ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

ファースト・ガンダムが革新的であり得ましたそのキモとは!?

 

2007年11月18日

 

さ て、『 ガンダムの “リアル” 』 の巻

(指定BGM: 「太陽の牙ダグラム」 主題歌 / さらばやさしき日々よ )

 

 

吾が輩が常より敬愛いたしております漫画家・大和田秀樹氏の、その敬愛いたします由縁となりました作品、『機動戦士ガンダムさん』 におけますシャア大佐の至宝の金言とはこれなん、

『30過ぎてもガンダムガンダムって……。どうかと思うねボカァ!


がございますが、こちらのお言葉にいたく首肯いたしながらも、やはり拝読いたさざるを得ませんのがガンダム・キャラの生みの親、安彦良和氏の筆によります漫画、『機動戦士ガンダム オリジン


――カタカナで書きますと、何やら看板の配色がそこはかとなくインワイな弁当屋さん
を思い浮かべてしまいそうですが、吾が輩が申し上げますまでもございませず、かの “ファースト・ガンダム” のストーリーをその世界情勢、社会背景、軍事的均衡に至りますまで詳細な後付け修正 もとい肉付けでもって再展開させております、いわゆる “ファースト世代” 搾取しまくり 大好評の作品にございますナ。


こ ちらの作品の白眉は、なんと申しましてもジオン公国成立への経緯とダイクン家兄妹を見舞いました悲運、そしてモビルスーツの実用化に至るまでのよもやま話等々、TV放映時にはつまびらかにできませんでした
エピソードがふんだんに盛り込まれております点と愚考いたします次第でございますが、一方で残念でしたのが、ホワイトベースに集い来ります面々が、まったく縁もゆかりもございません 赤の他人同士ではなしに、誰しもがそれまでに何かしらのつながりや面識がございますという大所帯ドラマでついつい陥りがちな設定(注1)が持ち込まれてしまいました点。


吾が輩としましては “ガンダム” のいずこに設定のリアリズムを感じましたかと申さば、戦争という極限状況下で否応なしに顔を合わせました少年たちが、個々の葛藤を抱えつつ避け得ない大きな時代のうねりに身を委ねなければならないという、これまでのアニメにはございませんでした “オトナじゃーん” な舞台設定だからこそ。そちらが、

『えぇっ!カイはアムロたちの学校の先輩でございましたの?』

というなぁなぁ感あふれます衝撃の新事実には、『ぶるうたす ブルータス、お前もか』 感をどうしましても禁じませんでしたワイ。






……マァそちらはともあれ、現在第15巻まで刊行されておりますかの作品。こちらだけでも 『この戦役は本当に一年でカタがつきますのか?』 と甚だなるギモンを禁じ得ませんが、その辺りは 『これでけいろんな出来事があったんだからしょうがない』 と得心のいきます内容を充実させていきまして、最後にサラリと 『三年半の時を経て――』 などと言葉少なに付してしまいますれば、意外とスルーさせられそうな気がなきにしも――。


それでいて殊更に 『TV放映時に “一年戦争” だって言ったんだから、きっちり一年じゃないとおかしい』 とかグダグタ拘泥されますような、“30過ぎてもガンダムガンダム” おっしゃってるような連中
(注2)はこの際バッサリ斬り棄てまして、ここである意味開き直りも良しとして、今後のガンダム世界の恒久設定となります “新約聖書”的な作品となされますのもよろしいかと存じ上げます次第にございます。



――そんなこんなで第15巻でございますが、こちらの眼目は何と申しましても “女スパイ潜入” でございましょう。


今回あらためましてお話を拝読いたしまして、『なぜミハルはホワイトベースに潜入したか?』 を認識し直すことができまして、なるほどガンダムをしまして “リアルロボット・アニメのオーソリティ” と言わしめましたかも痛いほど理解できましたワイ。


従来のロボットアニメとガンダムのそれが大きく一線を画します由縁としまして、敵味方の彼我が正義の防衛団体vs悪の侵略者でしたものが国家間の対立になり、過去の特撮ヒーロー物の “怪獣プロレス” の延長にございましたロボット同士の戦いも
(注3)等しく“軍事的用兵”の位置におかれ、さらにその運用稼働も極力現用の兵器に準じているっぽいところが “リアルロボット” たる面目躍如というところでございましょう。


そんな世界のうら若き女スパイは、
イギリスはベルファスト在住のレッキとした地球の民間人。そうなりますとミハルは連邦軍に対して小さからざる背信を働いている訳ですが、彼女には両親がいらっしゃいません代わりに幼い妹と弟がおり、さらにはお金がございませんという花登筐イズムふんぷんの生活環境に加えまして、戦時体制下の北アイルランドでは一家の生計を支えるに足ります仕事はそうそう巡り逢えませんでした――という運びのようでございます。


