どれくらい経っただろう
僕は何故ここに居るんだろう

もう
誰も僕を待ってない

この運命を背負い生まれ落ち
一体何をさせたい
僕に何を望むの


もう次の朝日を見たくない
死んでしまいたい


このまま朝目覚めることなく
このまま地中に潜って行くように


怖い
ぼくすごくこわいよ
コワイ  タスケテ
たすけて
たすけてよ
たすけて
たすけてください
ねえ

毎日同じ夢を見る
最後はいつも決まってこうだ

たすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけて 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
___________________________________________

「おはよう」
特に誰に向けてというでもなく声を出す。
少しやりずらそうにまわりの男子がぎこちない返事を返してくる。

何故僕は律儀にこの場所に来ているのか。
はは。
初めての高校3年生の生活、もう僕は20歳だ。

この2年間僕は眠っていた。
遠い遠い国の物語を空想しながら
ただひたすらに毎日を費やしていた。
心を侵された彷徨う人形が
ただひたすらに夢を見るかのうように、ね。

ニュースを見てるといつも思ってた、ホームレスの人は立派だと思う。
確かに決まりを守らずに公共の場を使うのは好ましくない。
でも、ちゃんと生きようと、毎日自らの生のため生きる。
僕はこの空白の時間、ただひたすらに生かされ、
死ぬことも許されず、世の中の資源を無駄に浪費してきた害虫だ。

命を断とうともした。
そのたびに、気がつけばベッドの上に横たわっていてこう言われる。
「モウ  シノウナンテ  カンガエナイデネ」
あまりにも重い言葉をうんと頷き、そのままベッドに潜った。
中でいくら泣いたかもわからない、お母さんは心配そうに横でずっと泣いていた。
僕が泣いたのは、辛いことがあったからじゃない、死ねなかったからだ。
心地よい夢から、現実に帰ってきたときの脱力感、あの感じが増すときっとこうだ。

紅く染めらてゆくその水はあまりにも綺麗で、何故か涙が流れた、古い記憶。
もう昔の話、心を置き去りに今ここに居るような、不思議な感覚。
もう僕は死ねない、いつ死ぬともわからずに毎日を生きなければならない。

散りゆく華
僕もあんな風に、早く散ってしまいたい。
楽しみの無い日常にはもう、苦痛しか無いのか。
感覚が麻痺、もうそれすらもわからない。
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軽く会釈をしてくる、ぎこちない同級生。
わかっている、もうみんな僕を望んではいない。
苦笑して鞄を僕の汚い机の横にとん、置く。

ネクタイを軽くなおす、ブレザーはどうも好きになれない。
さっさと顔を伏せて寝てしまう、授業が始まるまでの苦痛の時間、誰と話すでも無い。
話したくもない、早く、早く時が過ぎてしまうのを耐え抜くだけだ。

