<ZENITH CLASS El Primero>

ムーブメント
Cal.400Z 31石 10振動 自動巻きクロノグラフ
サイズ
38mm
材質
SS
ダイヤル
ブレス
SS純正
その他
12時間計+30分計+スモセコ+デイト表示
ハック無し

「Zenith Class El Primero」 〜ナイスバランス〜

・Introduction
昔と言ってもつい4年ほど前の話、代理店が大沢商会からLVMHに移って、マンフレディーニ社長がナタフCEOになって、そしてZenithは変わってしまった。
 変わった瞬間に値段が上がり、レインボーフライバックは38万から43万へ、このクラスは29万から33万へ上がったわけである。その一年後、価格は突如暴騰する(ナタフショック)。このブレスモデルのクラスは一気に50万、レインボーフライバックは58万となった。
 LVMH前のZenithは、非常に良心的な会社であった。中堅どころとしての立場をわきまえているというか、製品群と価格、そして求める顧客層がかみ合っていたと思う。そしてレインボーフライバックは大ヒットし、当時私の憧れの時計でもあった。
 数年後、ある機会に機械式時計を欲することとなり、憧れであったZenithを手に入れることにした。レインボーフライバックはすでに43万円であった。当時すでに機械についてわずかではあるが興味も増しており、シースルーバックのクラスを手に入れた。それがこの時計である。そしてその数ヵ月後、なんの改良も無く理不尽なことに突如値段が1.5倍になった。
 値段のことはさておき、この時計は良い意味で中堅らしい魅力にあふれている。正直、ほとんどどこにも高級感が無いがどこもそれなりの質を保っている。30万クラスなら、まさに値段相応である。この時計を入手したことによって私のそれ以降の好みが形作られていく契機となった面は大きい。

・Outside
 この時計で一番気に入っているのは風防である。サファイヤクリスタルであるが、材質はどうでも良い。この微妙なドーム形状、そしてなんといっても斜で見たときにもダイヤルが全くゆがむことが無いのが良い。光学的に、非常に良く出来ている。すなわち曲面にもかかわらず表と裏の曲率がよく合っていて平行性が保たれているわけである。逆にこれのお陰で、全ての時計をかならず斜で見るようになってしまった(決してバイアスかかった目で見る、という意味ではない)。これでダイヤルがゆがむように見える時計は、個人的にマイナス点だ。
 次に気に入っているのが、ダイヤルである。意外と繊細で、この時計のハイライトかも知れない。なによりボンベ形状が良い。そして分針とクロノセコンド針がボンベ形状に合わせて曲げられているのがまた良い。
 いきなり細かいところの話になってしまったが、全体の雰囲気はかなりオールドっぽさをかもし出している。多少大きいが、それ以外ではかなり渋いというか、特徴が無い。文字盤そのものはラッカーで仕上げられていて、ツヤツヤである。アプライドインデックスは結構シャープに出来ていて、ゆがみ無く取り付けられている。ハンドは曲げられていること以外は特徴も無い夜光付きバトンハンドである。インダイヤルのハンドはあまりに無表情で、ここはもう少しお金をかけても良いと思ったところ。逆に言えば値段相応。
 ケースは、レインボー系のものがかなりダルなので旧Zenithはだめ、とされているが、クラスに関しては私は全くそう思わない。エッジもシャープだしヘアラインもきれいで、30万クラスの時計としてごく当たり前の出来と思う。ベゼルは傷つき易いが。
 防水性能に関しては、なんと10気圧を謳っている。これはかなり疑わしい。なぜなら日常使いしていただけで、竜頭側の文字盤とケースの間が黒ずんできて(明らかに水が入った模様)、ダイヤル交換されたことが一度あるためである。非防水よりはマシ、くらいにとらえている。ケースバックもスクリューではない。

・Inside
 さて機械はもちろんエルプリであるが、これは本当に普通の機械である。仕上げはペルラージュ・ジュネーブ模様も一切見られない。ローターも切削痕のみ。ただ一つ一つのパーツがその程度なので、極めて機械然としており道具はこうだろ、といった雰囲気がある。シースルーバックからはクロノ作動の面白さを見る程度で、さほど審美的でもない機械なのでレインボー系のようにソリッドバックもありかと思う。テンワはとにかく小さく、一心不乱に仕事をしている感じ。緩急針持ち?がSUSパーツ打ち抜きという雰囲気で、いかにもチープである。またテンワ直上に線バネが見える。テンプ受け周辺は機械ヲタにとっては非常に大事な部分であるが、このお陰で全体的に安っぽく見える。ま、値段相応というところで、だからといって大沢時代に機械の仕上げが糾弾されることはほとんど無かったと思う。Zenithはそういう時計だったからだ。
 逆に今のZenithは各部の仕上げレベルをかなり上げており、操作感もかなり向上しているが、この線バネやテンプ周りは仕上げではカバーしきれない。なぜなら、そういう構造だからであり、かえってアンバランスさが際立っているように感じる。抜本的にここに手を入れるとかなり見違えるような機械になると思うのだが、今のZenithはオタ相手の仕事をしているわけではないのでおそらくこんなところに金はかけないであろう。
 さてこのクラス、プッシュボタンの操作感もあまり誉められたものではない。さらに竜頭の巻き味なんかは最悪である。とにかく重い。しかし、最初からこれはそういう時計なのだと思っているからか、また自動巻きであることからか、なぜか許せるのだ。

・Bracelet
 ブレスについては、ケースよりも若干出来が悪い。ただフラッシュフィットや駒は無垢であり、ポリッシュとヘアラインの使い分けなど頑張っている感じは伝わる。ただ細部の詰めが甘いのだが、この値段ならやはり許せる、そういう時計なのである。

・Summary
 あまり誉めていないが、決して嫌いなわけではない。むしろ私にとっては非常に愛着のある時計で、稼働率もトップである。このテキストを書いていて、旧Zenithは良くバランスの取れた時計を作る中堅時計会社であったと改めて思った。いかにも旧Zenithらしいこのクラスは、程よく肩の力が抜けていて、愛すべき時計である。

09.Jun.2005