「新しい時代の公」に関する私的意見と議論要約
「統治」「協治」「自治」のイメージ(私案・タタキ台)


  「新しい時代の公」に関する私的意見と議論要約

1.議論の視点
 これから議論いていくにあたり、極力客観的視点から考えてみたい。人間が本来有している通有性に照らして政治・行政、市民という各セクターは、どのような行動をとりがちであるか、その結果は社会としてどう捉え、改善の必要があるとすれば、どうすればよいかという視点を持ちたいと考えている。とりわけ、行政学で扱われる「エージェンシー理論」と「公共選択論」のような観点は有効であろうと考えている。
(参考) 
「エージェンシー理論」概略 
この理論は、人々の
行動を当事者間の契約として捉え、一方の当事者が何らかの仕事の遂行を自分に代わって他方の当事者に依頼するという関係を想定し、そこから生じる様々な問題を分析する理論である。市民・住民等、政治・行政等を委託する側は、政治家・官僚等と社会契約を結び政治・行政等の仕事を委託しているとみる。市民等は、依頼人(ブリンシパル)であり、政治家等は代理人(エージェント)である。
この依頼人と代理人関係の問題は、両者の利害が必ずしも一致せず、利害対立が発生するとともに、両者の間に「情報の非対称性」が存在することである。契約に関する情報は、依頼人よりも代理人の方が多く持っており、代理人はこの情報の非対称性を利用して、自らの利益に合うような行動に出ようとするインセンティプを常に持っている。代理人は、自分に都合のよい情報だけを選別して依頼人に伝達し、その結果、依頼人が代理人の意向のままに動くという「取り込み」(キャプチャー)という現象すらある。
依頼人は、このような問題を回避するため、代理人の行動を監視(モニタリング)することが考えられ、このような依頼人にかかるコストを「エージェンシー・コスト」という。
「公共選択論」
公共選択とは、私的選択の対語である。私的選択は消費者の市場を介して購買する個人行動であり、一般的には利己的に効用極大化を目指している。人間の動機は、私的選択であれ公的選択であれ行動動機は同じであり公共選択のみが利他的、博愛的にはならないだろう、というのが公共選択論の骨子である。
しかし、この二つの領域での人間は同じ動機で行動するが、もたらされる結果はまったく異なる。私的選択では市場の自動調節機能により資源の効率的配分が行われるが、公共選択では、政治家・官僚の効用極大化機能が働くため「ムダの制度化」が生じる。政治家・官僚たちに道徳心や倫理観があれば、国民の血税をムダ遣いせず予算を節約する筈であるが、実際には「全額消費の原則」が働く。これを「道徳的欠陥から生じる経済的問題」という。
投票者は、公的サービスについて彼の主観的便益と租税など費用負担を比較して水準を選択し、それを反映する投票行動をとる。しかし、費用負担を過小評価し公的サービスは、水準以上を要求する。これを「財政錯覚」という。
政治家は、選挙に当選すること等を目標に行動する。そのために補助金、公共投資、減税等の実施を目指す。そのための財源は増税より将来世代の負担となる国債発行が選好される。
官僚は、自らの昇進、威信、許認可権の拡大を目指して、自らの帰属先の予算最大化を目指す。公共の利益より省益の追及に熱心になる。
この理論から得られる政策提言は、@公的領域をミニマムに抑える小さな政府にすること。 A予算編成や政策運営における政治家や官僚の自由裁量をできるだけ限定的にすること。 B公的サービスの肥大化を抑制するため民営化を進めて市場メカニズムを働かせる。

2.議論の要約
これまで、議論されてきた7月31日現在の大要について、次のとおり羅列してみました。かなり独善的でもあるので重要な項目を落としている可能性もあります。ご指摘頂ければ、幸いです。

 (1)「新しい時代の公」の提唱されている背景
  ・財政逼迫で国民国家として瀕死の状態にある。
  ・地方分権一括法の制定で実質的な分権を進める時期にある。
  ・市民運動の興隆、NPOの活躍する社会に変貌しつつある。
  ・これまでの「公」が自発的意思に基づいていないので、様々な不具合が生じ、「新しい公」が模索されている。(実は選挙で議   員を選び、議会で決めているが)

