むいみつづり
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ゴミ袋  共産党の選挙事務所が隣にできたというだけで、ユウジは機嫌が悪い。ろくに新聞も読まず政治にも大して興味はなさそうなのに、このパッショネイトな嫌い方はなんなんだろうと思う。今朝なんて、ゴミだしを頼んだら、当たり前のように事務所の前に置いていってしまった。しょうがないから僕が片付けたけれども。
 プチ右翼だかなんだか知らないが、東条英機のポスター(どこで売っているのだろう)と巨大な日章旗を部屋に貼っているので、狭いワンルームはそれだけで空気が悪くなる。剥がせと言っても聞く耳もたない。同居人としては問題がありすぎる。しかし、幼なじみのよしみで、むげに追い出すわけにもいかない。
 今朝、ユウジの高校から電話があった。「ご存知とは思いますが息子さんは高校に日章旗を掲げた原付で来るんです。暴走族と付き合いがあるんじゃないでしょうか。お父様のほうから…」云々。  僕は当然ユウジの父ではなく五つ年上の従兄ですから、と説明し始めるのも面倒なので、多少重々しい声を作って、応える。
「息子は暴走行為をしましたでしょうか?」
いいえしかし、と、若い女性教諭は声を淀ませる。
「バイク通学は禁止されていないはずです。目立った改造もないでしょう?」
……決してユウジをかばっているのではない。言っても無駄なのだ。ユウジには。どうせあと三ヶ月もすれば飽きてしまうに違いない。
 成績だけはいいからろくにものも考えず進学校に行ってしまって、まわりが大人しい奴ばかりだから、普通以上に目立ってしまう。ユウジは本当にどうしようもない。
 僕は大きくため息をついて、ユウジお気に入りの迷彩Tシャツを洗濯機の中にぶちこんだ。

2003/09/23