文金高島田への道
file.4 結納当日
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 ハプニングが起きた。遅れると電話が入ったのだ。
 E氏は朝早く両親を自分の実家に迎えに行き、私の実家に来るという手はずでいたのだが、E氏の母上が途中で利用するフェリーに乗るのが怖いと言い出し、急きょルート変更となったのだ。
船が揺れるのが嫌なのだろうと私らは思っていた。後で知ったのだが、彼女は嫁に行く時、二度とその航路を戻るまいと誓って嫁いだらしい。そこで息子の結納であっても、同じ航路を戻るのが嫌だったのだ。
 結納の料理は仕出屋に10時ということで注文してある。母はあわてて、仕出屋に少し遅く来て欲しいと電話を入れた。私は私で、なんだか落ち着かない。父親は困惑している。

 そうこうしているうちに料理が来た。席を準備しているところへ、1時間ほど送れてE氏と両親が到着した。大慌てで、3人を迎えた。だが、焦っていたのは私たちだけではなかった。E氏の父親が半分泣いて玄関先で挨拶をしたのだった。なんとか上がってもらい、E氏は結納の品を床の間に広げ始めた。だがその最中に、E氏の父親が本来なら結納の品をきちんと並べてから言うはずの口上を述べ始めてしまった。これには両親も私も参った。挨拶しないわけにはいかない。
 E氏とE氏の母親は困惑していた。品を並べた後、改めてE氏が口上を述べた。E氏の父親は泣いている。それでもなんとか結納の式は簡単だが終わった。
 すでに料理は並んでいたので、会食となった。料理は今思い出しても、披露宴の食事よりもよかった。お酒については、E氏が両親は酒癖がよくないというので、出さなかった。私の父は昔風の人間なので、酌ができないことをひどく残念に思っていた。披露宴の時には絶対両親に酌をすると決めて、その通りにした。

 しかし、すでにE氏の父親は出発前に飲んでいたのだった。話すことが、もう滅茶苦茶だった。私の妹の体格(私に似ている)のことをはっきり言ったり、突然泣き出したり・・・・・・。E氏はすっかり困っていた。私はある程度E氏の話で聞いていたので、こんなものだろうと思ったが、後でE氏から当日のことを聞かされて、もう仰天した。

 E氏の父親は午前2時には起きて、焼酎を飲みながら息子が来るのを待っていたのだ。さらに来る途中でコンビニに寄り(寄らせて)酒を飲んだのだと言う。ほとんど酩酊状態の結納だったわけである。

 結納の後、母は大変だと口にはっきり出して言わなかったものの、心配そうだった。父は自分も飲むので何も言えなかった。妹は結納の途中からずっと不機嫌だった。

 とは言っても、なんとか結納は無事に終わった。最後は全員で写真を撮影。E氏は両親を連れてまた戻って行った。
 片付けが終わった後、床の間の結納品を感慨深げに母は見ていた。が、ふと私は気付いた。「逆さじゃない、これ。」飾りの一つが逆さ向きになっていた。E氏は父親のことが気が気でなかったに違いない。

                                
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