事務事業のリソース等情報の充実改善提案

                                                             2003.12.3

各自治体との比較による現状分析

 自治体・中央省庁の評価システムは、事務事業のリソースであるインプット(投入量)として予算や労務費等が表示されています。しかし、その表現方法は様々であり、納税者である市民(国民)が求めるアカウンタビリティとして必要にして十分な内容になっているかどうかについては疑問符がつくものが多いように思われます。
 それでは、納税者は、自分たちが支払った税金を政治・行政が最適に配分して、無駄なく行政サービスとして納税者に還元しているかを判断するためには、どのように表示して貰えば分り易いのでしょうか。評価システムに必要だと思われる項目を思いつくままに羅列してみると次のとおりです。

(1)支払う税金は国税と地方税があるが、事業ごとの財源(一般・特定・補助金等)とその比率が表示されているか。
(2)税収不足を補うために国債、県債、市債等、後世代の借金が、どの事業にどの程度使われているか表示されているか。
(3)各事業ごとに納税者一人当たりにすると、どのくらい支払っていることになるのか表示されているか。
(4)予算の主要な使途について説明されているか。
(5)労働量は、直営・嘱託・委託等の内訳と人件費が表示されているか。
(6)事業に投入される予算や労働量が有効性・効率性等の尺度で評価して表示されているか。そしてそれが適正であることが分るか。
   (この項目は、投入量ではなく産出したものの評価であるが、定量評価がされているかをあわせて比較した)

  これら行政サービスの程度を納税者が知るために各自治体が、評価システムの中で、どのような項目で表現をしているか比較してみました。比較した自治体は、北海道、札幌市、東京都、名古屋市と三重県です。

        事務事業の投入量(インプット)表示と産出(アウトプット)結果の定量評価の自治体比較

三重県 北海道 札幌市 東京都 名古屋市
財源内訳の表示 ×
*2 *3 一般/特定の区分 *5
債務の表示 × × × ×
市債額の表示
納税者一人当たり表示 × × × ×
*3
予算の主要な使途表示 × ×
*2  *4 *5
労働量内訳表示
所要時間・人件費 *2 人員・職員費 常勤職員数  *5
定量評価の有無
*1 *2 *3 *4  *5

[補足説明]
*1 三重県 プロセスマネジメント等の「事務事業の実績自己チェック」が唯一の定量評価である。事業の必要性、効率性、経済         性等は「事務事業の目的」欄等のコメントから翻訳して判断する必要がある。なお、三重県では監査委員が行政監         査(評価)において3E評価を行い、内部評価の補完的役割を担っている。

*2 北海道 「財源内訳の表示」 ・・予算額と、その内の「道費」の表示、財源が単独か補助金かの区別
         「予算の主要な使途表示」・・内訳欄がある
         「労働量内訳表示」・・「事業の執行状況」欄に業務細分ごとに人員数記述のあるものがある
         「定量評価の有無」・・「事業の効果」「事業の必要性」を定量評価    

*3 札幌市 「財源内訳の表示」・・「国・道」「市債」「その他」「一般財源」に区分表示
         「納税者1人当たり表示」・・市民1人当たりコストとして表示   
         「定量評価の有無」・・「事業の必要性」「改善等の検証」「方向性」を2〜3段階で評価

*4 東京都 「予算の主要な使途表示」・・「歳出節別内訳と主な内容」欄に賃貸料、保守料、消耗品、委託費、光熱水費、役務                           費等ごとに金額を表示
         「定量評価の有無」・・必要性、効率性、公平性を5段階評価

*5 名古屋市  「財源内訳の表示」・・・会計、款・項・目を表示  単独・補助金の区分はない
           「予算の主要な使途表示」・・「実施内容」欄に詳細に記載表示
           「労働量内訳表示」・・当該事業に従事した人の勤務形態、身分(市派遣職員、嘱託職員等の別)、人員数
           「定量評価の有無」・・必要性、有効性、達成度、効率性をそれぞれ4段階評価


