<Jaeger LeCoultre Reverso Gran'Sport Chronograph>

どことなく性格の似た2つのレベルソB面。
ムーブメント
Cal.859 8振動 手巻き
サイズ
38 x 28 mm
材質
SS
ダイヤル
アプライドの旧文字盤。A面:黒、B面:黒
ブレス
SSグランスポール純正
クラスプ部分に微調整機能
その他
A面:センターセコンド3針,デイト付き
クロノ作動表示、ハックつき
B面:クロノグラフ
(30分計がレトログレイド)
全く趣の異なる2つのレベルソA面。

「Reverso Gran'sport Chronograph」〜本来の意味でのレベルソ、その複雑モデル

・Introduction
 有名な話であるがレベルソは、本来スポーツウォッチであった。ポロ競技の際に風防が割れることの無い様、反転機構を取り入れたというのが起源である。しかし今やレベルソはどう見ても、非常にドレッシーな時計としての地位を保っている。そんなレベルソ群のなかで唯一本来のスポーツウォッチとして存在するのがグランスポールである。

・Outside
 グランスポールは2005年現在、4種類存在する。最初に出たのがこのクロノとオートマティークであった。その後DUO、女性用のダムが発売されて今のラインアップとなる。
 グランスポールは、コンプレッサーが大量に出た今となってはその存在はJLCの製品群では少し中途半端かもしれない。しかし98年の発表当時は間違いなく革新的であった。ケースも従来とは異なる中央部が膨らんだ優しい形状、ケースバックもクラシックラインとは異なり腕に張り付かないように小さい面積で接し、かつフィット感の良い微妙な曲面を持つ。まるでMTB用の良く考えられたバックパックの背中面のようである。革モデルも04年に追加されたが基本はブレスとゴムである。これのバックルは、現行のブレスモデルでは標準になった「簡単に伸び縮みする機構」を最初に取り入れたものであった。構造は単純で、ごく小さな駒がバックル側に折りたたまれていて、伸ばすと片側で4mm、両側で8mm延長する。アイディアは単純であるが構造やデザインは巧妙で、よく考えられ完成されたものとなっている。使ってみるとこれが非常に便利。またブレスについてはその駒の長さの割にフィット感も良く、しなやかである。実際に腕にしてみると、この時計は非常に重量感があるが高いフィット感のお陰で違和感は無い。ブレスへの気配り、ケースバックの構造、さらには防水性能(わずか50mであるが)などから、この時計は日常使いを非常に念頭に置いた時計と言えそうだ。
 時計本体はビッグレベルソよりも若干大きめであるが、グランドサイズほどではない。クラシックラインの直線的なケースデザインなどと比べ、そのふくよかなラインやダイヤル、ハンドのデザインなど、アール・デコ・デザインとは一線を画している。しかし、どこからどう見てもこの時計は、紛れも無くレベルソ特有の雰囲気をかもし出している。
 個々のディテールを見てみよう。ダイヤルはグレネードパターンといわれるギョーシェで、電鋳であろう。塗装は結構厚めであり、ギョーシェ溝部のエッジが多少甘くなっている。色は黒ではなくチャコールグレイであり、初期型のこれは楔形とアラビア数字のインデックスがアプライドで、12時位置にはやはりアプライドのJLマークがつく。このJLマークが12時位置につくのは、発表当時はPG500本限定シリーズなどしか無かったはずで、この時計にかけるJLCの気合を示したもの、と良い様に勝手に解釈している。
 ハンドはレベルソの常で平面的。センセコの赤はMARCHE表示とともに非常に目立つポイントであり、気に入っている。夜行はトリチウムである。このトリチウムを止めるに当たって出たのがリントン文字Ver.であろう。デイト表示は余計な気もするが前述の通り日常使いを想定した時計であること、さらに500本限定のレベルソクロノにもついていたことからこれは必然であろう。むしろレベルソクロノの機械(Cal.829)は、最初からグランスポールを想定してデイト付きにしていたのでは、というのが私の予想である。PuristSではJaw氏が「500本だけでは元取れなかったからGSにも同じ(Modifyされているが)機械を積むことにしたのであろう」と書いているが。クロノのラン(MARCHE/ARRET)表示はパワリザと勘違いされがちであるが、これはB面でクロノが動いているか否かを表示するもので、一つのギミックである。が、こういうところがJLCらしくて好ましい。B面はこの時計のハイライトで、30分計のレトログレイド表示が当たり前の時計ではないことを物語る。ダイヤルの意匠はA面とマッチしたものであリ、30分計のハンドはなぜかレベルソメモリーのB面のハンドにそっくりである。
 操作感は、一言で素晴らしい。感覚論になってしまうが非常に節度感がある。良く調整されたオールドの手巻きクロノは、特にリセットが総じてピン!と素晴らしいものが多く、そんな感覚である。そして逆にオールドクロノに無い微妙な抵抗感は、この時計が防水時計であることを再認識させてくれる。30分積算計は一分ごと段階的に進むのではなく常にじわじわと動き、30分ジャストに突然フライバックする。巻き上げについては、前後にクロノボタンがあるがそれよりも一回り大きい竜頭のお陰で、違和感無く巻くことが出来る。巻き上げは滑らかで、非常に軽い。ただしフル巻上げまでの回数が多く、減速比が大きいことが分かる。

・Inside
 機械について。これは見たわけではないので写真などの情報や操作感からテキストを書くことになるが、私は822系同様、これに心酔している。これは、奇跡の機械である、といえば言い過ぎか。なにしろ角型のクロノなんて、これ以外に聞いたこと無い。それも両面機。しかも小ささは、Val.69並みかそれ以下である。世界最小のクロノムーブかもしれない。そしてそのスペックはピラーホイールのスライディングギヤ式。パーツ総数319個。8振動のトリオビス付きと近代的な設計。また数あるレベルソの中でこれと前述のCal.829のみ、スペーサー無しでケースに収められている(同じことをレベルソムーブメント私見に書いているがここはご愛嬌で)。精度はクロノメーター級で着用時に+1〜2秒/日、置き方によっては-1秒/日程度に振れる程度で、夜間の姿勢でプラスマイナス0秒に容易に保持できるほどに調整されている。全く非の打ち所が無い。

・After Service
 良いところばかりのようであるが、最悪の点がある。それはOverHaul料金だ。2005年現在でOH基本料金12万6千円は、完全に雲上クラスである。リシュモンジャパンではこれをOHすることができず、全てル・サンティエ送りとなるが帰ってきた時計は当然ながら新品同様、前述の通り完全なる調整がなされていた。

・Summary
 この時計はレベルソという定番時計の範疇にありながら、あらゆる面で異端児である。しかし不思議と良くまとまっており、なんとも言えない雰囲気がある。好きな人は好き、どうでもいい人には箸にもかからない時計。それで良いのである。

09.Jun.2005