「おはよう」
聞いたことがあるような、無いような、
女の子の声だ。

僕のそばで話をするのは止めてほしい、
僕は静かに、ただ静かに居たいだけだ…

「お・は・よ・う」
五月蝿い、誰だか知らないが不満げに僕は顔を上げた。

刹那
目の前の光景を疑った
僕は目を見開いた

まぶしい光、と同時に目に飛び込んでくるのは見たことない女の子の顔だ。

「おはよう。もう、挨拶くらいしてよ」

僕はハッとすると同時に、その見慣れない景色に驚く。
クラス中が光に包まれているように見えた、いや、輝いていた。

カーテンからの木漏れ日に。
廊下からの話し声に。
黒板の落書きに。
そしてその子の拗ねた微笑みに。

全てに表情が満ち満ちている、僕の見たことの無い世界。
あんまり眩しいから目を細める、彼女は少し怒ったように微笑んだ。

「ちょっと聞いてんの?」
「あ、ああ…ごめん、もうちょっと寝かせてくれないかな…」

この妙な空気に耐え切れず、簡単な挨拶をすませる。
少し眠そうなそぶりを見せた僕は、また寝ようとした。

無理も無い、こんなまぶしい世界僕には耐え切れない。
だってこんなに周りを明るく感じたのは何年ぶりだろう。
いや、これまでこんなことは無かったかもしれない…

比呂人(ひろと)さん?」
頭が混乱しているうちに割って入ってくる声がひとつ
呼んでいるのは僕の名前みたいだ。
この子は美紗(みさ)、近所の妹みたいな存在、丁度隣の席に座っている。
いわゆる幼馴染というやつだろうか、以前はよく遊んだもんだった。
僕はとうとう、そんな二つ下の子と同じクラスになってしまった、というわけだ。

「あれ、散華(ちか)ちゃんも…」
続けて美紗が呼ぶ名前は、今僕の前で腕を組み、
椅子に座る僕を見おろしているこの「元気の有り余る女の子」の名前のようだった。

比呂人:「美紗、この子なんとかしてくれないかな…」
美紗  :「え、比呂人さん、散華ちゃんとお友達だったの?」
そんなはずは無い、初対面だ。

比呂人:「いや、何かやけにからんでくるんだけど…」
散華  :「ちょっと美紗、この人でしょ、美紗のいっつも言ってるお兄…」
美紗  :「あややややや、ちょちょちょちょっと待って!」

多分僕のことだとは思う、美紗とは長い付き合いだ。
比呂人:「まあ僕は美紗の兄みたいなもん…だと勝手に思ってるけど」

散華  :「ほらー、やっぱりそうじゃん、この人のどこがそんな…」
美紗  :「あややややや、だ、だからちょっと待ってって」
散華  :「何を?」
美紗  :「・・・」
散華  :「・・・」

しばしの沈黙。

美紗  :「散華ちゃんのイジワル・・・」
始業ベルが鳴る、美紗はこんな僕をとても慕ってくれている。
こんな不甲斐ない男を。
時に病弱な病人として、
時に頼れる兄のように。
いつも何も責めず、慕ってくれた。
重く感じたことは無い、ただそれは美紗の買いかぶりに過ぎない。

いつも一生懸命であろうとするその姿はとても可愛い。
一生懸命で要られる、何事にも変えがたい素質だと思う。
ただ僕の側に居るがために、彼女は時に自分の価値を落としている。
その様子に気づいているようなのに、美紗は僕との繋がりを切ろうとしない。
僕には無い素質・・・あこがれた事が無いと言えば嘘になると思う。
美紗はそんな僕の欠けた部分を補うように、いつもしないでいい苦労をしょっている。

ベルに気付き、あわてるそぶりもなく教室をあとにする「チカ」と呼ばれる少女。
教室の前の扉を空け、閉める前にまたこちらを向き、大きく息を吸う。
散華  :「美紗!あんた男見る目無いと思うよっ!」
美紗  :「そういうんじゃ無いって・・・言ってるじゃんもう・・・」

教室の扉が閉まり、間もなくして入ってくる教師。

名前は忘れた、担任では無い。たまに見る役立たずのハゲだ。
教師  :「あー、今日は担任の伊藤先生はお怪我をされたので、私が朝の連絡をする」


僕の周りではよく事故や怪我が起こる。
理由と根拠もある、僕は他人には無い特殊な体質の持ち主だから。
この体質のせいで、僕は子供のころから友達と言える友達は居なかった。
特に欲しいと思ったことも無かった。
今まで病室や部屋から見える景色は、テレビに映る映像のような、
現実味に欠けた、夢にも描く気になれ無い景色ばかりだったから。



比呂人:「またか…」
美紗  :「気にしすぎ、比呂人さんのせいじゃないから・・・」
比呂人:「…だといいな」

つまらないホームルーム、お経のような長い声。
聞いているだけで気分が悪くなる、僕は再び顔を伏せる。

「おい」
急にハゲの声がこちらに向いたように感じる。
訪れる静けさ、心地よいのに空気は重い。
「…はい」
自分であることがわかった以上、まわりに迷惑はかけられない。

