5/16/2000

「雇用問題について」

Written By Wild-geese

T 現 状 

1、月例経済報告

 我が国経済は、全体として需要の回復が弱く、厳しい状況をなお脱していない。しかし、各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響に加え、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きも徐々に現れており、景気は、緩やかな改善が続いている。

 雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるものの、完全失業率がこれまでの最高水準で推移するなど、依然として厳しい。

 企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。

 政府は、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に乗せていくとともに、21世紀の新たな発展基盤を築くため、日本経済の新生と大胆な構造改革に取り組む。

 雇用情勢は、0残業時間や求人が増加傾向にあるものの、完全失業率がこれまでの最高水準で推移するなど、依然として厳しい

 労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、2月0.52倍の後、3月0.53倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、2月0.93倍の後、3月0.97倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、2月は前年同月比0.1%減(前年同月差6万人減)の後、3月は同0.4%減(同21万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、2月前年同月比0.2%減(季節調整済前月比0.1%増)の後、3月(速報)は同0.2%減(同0.2%減)となり(事業所規模30人以上では前年同月比1.2%減)、産業別には製造業では同1.9%減となった。3月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差3万人増の332万人、完全失業率(同)は、2月4.9%の後、3月4.9%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では2月前年同月比11.6%増(季節調整済前月比0.6%減)の後、3月(速報)は同14.5%増(同3.8%増) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比14.5%増)。

2、日本の状況

1.    少子高齢化社会の到来

エンゼルプラン:少子化に対応した、育児施設等の充実を図る政府の政策

新ゴールドプラン:高齢化社会に対応した、特別養護老人ホーム、ホームペルパー等の充実にを図る政策、ゴールド・プランの大幅な拡充

介護保険制度、介護保険の導入

育児休業制度、介護休業制度の義務化

2.    日本型経営の「三種の神器」の崩壊

終身雇用制度、年功序列型賃金体系、企業別労働組合

終身雇用制度:暗黙の契約の一種で、企業は不況でも雇用調整には手を出さないという契約のもとで、収入減(主にボーナスの削減)を労働者に認めさせていた。また、労働者側もこれを了承していた、しかしながら、折りからの不況、少子高齢化の進展により、組織スラックの削減(内部保留の削減)に動き、結果として雇用調整に動く。高度成長期のような経済成長が約束された環境においては、内部保留は可能だったが、経済成長の速度が緩やかになった成熟期には適さないといえる。

年功序列型賃金体系:少子高齢化や団塊の世代の影響で企業内での中間管理職層の人材の過剰感とこの労働者に払う賃金が経営を圧迫

3、雇用環境に関する現状

@ 企業のリストラクチャリングの進展

 1リストラクチャリングの短期的政策

 費用圧縮=人件費、設備投資額etc

 2リストラクチャリングの長期的政策

 本業回帰

 3国際的政策

 グローバルソーシング、投資収益率重視(ROI)

A リエンジニアリングの進展

  M&A、戦略的提携、ジョイント・ベンチャー

B 日本の雇用環境

 @ 年功給と職能給(←アメリカ職務給)

 年功給:日本の中心的基本給体系、年を取るに連れて基本給が上昇する

 職能給:従業員本人の仕事場の職務遂行能力を基準

 職務給:職務分析と職務評価によって決定される職務価値を基準とする

 A 労働費用

 1総額労働費用

 総額労働費用=現金賃金(80%)+法定福利費、法定外福利費、退職金、教育訓練費

 法定外福利費:家賃手当てなどの法定外の福利に対する支出額、日本では労働者まる抱 

 えの状況(生計費補完型、温情主義)が今もなお続いている。

 2退職金

 退職金の存在が企業経営を悪化させている。(企業会計制度改正)

 確定給付型年金:支払い額とそれに伴う年金額が決まっている

 確定拠出型年金:支払い額は決まっているが年金額は運用状況によって変化が出る。

4.    エンプロイアビリティと教育訓練給付制度(雇用保険法の改正)

 エンプロイアビリティ:どの職場環境に行っても通用する技能

5.    労働者派遣法の改正

 港湾運送業務・建設業務・警備業務等以外はすべて適応対象となる

 派遣期間の上限:規定なし〜1年間へ改正

6.    公的年金の改革

 国民年金の給付時期の延期と負担率の増加

7.    定年退職期間の延長

 60歳定年制義務

 65歳定年制努力義務

U Vision 

 戦後日本は、「会社は社会の裏返し」との言葉通り、アメリカがシェア・ホルダー重視の経営スタイルをとっているのに対して、日本はステーク・ホルダー(特に労働者)重視の経営をしてきた。これは、株式の持ち合い等の安定株主に支えられてきた面もあるが、日本の高度成長の源泉であったことも否定できない。しかしながら、現状では、少子高齢化社会の到来などの構造変化によって、雇用システムは変化を迫られている。つまり、三種の神器といった日本型経営システムそのものを変革していかなければないらない。その雇用システムの改革の指針として

