<Jaeger LeCoultre Reverso memory>

Cal.862

2000〜2001のJLCカタログに載っていたテクニカルイラスト

ムーブメント
Cal.862 6振動 手巻き
サイズ
28.6 x 20.7 mm
(Classic size)
材質
YG/SS
ダイヤル
A面:白 B面:黒
バンド
CHAYA製黒のクロコ(竹符)
純正はオーストリッチ
(CF製JLC銘)。
ラグ幅17mm、
バックル側16mm
その他
A面:スモセコつき3針,ハックつき
B面:60分フライバックカウンター

「Reverso Memory」〜当たり前のサイズであったはずのプチコンプリケーション

・Introduction
 今、ごく一般的な目から見れば確かに非常に小さい時計である。私の細腕の上でもそう見える。しかし元来、腕時計とはそういうものではなかったのか?ということを改めて感じる。オリジナルレベルソが発表されたのは31年。世は懐中から腕への変遷期である。大きいモノは、すなわち懐中。より技術的に厳しいはずのより小さくしたモノが、腕に付けられるモノである。オリジナルはタヴァン(タヴァネス)のCal.064という細長い機械がそのレベルソには入っていた。その後ほどなくしてJLCオリジナルのcal.438が搭載されることになる。これはケースいっぱいに詰まったスモセコ輪列機であった。何にせよ、最初からレベルソにはケースサイズにマッチした角型機械が入っていたわけである。

・Outside
 さてこのクラシックサイズのメモリー。90年代のJLCが精力的に発表してきた両面機であり、機械(Cal.862)はこの時計のために開発された。いわば064ありきのオリジナルレベルソよりも純血種という印象すらある。ハンドはブルースチール(色々言われているがこれはJLC工場内で焼かれたものであり、もちろん塗りではない)に、夜光。スモセコ針も同じ仕様である。多少平面的かとも思えるがなかなか味のある針であり、なによりこの形がレベルソらしく気に入っている。インデックスは黒のアラビア数字であり、タコ印刷であるが塗料はかなり盛り上がっており、表情がある。ダイヤルは精緻なギョーシェであり、製造はおそらく電鋳と思われる。スモセコダイヤルのインデックス部分は、ここだけ削ったかのような同心円状の仕上げで、このお陰で表情のあるダイヤルになっていると思う。
 ケースは両面レベルソの常で多少厚く、サイズが小さいのでなおさらそう思う。レベルソは本来繊細な印象の時計であるが、ラグだけは無骨である。厚い分さらにその印象が強まっており、見慣れてしまえばそれこそがレベルソなのであるが初めて見る人にとっては違和感を感じるかもしれない。ケース本体には上下に3本ずつ溝が彫られており、一周している。これはこの時計の持つ繊細な印象を助長するものだ。ケースは表裏で二分割するので、当然サイド中央には合わせ面がある。ぴっちりとよく出来ているため気にならないが、レベルソ以外には通常無いものなので気になる人もいるであろう。レベルソという時計は、ある意味ここが踏み絵になるのでは、という気がしている。
 ケースを反転してみる。良く言われていることであるが改めて反転機構やピボットは非常にかっちりとした出来である。
 B面のダイヤルはA面とは異なり黒顔で、かなり計器然としており、インデックスのフォントの選択からもそんな狙いを感じさせる。ハンドは白塗り、夜光付き。針は一時間に一回転で常時動いており、プッシュボタンを押すと帰零するという単純なもの。この使い道は各人で、ということであろうが、機能的にはパーキングメータークロノのようなものである。
 竜頭は小さいが、時計も小さいのでバランスは良い。手巻き感は滑らか、という表記が一番しっくりと来るであろう。オールドによくある大きい竜頭でカリカリと巻く感じではなく、スルスルと巻ける。かといってコハゼ感ももちろんある。レベルソは機械によって手巻き感は異なるが、総じて非常に良いと思う。おそらく竜頭の大きさと巻きトルク、コハゼのクリック感やピッチがバランスしているからであろう。プッシュボタンは大きく操作し易いし、操作感も全く不満が無い。
 ケースバックについて(クレードルなどと表記されることもある)。オリジナルレベルソはラグ幅と同様であるが、オリジナル以降の二代目からはオールドも含めて現行の様にラグ幅より狭くなっている。オリジナルは回転部分が当たらないよう削られているが、その部分がそっくりなくなっているわけである。これが斜めから見たときにスッキリとした印象を与えており、メモリーのように厚いモデルでは効果が大きい。
 オリジナルは手首に沿うようにラグが垂れ下がっているが、現行は一直線である。メモリーのように小さめな時計はOKであるが、グランド(XGT)サイズはこれのお陰で細腕にはすわりの悪い時計となってしまっている。なおグランドサイズのケースバックはグランスポールのような曲面も候補として存在したが、結局レベルソはこのフラットなものがアイデンティティだということで結局曲面は採用されなかった。装着感は犠牲になるはずなのに、JLCはヘンなところに頑固である。そんなところが嫌いではないが。

・Inside
「レベルソムーブメント私見」を参照。

・Buckle
最後にフォールディングバックルについてである。同じ16mm幅なのに、ビッグレベルソにつくものよりも長さが短いものがクラシックサイズには標準である。同じ幅で長さを二種類揃えるなんてあまり考えられない。また04年からフォールディングバックルのつく向きを換えたが、その際にJLマークの天地を逆にしている。これもJLCの拘りか。

・Summary
トータルで見て、レベルソメモリーはとてもいい時計である。わずか二年間しか生産されなかったのは残念であるが、次世代に残していくべき傑作時計の一つであろう。

09.Jun.2005