお話を披露。そちらを耳にしました元党指導者は正気の沙汰ではない、野獣にも劣ると口汚く非難するのですが、対するグリモフ氏は真顔で振り向くや、『お前は農村の集団農場化の指導をしていただろう』 と、落ち着いた声ながらもするどい眼光で訊いてきます。

 

――要しまするに共産党が申しますところの“人民の敵” にございます豊かな農民(注4)から、グリモフ氏申しますところの“腐った小麦”まで根こそぎ収奪していったため、彼の母親はいちばん下の弟を殺さねばならなかった、という悲愴極まりません真実を元党指導者にぶち撒けたのでございますワイ……こちらココロのボスことグリモフ氏は故・小池朝雄氏と坂東英二氏とをウルトラミキサーにかけましたようなご面相。役柄も雰囲気もまんまそんな感じで、とてもでスラヴ系人種には見えませんでしたナァ。

 

他にも凄惨な社会的矛盾には事欠きませんスターリン圧政下のこと、斯様なお話は随所に大に小に出て参りますことは、ことさらに申し上げますまでもございますまい……もちろんソヴィエト赤軍だけに、イヤラしく憎々しい政治委員も当然のこと登場いたしますゾ!さらには督戦隊マニア垂涎のあの場面もバッチリ!また、ベッド・シーンもございますもののピッコロ ポロリはございませんので悪しからず

 

 

また、『けっこう細かいナー』 と吾が輩を唸らせました演技指導がございまして、そちらは懲罰大隊と共同戦線を張り、ドイツ軍の戦車隊を迎え撃ちます砲兵隊の隊長さん。実際人と対比しますと意外に小さく見えます45_対戦車砲がずらり並びますなか、迫り来たります四号戦車に向かい、適度な頃合いを見測りまして、『撃て!(ロシア語でたしか“アゴーイ!”) の号令を叫びますのはマァ当然の至り。されど号令は終わりましたはずでございますのに、隊長さんのお口は開かれっ放しの態。さては声優さんの声の切り上げが早うございましたものか、あるいは押し寄せます戦車軍への、旧ソヴィエト赤軍一流の威嚇術なのでございましょうか、砲撃のたびに彼の口は不自然に歯を覗かせているのでございます。

 

その後隊長さんは戦車の砲撃に倒れ、代わりに吾らがワシリー大隊長が陣頭指揮を執られる(注5のでございますが、彼もまた山上たつひこ氏が名作 『がきデカ』こまわりくんよろしき、『んが』 の顔真似を継続されますのでございます。さるにても、30年も前になろうかという漫画のギャグをパクられましょうとは……。

 

されど吾が輩、そこでふと思い至りますことには、たしかつげ 柘植久慶氏の“逆撃”シリーズにて、

『砲撃に遭ったら口を開け、耳からの衝撃を抜いて鼓膜を守る』

というような記述がございましたコト。さすればワシリ氏らは 『死刑!』 『んが』 のモノマネをなさっていたのではなく、きちんと戦場の作法に則られておったのでございますナ。

 

 


 

 

最後に特筆いたしますべきは、なぜか毎回かならず一度は挿入されます“歌謡シーン”(対訳付き)。部隊内のアコーディオン弾きから病院の傷病兵、果ては砲兵陣地の兵隊まで、あたかもエルヴィス裕ちゃんの映画よろしく “お歌の時間” が挟まれますのでございます。吾が輩ロシア映画はBSなどでたまに拝見いたしておりますものの、露流ドラマは流行ってもおりませぬうえにNHKにても拝見いたしました記憶がございませぬゆえ詳(つまび)らかには判り兼ねますが、おそらくは、

 

『なにヨ〜ヴォシロフちゃ〜ん。ここ歌はいってないじゃな〜い。歌がなきゃマードラ(注6盛り上がんないじゃ〜ん。数字獲れないじゃ〜ん。このマードラがポシャっちゃったらチカデボ(注7トカウォ(注8)もおあずけヨ〜ヴォシちゃ〜ん』

 

とかなんとか、“一話一曲” なるオルタネイティヴ もといロシア・TVギョーカイにおけます “視聴率獲得策” なのやもしれませぬナ。

 

 

さるにても史上稀なる苛酷な体制下にて、第二次世界大戦有数の苛酷な戦場を舞台に繰り広げられます人間ドラマを描きました長編 『捕虜大隊』。お近くのレンタル・ヴィデオ屋さんにてお見掛けなされましたら、ご覧いただきますのも一興かと。

 

 

 

 

注1:水滸伝108の将星に連なります凄腕の狩人兄弟。狩人とはいえ双子ではございませぬが。

注2:兼、制作費を抑えるため??

注3:胆力と指導力を買われてワシリー大隊長より拝命。

注4:歪みきった逆恨みにしか聞こえませぬワイ。

注5:でございましたはず(うろ覚え)。

注6:ロシアン・ギョーカイ用語。

注7:デボチカ = 若い娘、カワイコちゃんのロシアン・ギョーカイ用語。

注8:ウォトカ = 狂人的アルコール度数を誇る有名な蒸留酒のロシアン・ギョーカイ用語。

 

 

 

 

おいおい、そっちじゃないぜ!

 

 

2006.12.01 (C) Mephistopheles von Münchhausen

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