むいみつづり
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04

ハニー  にっこり笑えば大抵のことは許してもらえると、絵美里は思っているらしかった。
 事実、彼女の茶色い巻き毛や、白い肌、薔薇色の頬やサクランボを連想させる唇、それに鈴のような声、どれをとっても美しくない部分など一つもなく、その彼女の微笑みにほとんどの大人は怒りなど忘れてしまうに違いなかった。
 かわいい子は、いいわよね。怒りや恨みや妬みを軽く通り越し、かわいい子は、良い。亮子は心から思う。絵美里の壊してしまった玩具を直すことなど、大した手間ではない。散らかしてしまった部屋を片付けることも、フリルつきのスカートの染みを抜いてやることも。絵美里は、我がまま放題に育つことだろう。亮子は子供心に想像する。きっと、お金持ちでハンサムで我がままをなんでも許してくれる男の人が現れて、その人と結婚して幸せに暮らすのだわ。かわいい、ということは、美しい、ということは、きっとそういうことだ。
 絵美里は亮子の四つ年下の従姉妹である。母親同士は瓜二つの姉妹だというのに、絵美里と亮子には、少しも似たところがなかった。

2003/08/28