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不完全の章

 

幾何学に革命が起こる。2000年以上も人類が証明しようとしては失敗してきた平行線公理が、実は証明不可能であることがわかったのだ。平行線公理が成り立たない空間の幾何学、非ユークリッド幾何学が誕生したのである。公理はそれまで信じられてきたように「証明不要の真実」や「絶対自明の真理」などではなく、「議論を始めるための合意事項」に過ぎないことがわかり始めた。公理は矛盾さえ起こさなければどれを採用しようと自由なのである。

 

一方、カントールは超越数が大量に存在することを発見したが、20世紀になるとリシャールが同様の論法で「意味のない数」があることを発見した。しかも不思議なことに、その意味のない数は、意味があるように見えるのである。無限を使うようになってから、町中がこういう不思議な数学現象であふれかえるようになった。

「無限はいらない、集合もいらない」

と騒ぎ立てる保守陣営。集合論と無限がもたらす楽園を守るべく、矛盾がこれ以上起こらないことを証明しようと、ヒルベルトは壮大な計画を実行に移すが…。

 

次の問題こそ、この本全体のテーマと言って良い。

「この懸賞問題に答がないことの証明を見つけよ。」

誰か答のわかる人は?

「はいっ、数学者はケチだから、賞品を渡さずに済むように、答が絶対に見つからない問題を選んだに決まっているからです。」

「説得力はありますが、証明とは言えませんね。他には?」

「答があったとしましょう。その答とは、答がないことの証明そのものです。答がないという証明があるのに、答があるのは矛盾なので、実は答はありません。」

「なるほど。それで?」

「『それで?』じゃないでしょ。懸賞問題の答を見つけたんだから、賞品を下さいよ。」

「あなたは答がないことを証明したんでしょう。それなのに答が見つかるのは変じゃありませんか?理屈に合わないので、正解とは認められませんね。」

「・・・やっぱりケチだ。」

 

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