ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

ファンが本当に好きなのはどっちの作品?

 

2007年08月31日

 

さ て、『 ジキルとハイド!?其の参 の巻

(指定BGM: Bauhaus / Passion of Lovers )

 

 

吾が輩にとりまして、これまで大暮維人氏の作品と申さば、

“天上天下” の事を考えると、クリップスプリンガーのつので作ったコテカ(注1)ぶかぶか

でございましたのに、それが一転しまして、

『“エア・ギア” の事を考えると、牛のつので作ったコテカ(注2)ひびわれそうだ!

―― と、徳弘正也氏の 『ジャングルの王者ターちゃん』 はアナベベ氏風の適切ならざる表現あえて使用を憚りませぬほど思い入れを深めました今回。



ご本人への評価は180°変わりましても、さりとてなかなか氷解いたしませぬのが氏の二つの作品、『エア・ギア』 と 『天上天下』 のあいだに横たわりますヒマラヤ山脈からマリアナ海溝なみの尋常ならざる落差にございましょう ――
まぁ、何はございませずとも 『エア〜』 と 『天上〜』 とで一番に異なっております点は、やはり発行元の出版社に他なりますまい。



さるにても、それほどに 『マガジン』 誌『ジャンプ』 誌の編集方針は異なっておりますものでございましょうか……。


『ジャンプ』 誌の編集方針と申さば言わずもがな、“アンケート順位至上主義” でつとに知られておりますが、『マガジン』 誌のそれは意外と現在も 『漫画家と編集者で作り上げていく』 方針であるように見受けられますナ
(注3)


喩えが古過ぎましてまことに恐縮でございますが、かつて斉藤富士夫氏の 『激烈バカ』 やむつ利之氏の 『Dr.ノグチ』 は連載開始当時、吾が輩忌憚なく申し上げますと 『これって面白いのでございますかナ?』  と甚だ疑問を禁じ得ませんでしたものにございましたワイ。それでも吾が輩の予測を大きく裏切りまして、どちらの作品もロングラン・ヒットと相成りました事 実がございますので、『講談社の編集部って面倒見がいいのでございますナァ』 とつくづく感心いたしました
次第。


この点に思い至りました当時、吾が輩陳舜臣氏の作品を
読み漁っており、おそらく専属契約をなされておられましたとおぼしき講談社文庫にもいたくお世話になっておりましたことも手伝いまして、当社にはいたく好印象を抱きましたもの。


逆に 『ジャンプ』 誌の “アンケート順位至上主義” は、人気が急落いたしますればどんなにストーリー的に中途半端な段階でもバッサリ打ち切り
(注4)ますし、それでいて人気さえございますれば、水増しのうえに隠し味として不凍液まで混ぜ込まんとします勢いで作品の延命措置を図られましたり、休載に休載を重ねました挙句に下書き同然の原稿を載せましたりと、政府の提唱されます “ものづくりニッポン” の理念に真っ向から唾を吐きかけます、合理主義と申しますよりは飽くなき功利主義の権化と申し上げましても過言ではございますまい



確かこちらの “アンケート制” を取り入れましたのは、いずれのジャンプ作家さんもサングラスに三白眼のへの字口という同一フォーマットで書き表されます名物編集長・西村繁男氏でございましたと記憶しておりますが、氏は 『ヴェテランだろうと新人だろうと、アンケート結果が悪ければ十週で打ち切り』 体制を厳に徹底させました甲斐がございまして、実際1980年代にはジャンプ誌を発行部数ギョーカイNo.1にのし上げましたのでございますが、その牙城も十数年後にまたぞろマガジン誌に覆される
(注5)のでございますから、やはり万全の策とは申せますまい。


アンケート制に絡みましては、“ジャンプの重鎮” でございました本宮ひろ志氏とも少なからぬ遺恨がございましたようでございますが
(注6)、一方のマガジン誌が 『あしたのジョー』 で大恩のございますちばてつや氏へ示し続けられました感謝の意こそ、“漫画屋仁義”の鑑と申せましょう。いかに絵柄も作風も時代の流れから逸脱しておりましょうとも、いかに傍目に 『ちば先生も、もうさすがにスポーツ少年漫画はキツいのでは』 と、却っ読んでおります(注7)こちらがハラハラさせられましても、礼を尽くされましたのは見事にございましたワイ。





サテお話が脱線ぎみにございますので元に戻しまして……マァ 『エア・ギア』 と 『天上天下』 で出版社は異なりましても、当の作者ご本人は当然同一人物。それでいてこうまでストーリー構成に差が出ますのも不自然至極にございますナ。


片や 『エア・ギア』 は、若さ相応の骨密度を十二分に備えましたものと、お医者様が黒水牛の角でこさえました三本セット税込二万円の開運印章にて判を押してくださいましょうが、一方の 『天上天下』 は見てくれこそ若作りでございますものの、重度の骨粗鬆症とかなり険しい面持ちで宣告せねばなりますまい。


