ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

所変われば品変わる。

 

2007年03月04日

 

さて、『 武器に見る民族性 』 の巻

(指定BGM: ZELDA / エスケイプ )

 

 

吾が輩幼少のみぎり、テレヴィジョンなどでフェンシングの試合を拝見いたしまするに、『あんな細身の剣で突っつきあって、実戦の役に立つことはおろか練習になってるのかしらん?』 と非常なる疑問を抱きましたもの。

 

その後物書きを目指すにあたりまして、洋の東西の武器防具の図鑑や任侠武侠の小説、騎士物語等々を猟書いたしますと、なるほど得心のいきます答えが得られました次第。

 

 

まず本邦で武器と申さば、何は無くとも竹ヤリ “日本刀”が挙がりましょう。こちら“鉈の力強さに剃刀の鋭さ”を兼ね備えた“武器の美術品”と世界的に評価が高いことはたしかでございますが、一方で扱いがヒジョ〜にキビシ〜ッ!(注1)のも事実。実際武士であれ剣客門弟であれ、人を“斬る”のはかなり至難のワザにございますご様子。

 

かの白土三平氏 『カムイ伝 第二部』 にて(注2)、柳生門弟が人を斬る感覚を磨くために刑場から罪人の死体を分けて(用立てて?)もらって試し斬りをしていたり、はたまた故・笹沢佐保氏『木枯し紋次郎』 シリーズでは農民あがりの渡世人が使う “喧嘩剣法” では人を斬るなどということはまず叶いませんで、とくに出入りの経験が浅い者には 『やたらに振り回さずに刺す』 よう指導する旨の話が載っていたりと、誰もが使用できます“コンビニエンス感覚”皆無の堅物なシロモノ。

 

 

そこを“合理性”の権化、西洋人はよく考えましたもので、要しまするに 『いかに効率良く相手を倒すか』 に武器を特化させ、その結果完成いたしましたのが、最近は山口貴由氏『シグルイ』 にても紹介されておりました刺突剣 “レイピア”、そしてその修練のための “フェンシング” なのでございますワイ。

 

刺 突でございますれば、先の 『木枯し紋次郎』 にもございました通り、たしかに手練れでなくとも行使は容易なうえに、修練もいかばかりかは容易でございますしょう。別段戦場にて敵の命まで絶ちます必要 はございませず、とどのつまりは動きを封じますればよろしいので……それこそ高貴な身分のお方でしたら、捕らえました後にせしめられます “身代金” がなにより重要でございますしナ。

 

また時代背景としましては、中世の重甲冑の継ぎ目(あるいは間接部分)をピンポイント攻撃する意図もあったと愚考いたしますナ――マァその後はさらに効率的かつ殺傷能力も格段に高い“鉄砲”が発明され、戦争の主流に取って代わるのでございますが、さすれば携帯します刀剣も騎兵のサーベル、歩兵の銃剣へと変遷していくのでございますが、サーベルは馬上では刺突よりも “薙ぎ払う” ほうがより効果があり、銃剣はライフルの長さを利して擬似的に槍の利便性を求めたものにございましょう。

 

もちろん他にも斧や鎌の長物や、メイスやフレイルなどの打兵器がございますが、吾が輩の雑感といたしましては西欧の直接兵器は矛槍のたぐいに増しましてナイフ、短刀がとくに発達し、多くの種類がございますようにお見受けいたしますナ。

 


 

 

ちなみに武器の種類がもっとも豊富かつ独創的なのは、やはりおとなり中国が断トツのご様子。ただ東西いずれも参考にしておりますのが新紀元社さんの 『武器と防具』 中国編、西洋編なのでございますが、中国編は暗殺用の武器までもカテゴライズされておりますゆえ、そのため数が多くなっております観も否めませぬ。あるいはカテゴライズするに足りますまでの熱心な創意工夫(注3)為されておりますことが、国際的に稀有でございます証左なのやもしれませぬナ。

 

吾が輩の独断ではございますが、科学的思考分野を除きまして世界で最も優秀なのは漢民族ではないかと愚考しておりますが、そも “武芸十八般” なる言葉ができましたのもかの国。要しまするに18種の武器に精通しておりますという意でございますが、やはり時代によりまして出たり入ったりが少なくございませぬ。そこで本邦にもなじみの深うございます 『水滸伝』 からその名を逐一挙げさせていただきますれば――

 

矛、錘、弓、弩、銃(火器)、鞭、カン、剣、鏈(多節棍)、カ、斧、鉞、戈、戟、牌(盾)、棒、槍、叉……マァ当用漢字にない武器がいくつかございますが、ともかくもかの国で一流の武芸者たらんと欲せばまず最低でも18種の武器を使いこなせねばなりませぬとは……なんとも敷居の高いお話にございますナァ。

 

矛は本邦古代の剣のような片手武器ではございませず、槍のように長い柄の先に穂がついております代物。あるいは三国蜀の将軍にして劉備玄徳氏が義弟、張飛益徳氏の得物にございます “蛇矛” を思い出していただけましたらよろしいかと。“牌(盾)” は――マァ防御術のたぐいとなるものと想像せられますが、なにやら端で見ておりますればちょっとしたジャスチャー、ないしは安来節をイメージしてしまいますのは、吾が輩の悪いクセでございましょうか。

 

は西洋のメイスに相当しますが、トゲなどの打撃圧処理が施されません球状なのが東洋の特徴。両手に一個ずつ持てますコンパクト・サイズと長柄の先についております二種がございますが、こちらの武器は中華ばかりではなくインドでもよくシヴァ神が何本も手に持たれております(注4)ほど愛好されております次第。サイズ的には中華の中間ほどでございましたでしょうか。

 

