綜合弁証法

 経済社会は1つの国家生活体であり、経済社会システムとして示すように「観念‐秩序‐実態」の三階層から構成される。経済システムとしての国家生活体は、世界内在存在として世界経済に外延的に存立し、他の国家生活体と調和的関係のうちに並存したり、場合によっては相克関係のもとに否定的対立的構造のもとに存在するが、内包的存立としては、一定のSollen(当為)としての「観念‐秩序の層」に規制され秩序づけられ、Sein(実体)として、意志的主体的に存立する。このSeinは社会的経済的矛盾を生起する根源であり、経済政策が実施される客体でもある。このSeinは一定の価値的当為としてのSollenによって規制されている。また、Seinの存在は、観念としての価値やSollen(当為)が異なればSeinも違ってくる。「Xという生活体」では「X@‐XA‐XB」という階層をもち、「Yという生活体」では「Y@‐YA‐YB」という階層を持つことになる。つまり、観念X@に対して「Xという生活体」が成立し、一定のSollen(観念+秩序)に対して、一定のSein(実体)が成立するのである。Seinは社会的、経済的矛盾が始発される根源であり、政府当局は、この矛盾を解決すべく政策的実践を発動しなえればならない。この非XBを克服する新しい観念がY@であると仮定された場合Y@は国家の政策実践の根拠となり、YAという秩序づけが行なわれ、新しい実態YBが生み出される。政策論の根本的問題は、

1 経済政策は社会生活の実態に生起する経済矛盾を政策的実践の根拠として政策観念を明示しなければならない。

2 政策実践とは国家主体の価値的行為であり、一定の価値観念に基づいて現実を秩序づけ、新しい生活体を創出することである。

3 政策論において、政策的実践に伴なう価値観念の導入は不可避である。

 綜合弁証法では、Sein→始発的動因→Sollen→規制的動因→Seinである。矛盾は、「社会生活体の発展の原動力が、生活実体の自覚された矛盾を媒介として発生し、既存の社会的静態均衡を打ち破る動向を形成しながら展開する。」のである。これは綜合弁証法の動態的側面における第一原理、『矛盾性原理』であり、第二原理は、『同一性原理』であり、「生活実体に生起した矛盾対立が統一され、生活体の三階層が、観念−秩序−実体において重層的な調和を実現すること」である。そして第3原理は『全体性原理』であり、一定の価値的行為の規範であるSollenが、社会生活体の部分的局面にだけ同一性を成立させるのではなく、社会生活体の横断的全体局面に対してまで同一性をもつことである。この社会生活体Seinのなかで発生する矛盾は「発展的矛盾」、「循環的矛盾」、「構造的矛盾」にわけられる。

 綜合弁証法とは、ある観念によって秩序付けられている社会構造が、様々な内部矛盾によって変化が起こり、その矛盾を解消すべく、観念そのものも変化していくという考え方である。観念とは、国際社会内においての本質的動向にそったものでなくてはならない。

 ここにおいての観念とは、パラダイムのことであり、秩序とは社会制度であり、実体とは、我々の社会そのものであるといえる。本質的動向とは、国際社会内での整合の取れた観念であり、デファクトスタンダードに沿ったパラダイムと解釈して差し障りはないといえる。また、その実体内で起こる矛盾とは、所得の増加やライフスタイルの変化、消費性向の変化といったことも含まれるのである。ある国の経済状況が変化していけば、社会構造も変化していく、その変化した社会構造はすでに、前社会構造を規制していた秩序では、矛盾を起こしてしまうのである。観念によって秩序付けられていた実体は、実体内で起こる矛盾によって観念を変化させるこれが綜合弁証法の思考方法である。