「構造変化に対応した労働市場の流動化と雇用環境の安定」

〜最大幸福から最小幸福への転換〜

をあげる。

これは、企業の温情主義から、市場主義への移行を意味しており、自己責任が最も重要である。このことは平成十一年度の経済白書でも取り上げられている。

V 方向性 

労働市場の流動化はできるのかという問題が重要なであるが、完全失業率が5%超える水準までになり、労働者派遣法の改正などでも、雇用の流動化は進むものと思われる。そこで、労働市場の流動化は進展するものと考え、方向性として2つをあげる。

T、完全な流動化終身雇用制度を廃止して完全な市場主義に基づく労働市場を作り出す。

U、終身雇用制度を維持しながらの流動化終身雇用を維持しながら労働市場を流動化

共通問題点

T、エンプロイアビリティの向上

雇用の流動化は現状の経済を見る限り、必要事項である。そのなかでは、労働者は1企業内だけで通用する能力ではなく、あらゆる職場ないで通用するの力が必要である。基本的に日本企業は今まで、ジョブ・ローテーション等の教育訓練は、企業内での技能育成に傾けられていた。

U、年功序列型賃金の改革

少子高齢化社会の到来等、問題から年功序列型の賃金制度は労働市場の流動化を阻害するだけではなく、企業の財務体質の悪化をも招く。そこで、序列型賃金体系を中心とした年功給制度の見なおしをしなければならない。

V、少子高齢化社会への対応

少子高齢化社会の到来は、既成事実であり、その対応に迫られている。特にここでは企業側の負担という側面からも、再雇用制度等の老年齢者の雇用を考えなければいけない

W、IT革命

IT革命により、情報の共有化が図られれば、時間の共有化が日本の価値観の同質化を図り、労働者の意志統一を図るということが必要なくなる、また、中間管理職の不要もあげられる

W 政 策 

終身雇用制度維持は不可能

雇用の流動化は、優秀な社員の流出を招きかねないそこで、ストック・オプション制度の活用:利点インセンティブを与える、値下がりリスクがない。欠点不公平感を与える。←従業員株式購入制度;値下がりリスクがある

年功序列型賃金体系の改革:年功給の比率を減らす

労働市場の流動化を図る上での政策として、企業年金の改革とエンプロイアビリティの向上は必要である。

確定拠出型年金制度(日本版401k)の導入

X 事後的政策 

T、終身雇用制の維持に伴うリスク:労働市場の流動化が進展しない、企業内に望まれない労働者の退蔵が起こる。(優秀な社員は企業から出て行ってしまうが、労働市場価値が低い労働者は現状の企業内に留まろうとする。)新規労働者の雇用が制限される。

U、年功序列型賃金制度の改革に伴うリスク:中高年齢者の所得が下がる

フリードマンの恒常所得仮説に基づけば、人は消費を恒常所得に依存させている、この恒常所得が不安定になれば、個人消費は不安定にある。これは現状の日本経済を見れば明白である。

V、ベンチャー・ビジネス(以下VB)の発展による雇用吸収

VBの成功要因としてあげられるのが、Seeds、VC、人材、サポートであるこのなかで、確定拠出型年金が(401k)制度化すれば、株式市場、ex NASDAQJapan,Mothers etc

に資金が流れる個人資産1350兆円といわれている資産が株式市場に流入することで、ベンチャー・ビジネスを起こす機会が拡大化することも期待される。 

Y 結論

IT革命によって情報の共有化が図られることによって、日本型経営システムによって培われてきた、価値観の共有といったことは意味をなさなくなってきている。しかしながら、個人消費は、GDPの約6割を占めている。雇用の流動化は、不況期には大量の人員削減を意味していることであり、不安心理の解消のためにも、終身雇用制度は維持すべきであるが、これは成熟した社会、企業においては不可能である。したがって、三種の神器といったもののなかで、年功序列型賃金体系を変え、法を整備し、エンプロイアビリティの向上によって、労働市場の流動化に対しての雇用者の対応を図ることが重要である、とともに、過剰感のある労働者を生かすために、社内ベンチャー等の活性化や、IT関連への雇用のシフトを図るためにもエンプロイアビリティの向上も必要である。

 

参考文献

平成11年度版経済白書

日本経済新聞

その他各省庁ホームページ

 

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