カンは金へんに間と書くのでございますが、形状は異なりますものの扱いはほぼと同じにございます。鞭はいわゆる女王様が振るわれます 『ベラさまのムチは痛いよ!』 でおなじみのしなる縄状の武器を思い起こされますお客様も多うございましょうが(注5)、こちらの形状は金属の棒に柄をつけました物。王欣太氏の 『蒼天航路』 にて、騎都尉となりました曹操が振るわせておりました五彩棒をイメージしていただければOKかと。

 

ただサイズ的にいま少しスリムな点と、戦闘用なのでダメージ増のため角が鋭角になっているのが異なる点でございましょう。カンは逆に角はございませず、アメリカン・ポリスが携帯されております警棒の節を大きめにした感じにございまして、映画 『グリーン・ディスティニー』 にて使用されておりました次第。あちらの映画は結構マニアックな武器が(瞬間的に)登場しますのでマニア必見でございますゾ!

 

カは手へんに過と書き、またの名を(そう)と申すのでございますが、けっこうヴァリエーションが多く定型と申します定型がございませんご様子。一般的らしいとされますお品の形状ですと、長い柄の先に曲線を描きます複数の穂がございまして、こちらを突いてやたらに引っ掻き傷をこさえるための武器のようでございますワイ……あまり勇者が使って許されますような気はいたしませぬが。

 

叉は三つ叉槍……いわゆる西洋のトライデントでございます。棒は申し上げますまでもございません、斉天大聖・孫悟空も愛用されております得物でございますが、時代によりましたらハ頭という武器も一八般に加えられていたそうでございます。ハは金へんに巴のいわゆる “熊手” にございまして、かの 『西遊記』 は猪八戒の愛用していた得物。そうなりますと相棒、沙悟浄のサン(金へんに産)がございませんのには悟浄の立つ瀬もございませぬナァ……。

 


 

ちなみにざっくばらんに中華の主流武器の流れを申し上げますれば、戦車戦が主流でした周〜春秋期は(注6)で、戦国時代以後騎馬と歩兵に主軸が移りますとに代わり、それと平行して漢から唐までは直刀の人気が上がります。唐からは重装騎兵が戦場の花形となりますので、大刀(注7)や鉞のような大型の刃物類から鞭やのなどの重たい打兵器が中心となっていきます。

 

 

打兵器の利点は刃がございませんのでいくら使用し続けましてもなまくらになることがございませず、かつ相手がいかなる精巧な鎧を身につけておりましても、尋常ならざる衝撃(注8)をもちまして相手を戦闘不能に陥れることが可能なのでございますワイ。頭蓋でございますれば兜ごと、胸郭でございますれば胸当てごと、直接突き破らずとも叩き潰してしまえばよかろう、なのだァ〜ッ!と申しますシンプルな利便性がウケたようでございますナ――して、さらに時代が下りまして銃火器が発達しますとまたぞろ刀剣が復権していきますのは、西洋のそれとほぼ一致する用でございますワイ。

 

 

本邦では平安中期以降は反りの入りました日本刀が主流となっていきますが、こちらは騎馬の普及に準じておりますのだとか。理由は前述のサーベルに準じております次第。あとは槍と種子島、薙刀に長巻と東西大陸諸国に比してヴァリエーションに乏しい観のございます吾が国でございますが、その昔太田道灌氏(注9)がさらに昔の戦記ものを読まれまして、 『昔は戦に鉞や大槌(注10も使っていたんだなぁ。使われなくなったのはいつ頃からなんだろう』 と、文献に興味をもたれます逸話がございましたが、確かに古代に使われておりました武器が姿を消したり、また逆にそれ以後日本刀と槍に収斂されていきました理由も気になりますところにございますワイ

 

鍛錬法で鍛えられます日本刀の鋼度ならびに強度はたいへん素晴らしく、鋳造法(注11)で造られております中華の刀剣を、戦闘中にポッキリ折ってしまいますこともしばしばでございましたとか。また、先にも述べましたように刃の紋様の美しさから室町時代以降は貴重な外貨獲得商品でございましたことも申し述べませねばいけませぬが、どちらかと申さば刀身に彫刻が施してございます “美術刀” そのものが主なのかもしれませぬナ。

 

 

 

さるにても、刀そして出雲のたたら製鉄(注12)と純度の高い鋼をこさえますのに長けましたはずの吾が国。それでいて何故(なにゆえ)にジェット・エンジンやタービン機関が純国産できませぬのでございましょうか……ともあれ、現代なれば大量破壊兵器そのものよりも、AT互換機のOSをMSから奪取できましたら、そちらに勝ります武器はマァございますまい。

 

 

 

 

注1:(C)財津一郎氏。

注2:カムイ外伝でございましたかナァ……。

注3:イヤ〜ン。

注4:刃物そのものの方がかなり少ないご様子。

注5:故・横山光輝氏 『水滸伝』 の“双鞭” 呼延灼もしなるムチでございましたナ

注6:車上から敵を(とくに首)を引っかけて致命傷を負わせる長柄の武器。

注7:関羽雲長で知られる “青龍偃月刀” の元祖――と申しますより偃月刀そのものは北宋以降。

注8:クリスマスに彼氏に指定されたホテルに行ったら、アイツ知らない(新しい)女とヤッてる最中だったの!(昔の女性の同僚談)

注9:でございましたはず。

注10:でございましたはず。

注11:中華ではなぜか古代より炉で溶かした銑鉄を鋳型に流し込む製法が主流。

注12:プロジェクトXでも取り上げられておりますので、そちらもご参照あれ。

 

 

 

 

おいおい、そっちじゃないぜ!

 

 

2007.03.04 (C)Mephistopheles von Münchhausen

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