「お前、今わたしが言ったこと言ってみろ」
「はい、部屋にいくらも育毛剤を置くより、
 発毛剤を置く方が幾分も有意義である、と聞こえました」

教室の隅々からこらえ切れない笑い声が聞こえてくる。
僕が言ったことが、愉快だったから笑ったわけじゃないだろう、
ただつまらない教師の顔が歪んだのが楽しかったらしい。
酷い生徒達だと思った。
それにしても今日はどうしたのだろう、何故こんなことを言ってしまうのか…

教師  :「お前、後で職員室来なさい。」
比呂人:「嫌です」
教師  :「なんだと」
比呂人:「聞こえないんですか、耳まで遠くなってしまったんですね」
教師  :「こ、ホームルームは終わりだ、今すぐ職員室に来なさい。」
比呂人:「嫌です。」
教師  :「いいから来い!!」
比呂人:「嫌だって言ってるで…うっ・・・」

突然突き刺すような痛みを胸に感じた。
無数の針で胸を押しつぶそうとするような感覚
口からは力無い息が漏れ、汗が噴き出してくる

いけない、発作だ。

危ない

危ない・・・みな笑ってないで早くそこから・・・僕は・・・
僕はもう・・・嫌だ・・・頼む・・・早く・・・!

「う・・・あぁああぁ・・ああああああああああああああああ!!!」
___________________________________________

────急に気が遠くなってから意識がない。
ふと気がつくと僕の横には拗ねた美紗の顔があり、
僕は保健室のベッドに丁寧に寝かされていた。

美紗はハゲとのやりとりの間中、あたふたしていた、
美紗には悪いことをした、僕のことで神経をすり減らしたことだろう。

比呂人:「ごめん、な。」
頭に手を乗せぽんぽん、と軽く叩く。
もう、と怒りながらその手をはらうと美紗も口を開いた。

美紗  :「だめじゃん・・・お母さんと約束したんでしょ・・・」
比呂人:「いや、違くて、美紗、ごめんな」

キョトンとした後、涙を浮かべた目で横を向く美紗。
美紗  :「もう・・・今度こんなことしちゃダメだよ・・・」
比呂人:「ああ、ごめん。今日は何か調子悪くてカッとなったんだと思う。
      早く教室戻りな、美紗の成績下げちゃったらあわせる顔無いよ」
美紗  :「比呂人さんが成績トップだからいい。
      比呂人さんのせいでわからなくなったとこは教えてもらうもん」
比呂人:「…そう、か。」

カーテンの向こうで、この保健室の扉が開く音がする。
先生が入ってきたみたいだ。

比呂人:「先生、僕もう大丈夫なん・・・」
違った、入ってきたのはただの女子生徒だった。

散華  :「あらまあ・・」
と思ったが、ただの元気の良すぎる女子生徒、だった。

比呂人:「あ、ごめん。勘違いした。」
散華  :「ううん、それより美紗。」
美紗  :「なに?」
散華  :「さっきハゲが、もう教室に戻ってこいって言ってたよ。」
美紗  :「あっ、うん。わかった。それじゃ先行ってるね。」

とろとろと保健室の扉を空ける美紗。
チラチラ僕の方を見ている、もう平気なんだけどな・・・
比呂人:「…本当…ゴメンな」
美紗  :「ん?何?」
比呂人:「何でも無い、授業ちゃんと受けろよって。」
美紗  :「比呂人さんも早く戻ってくるんだよ!」
比呂人:「あいよ。」

パタンと閉まる扉、沈黙が部屋に充満する。
比呂人:「で、お前はずる休みの昼寝か。」
散華  :「お前とか言わないでよ、私にはちゃんと『散華』って素敵な名前があるんだから。」
比呂人:「チカ、どんな字書くんだ」
散華  :「散る華、だよ。散り際の華のように綺麗な子になるように、って。」
比呂人:「いい…名前だな」