ここでジオン軍の特務機関にて猛訓練を積みました、007顔負けのぶりばり
(注4)エージェントを登場させましても別段話に無理はございませず、カツヨリ  且つより視聴者にも設定として判りやすいのではないかとも愚考いたしますが、やはり敢えてその線をはずされましたのは、“安易さ” を避けられましたと申しますより、“境遇も目線もカイとほぼ似たような女の子だけれども、きっかけの違いでそれぞれが向かったベクトルは真逆” というドラマ性を欲されたものなのでございましょう。


TV放映当時はカイとミハルのつかの間の心の交流ならびに悲恋に目が奪われがちになりましたが、さすがに幾度となく再放送を拝見いたしておりますればいい加減飽きもする 感情も鈍磨いたしましょう 
もとい、よりディティールに目がいきましょうというもの。


こういった特殊な環境のもとに、とある家族の生活があり、その中で限られた身の振り様に飛び付かざるを得ない生き様を描くことこそ、ガンダムの “リアル” を構築する礎となっておりましたものと今更ながら愚考いたしますナ……こちらを読まれましたお客様の中には、『男爵今ごろ気づいたのかよ。鈍いにもほどがあるぜ』 と、平松伸二氏の筆によります悪党面でせせら笑われておられますのが容易に想像できますが、決してロボットの運用ばかりを取り上げましてリアルと呼ばれますことなかれ、と吾が輩は声を大に して申し上げたいものでございますワイ。


ただガンダム……引いては富野御大の作品に関しましては、吾が輩はいまひとつ評価いたしかねますのでございます。その何故を問われますれば、御大の作品にてまず
記憶に留まっておりますのはまずショッキングなシーンからとなりまして、 『ボトムズ』 の高橋監督作品のように “忘れられないエピソード” には乏しいように思えて仕方がございませんのでございます。


先の “空中に投げ出されるミハル” や、ズゴックに驚いて背の模様が取れてしまうアナコンダは憶えておりましても、復讐に凝り固まるゾフィーに泣きながら掴み掛かるココナのシーンや、愛憎のすべてをバランシングに託して闘うポタリアとカンジェルマンの姿のように、印象深くかつ考えさせられました場面は、思い返しますればそれとすぐには記憶に触れてきませんのがほとんどなのでございます。


そちらゆえ富野御大の作品は、『やたらに主人公に近い登場人物(あるいはキー・パーソン)が死んでしまう』 ことばかりが目につき、そこが吾が輩をしまして 『芸人で申さばキャメラの前で全裸になって笑いを取ろうとされますのと同等』 と、キワモノ感がいたく強く残りましたものでございます。


さらには “ニュータイプ” なる、リアルSFならざるものすごく便利で都合のよろしい“魔法の”言葉が吾が輩のなかで消化しきれませず、そちらが打ち切り&繰り上げの最終回
(注5)にて取って付けましたようなグダグタな大団円に纏め上げられましたのには、当時まだ小学校高学年でしたにもかかわらず、

『これじゃあせっかくのカッコ良い戦争ロボット物が台無しだい!』

と、たいそうな胸やけを患いましたものにございます――そして、こちらをスッキリ鎮静化していただきましたのが、 『♪三連スコープが目印の、ワイズマン製薬PS整腸剤
(セリフ:こんなことが……普通の人間の回復力じゃないわ……)』 という訳でございます。



それでもやはり、敵兵に拳銃を放って撃退(一人は射殺?)したのに母親に悲嘆に暮れられましたり、『お前はジオン訛りが強いから喋るな』 などという台詞がございましたりと、直前までの幼児向け路線から比べますれば
『ダイターン3よりもずっと大胆だよ!』 と、クオリティに格段の飛躍を遂げさせましたことは確か。そこを行きますれば、ジオング登場時の有名な台詞、『足なんか飾りです。偉い人たちにはそれが判らんのです!』 というくだりは、スポンサー(注6)に対します御大の隠れなき憤りということだったのかもしれませぬナ。


ともあれ吾が輩をしまして久方ぶりに、『リアルロボット物のリアルの何たるか』 を再考させていただきました 『ガンダム オリジン』 第15巻
(注7)。今後のみどころは残りの日数でいかにしてあれだけの戦役をやっつけて行かれますのかを措きまして、もはや他にございますまい―― 一年戦争終結の日まで、あと○×△日!(注8)



 

 

注1:銀河英雄伝説の外伝も正直イヤでございましたワイ。

注2:働け!(←ありがちな偏見)

注3:必殺技で勧善懲悪的な勝利を得るのもセオリー。

注4:(C)吉田聡。

注5:当時はさすがにスポンサーと揉めにもめた話など存じ上げませんでしたが。

注6:クローバーの玩具は子供心にも “作りが甘い” 観アリアリで、オフィシャルなのに “コレジャナイロボ” 臭ふんぷんでございましたワイ。

注7:アレ?他の巻は!?Σд

注8:宇宙戦艦ヤマト風に(残日数がふたケタになりましたら、なんかマヌケに聞こえましたワイ)。

 

 

おいお い、そっちじゃないぜ!

 

 

2007.11.18 (C)Mephistopheles von Münchhausen

GeoCities Japan