さるにても、『エア・ギア』 たった一巻のみを拝読いたしましただけでここまでクオリティの開きを感じずにおれませんでした両大暮作品。やはり 『天上天下』 の冒頭におけます、『さぁ、このマンガはこんなキャッチーでスタイリッシュなキャラクターが目白押しに出て来ますよォー!』 的な展開のまま、ストーリー進行をおざなりにしてダラダラと沿革部分をなぞっていったため、全体にの締まりがなくなっていったのではございますまいか。


こちらがお付き合いが始まりましてまだ日の浅い女性で喩えてみますれば、彼氏に 『ディズニーランドに行きましょう』 と誘われましたのに、車が次第に人気のございません通りに入って行かれますようなもの。これでは、

『わたし、このままじゃ寂しい場所に連れて行かれて犯されゆ(注8)

と身構えてしまい、ハンドバッグにてスカートをきつく押さえましょうというもの。ちょっとやそっとの軌道修正ではとてもで植え付けられた不信感をぬぐえませず、先行きの信用も容易には回復できますまい。



そ も、連載開始にあたりまして、大暮氏とウルジャン編集部とでいかなる打ち合わせが持たれましたのでございましょうか……。『いま世間では “萌えキャラ” と か流行ってるみたいですから、カワユくてエッチな女の子を沢山ちりばめて、ド派手なアクションをパァーッとやりましょう、パァーッと!』 と、森繁久弥御大往年のドル箱映画 “社長シリーズ” におけます三木のり平氏の役どころ……いわゆる“マゴさん”的な編集さん
(注9)の毒気にあてられ、つい 『ストーリーは二の次』 な気持ちになってしまいましたものでございましょうか。


ないしは初っ端から 『ウチは“アンケート結果重視”ですので、いくらマンガとして内容が充実してても、アンケートの下位に落ちたら地獄に落ちるわよ! 打ち切りさせてもらいます』 と、極悪面の老占い師が放言します似而託宣よろしく突き付けられ、精緻なプロットの組み様もなくて投げやりになってしまいましたのでございましょうか……。


あるいは打ち合わせの際に大暮氏のほうから、『いやぁ〜講談社ってホンット漫画にクソ真面目じゃないッスか。おれも一度はあとさき考えない、ノリ重視のド派手なアクション・マンガ描きたかったんスよ!』 と、渡りに船とばかりに固く手を握られた ―― という可能性も棄ててはいけませぬ選択肢ではございますナ。




――ただ、『天上天下』 は 『男女
ともに受けが良い(注10)大暮氏の絵によるキャラクター・グッズで(特にヲタを)食い物にしよう  荒稼ぎしよう』 という魂胆(注11)を隠そうともいたしませぬ姿勢がやたらに鼻につきまして、それがための “棗姉妹プッシュ” 的ストーリー展開でございました観は到底ぬぐえませぬワイ。


ともあれ、氏のそれぞれの作品に対します思い入れの裏付けにはなりませんでしょうが、『エア〜』 も 『天上〜』 も巻末にキャラクターのラフ画や設定解説が載せられておりますが、『エア〜』 は性格や日常の様子、仲間内での位置付けなどが簡単ながらに附されておりましたが、『天上〜』 はさぶ サブを含めましてたいていのキャラが 『縦ロールのキャラが欲しかったので……』 といった感じにまずヴィジュアル要素としての要求から解説が始まっておりましたようにお見受けいたしますナ。初見当時も 『コメントがビジネスライクで、あまり作品に愛着が感じられませぬナァ』 と思っておりましたが……。



――では今回で〆と予定しておりましたものの、またぞろ長尺となりましたゆえ総括は次回に譲り問うございますワイ。それでは皆様ごきげんよう。




 

 

注1:いわゆる “チンコ○ース”。

注2:いわゆる “チンコケ○ス”。

注3:言うなれば “講談社” と “集英社” そのものの対比

注4:久保帯人氏の 『ZOMBIE POWDER』 の打ち切り方も酷うございましたナ。

注5:確か“金田一少年の事件簿”のヒットに破れたとか。その当時の編集者(まだ編集長ではない)がかの有名なキバヤシさん、というお話。

注6:このあたりは、いずれ機会がございますれば愚考録にて開陳いたします所存。

注7:公言としての脚色。正直に申さば “チラ見”。

注8:田丸浩史氏 『ラブやん』 風。

注9:たしか 『天上〜』 のあとがきでは担当さんは女性。

注10:そう申さば、エア・ギアのコスをしたレイヤーさんも多々お見受けしましたワイ。

注11:一時期やたらと棗姉妹のフィギュアがいろんなヴァージョンにて発売されておりましたワイ。

 

 

 

おいお い、そっちじゃないぜ!

 

 

2007.08.31 (C)Mephistopheles von Münchhausen

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