驚いたような顔をする散華。
散華  :「珍しい・・・私の名前を『いい』、なんてそんな顔で言った人居ないよ」
比呂人:「両親の愛情が伝わってくるいい名前だと思うけど?」
散華  :「…あんた結構恥ずかしいこと平気で言うね。」

そう言い終えると、横のベッドにパタン、と倒れこむ散華。
サッとカーテンを引くが、特に警戒していたようでもなく、
ただ何となく境目を作り、ベッドに横になる
天井を話し相手のようにしながら、僕たちは話を続けた。

散華  :「あんたの名前は、誰がなんて決めたの?」
比呂人:「名前か・・・親父が決めた、由来は知らない」
散華  :「聞こうとか思わなかった?」
比呂人:「何度も思ったさ、でも親父はもう居ないんだ」
散華  :「あ・・・ゴメン」
比呂人:「気にしないでいいよ、それに親父は僕が殺したんだ…」
散華  :「え・・・」

ガラーッ、勢い良く扉が空く、今度は間違いなく保険の先生だ。
比呂人:「先生、僕もう大丈夫なんで教室戻ります。」
保険医:「ダメよまだ、もう少しだけ寝てなさい、散華さんは先生から貧血って聞いてるわ」
散華  :「・・・」
保険医:「散華さん?」
散華  :「・・・え?あ、そ、そうなんでーす、よろしくお願いしまーすっ!」
保険医:「?、じゃあ私はまたちょっと席はずすから、比呂人君はまだ寝てなさいよ。」

カリカリと何かメモしたかと思うと、またすぐに扉は閉まった
まったく無駄に騒がしい保険医だ。
先生が出て行って少ししたので、僕は立ち上がり教室へ向かおうとする。

散華  :「・・・寝てなでいいの」
比呂人:「もう平気だから、長いすると美紗も心配するし。」
散華  :「美紗・・・いい子だから。あんま心配かけ無いでよね。」
比呂人:「知ってる。何年幼馴染やってると思ってんの」

ブレザーを着終えた僕は、
無表情に軽く散華を指差すとデコピンのジェスチャーをした。
散華  :「そうだね」
比呂人:「・・・ああ。じゃあ、またな」

ザッ、カーテンを空けて出入り口へ向かう。
散華  :「・・・あっ・・・」
比呂人:「…何?」
散華  :「・・・ううん、何でも無い。また。」
比呂人:「……おやすみ。」

教室へ向かう僕は不思議でならなかった。
何故彼女にあんなことを話してしまったのか…
自らに驚いた、あの女の子は何なんだ。

不思議な女の子「散華」
彼女が何であれ、僕は何か不思議なものを感じていた。
それは確かだった。
教室へ向かう足が何故か重かったのはそのせいだろう。

教室へ戻る、もうそろそろ体育も終わり、
生徒もみな帰ってくるころだろう、美紗にちゃんと謝らなきゃな。

そう思うと丁度終業の鐘が鳴る、ぞろぞろと返ってくる生徒たち。
その中に美紗は居なかった。

おかしい

比呂人:「あ、ゴメン、美紗知らない?」
近くに居た女子生徒に声をかける。
「え、あ・・・し、知りません・・・」

なんだ

何か嫌な予感がする。もう授業が始まってしまう。

比呂人:「さっき女子が使った更衣室は246のはず、ここまですぐ来れるはず・・・か」
この学校は6の校舎からできていて、全てに番号がふられている。

2号館4階6個目の部屋が246教室、普段女子の更衣室に利用されている。
最初は教室のようだったその部屋も、今はほぼ完全に更衣室としての役割を受け、
男子が立ち入る事はそれこそ殆んど無くなっていた。
だが246教室は、この教室からそう離れてはいないはずだった。

教室から更衣室へ向かう、途中で美紗とばったり会う事を願いつつ
僕は言い知れぬ不安に胸を押さえつけられながら、更衣室へ向かった。
角を一つ曲がるたび、美紗が飛び出してきそうな気がしていた。

始業の鐘が鳴った。

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「あの日」Ver.04/01/02
第一話「わからない」
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