 (2)「新しい時代の公」の多様な視点
  ・お役所を「お上」と見てきた、これまでの精神的残滓を除去するという視点
  ・「公」を「社会」と言い換えると、「公私を相対化した客観的な人間集団相関」が見えてくる。一方、見え難くなるものは、「公」    の抱える建前と本音の部分、「私」の抱えるエゴに霞がかかる。
  ・介護保険は、「公」が支えているのではなく、保険料による相互扶助である。税も保険料も「公」のフィルターを通しているのみ   である。
  ・犬や猿のような社会的動物は、リーダーと秩序を持つ。人間社会の秩序維持の仕組みとしての「公」に新しく何を求めるか。
  ・政党の掲げる「公約」内容のすべてに賛成して投票する人は僅かと思われ、ねじれ現象が発生している。これを補完する1つ   として直接民主主義的要素を考えるのも「新しい公」の1つの視点である。
  ・直接民主主義的要素には、パブリックコメントや住民投票があり、行政評価への参加、市民の政治参加等もある。
  ・エージェンシー・コスト(有権者は政治・行政を委任しているが情報の非対称性により真実がよく分らない。これを明確にする    努力のコスト)を低減させるため情報公開の徹底による透明化も「新しい公」の求めるものである。税のムダ遣い、合併によ    る行政コスト削減のチェック等、多くの項目がある。
  ・「新しい公」としての地方分権は、中央が失敗した赤字の山を地方に押し付けることに利用されつつある。このことへの対応も   「新しい公」を考えるうえで避けられない。
 (3)統治・協治・自治−地方分権を背景として−
  ・ 2000年の地方分権一括法で中央・地方関係は「対等・協力の関係」になった。地方分権は、明治期に地方から中央に渡し    た権限の変換の意味もあり、「地方返権」とでも呼べるものである。
  ・「協治」は、中央集権→地方分権→市民分権 の構図に近い考え方である。
  ・「自治」は、徴税権がないので今後業務範囲を広げる場合は、統治機構から税源委譲を求めることも考えられる。「協働」は「   協治」という新たな枠組みが決められた中での「執行」の1つの形態と考えておきたい。志木市では、市民代表が予算の一部   について審議し査定もしているので、1つのモデルとして参考になる。
  ・今後、「行政の範囲」を決める場合、市民の意向を調べ、利用料金を支払っても利用したい希望者が多ければ、対価の確保    によって行政の範囲がそれほど狭くしなくてもよいことも考えられる。
  ・地方分権後も中央政治に大きな影響を受けるので、「協治」の話し合いで、「中央への注文内容」について市民の意見を集約   し首長などをバックアップしていくことも視野に入れる必要がある。「協治」に至るには、「隗より始める」気持ちが大切である。

 (4)行政と市民の関係(ボランティア等のあり方を中心に)
  ・行政は平等性・合法性・形式的合理性の原則を遵守するあまり、実質的合理性を欠く。(阪神大震災で毛布配布の事例等)
  ・ボランティアが行政に巧く使われるだけではパートナーシップは成立しない。ボランティアを当てにして集まらなければ行政は   どうするのか。
  ・公的存在(電鉄会社等)は、パターナリズム(温情主義)とお節介が過剰で、顧客を過保護にする。顧客の過剰期待を誘発し   それが出来なくなった時の反動は大きい。
  ・リソース(資源)を持つ側が弱者に譲るべきである、とすれば、行政と市民の「対等」は眉唾になる。
  ・行政がボランティアを集めるのは、税との二重収奪になるのではないか。
  ・ボランティアは、労働の寄付行為であり、継続性・公平性・代替性を期待すべきではない。シビル・ミニマムは、税金による所   得再配分機能、保険料による相互扶助機能の制度を堅持する必要がある。
  ・ボランティアは、「柔軟性」「即応性」の長所の反面、「公平性」「継続性」に欠ける。ボランティアと行政では力の差があるが「    パートナーシップ」を確立するため行政は何を譲るべきか。
  ・ボランティアは、例えば危機管理マニュアルを作ってみて、行政との関係を考える機会をつくる。
  ・行政サービス供給について、企画、計画、調整、生産、提供、改善等の段階ごとに担う主体を考えてみる。

 



 「統治」「協治」「自治」のイメージ(私案・タタキ台)

    
     
 これまでの政治・行政と市民     

 政 治 → 行   政 (統治)                       
           (公 助)               

  Plan →

   (注)   Do→        See

  統治↓  意見↑ ↑投票・納税   

     市     民 (被統治)             
        自治(自助・共助)

  現在は、「Do」の一部をNPO等が協働?


  「新しい公」概念の政治・行政と市民(私案)

 政治 → 行   政 (協治) (協働)                  (公 助)
   Plan  →   Do  →    See
        市 民 代 表(協治)

 協治↓↑  参画↑ ↑投票・納税

      市    民  (被協治) 
               
         自治(自助・共助)
 検討後「行政範囲」からはみだした部分(協働)  


(補足)
@市民代表の選出方法について議論する必要がある。また、その正統性をどう担保するかも重要である。
 従来,多用されている審議会方式の委員が条例等により、どのような位置付けで正統性をどのように担保されているのかは参考 になる。新方式は、段階的に実施していくことが必要だろうが、志木市が実施している市民による予算査定の実践等も参考にな る。
A議員の位置付けを明確にする必要がある。行政全般をチェックする機能に留めるか、「協治」に参画するかについて議員の意見を伺いながら決める必要がある。
B「行政の範囲」からはみだす部分の「協働」については、「協治」の中で、検討されるが、市町村合併等により行政コストが縮小する結果、余剰となる職員を優先的に充当する方法とNPO等が考えられる。基本的に無償のボランティアで充当することは考えないほうが無難と思われる。ボランティアは、この「はみだした部分」の外枠にあって、付加的な要素を不定期的に担当してもらうことを考える。