            自治体比較結果の分析と改善提案

 三重県の「みえ政策評価システム」とその他の4自治体について、上表に示した比較結果を分析してみると、三重県は、事務事業への予算・人員等の投入量の表示、事務事業の産出結果の定量評価についての情報提供が不足していることが分ります。ただし、3E評価については第3者としての行政監査(評価)が実施しており、ここで補完がなされていると見ることもできます。
 この状況を踏まえて、今後「みえ政策評価システム」を見直す機会(「国づくり宣言」が「しあわせプラン」に変更されると評価システムの見直しも必要になる)を捉えて改善されるよう次のような提案したいと思います。

(1)財源内訳の表示
 実質的な地方分権の実現は、中央政府からの補助金等による統制を排して三位一体改革(補助金・交付金の見直しとそれに見合う税源移譲)が成就されることであろう。小泉内閣においても、16年度予算に反映すべく削減する補助金を事業省庁に割り当てるよう指示したと報道されている。
 評価システムの各事務事業においても、その事業が国からの補助金に依っているのか県の単独事業なのかを表示することが必要であり、県民は補助金事業であれば、補助金廃止の場合、当該事業を県として継続すべきか否かを議論することができる。
また、県から市町村への補助金についても同様であり、補助金の流れが分るような表示が求められる。
 また、当該予算が県債等の後世代に負担を課す借金なのかどうかも県民は知る必要がある。つまり、借金してまでやるべき事業かどうかの判断が可能になるからである。一般財源か特定財源かその他の財源枠(例えば予備費の取り崩し)なのか等の区分も必要であり、できるだけ詳しい財源内訳情報を分りやすく表示されるよう改善提案したいと思います。

(2)当該事業の納税者一人当たりの表示

 札幌市では、当該事業の市民1人当たりコストを表示している。先日、ロンドン市長はアメリカのブッシュ大統領の訪問について、ロンドン市民1人当たり2ポンド支払っていると演説していたが、さすが長い伝統を持つ民主主義の国の首長であると感じられた。
納税者が自分の支払った税金について、何にどのくらい使われているのか関心を持ち、意見を出し易くするためには、このような表示も役立つと思われます。

(3)予算の主要な使途の表示

 行政評価の論文には、有効性(Effectively)、経済性(Economy)、効率性(Efficiency)の頭文字を並べた3Eを評価すべきものと説明されるものが多い。これらを実現しようとすれば、必然的に予算や労働量等の投入リソースが経済的・効率的に使用され有効な成果(アウトカム)をあげたのか判断できる情報が必要である。土木の公共事業は、3割は経費が節減できるとも言われている。
 東京都や名古屋市の評価システムでは、上表の補足説明に示したようにかなり具体的で詳細な内訳が示されている。e-デモ会議室の議論でもJさんが[52]の中で『「概算人件費」についての素朴な疑問であるが、果たして本当にそんなにかかるものなのか。→その根拠となる「所要時間」の算定根拠はどうなっているのか。』と疑問を呈している。
 行政監査(評価)結果報告書では、3Eの評価項目はあるが、予算の主要な使途を示して評価している訳ではないので、県民からみると評価の根拠を予算面から判定することは不可能である。
 このような状況にあるので、東京都や名古屋市の評価システムも参考にして改善されることを提案します。

(4)労働量の内訳表示

 事務作業の労働効率は、工場生産における時間あたり生産量や歩留まりの向上のような明示的な成果は捉え難いものである。しかも会議・打ち合わせ等の効率化は中々実現し難いのが相場であると考えられる。しかし、職員・嘱託・委託等の区分やアウトソーシングの区別、出張先やその回数等は旅行費用も含めて記述可能であり、予算の主な使途とともに表示されれば、経済性や効率性はある程度の見当はつくのではないかと思われる。
 これらを評価表に記入することにより、職員の経費節減意識の向上と県民への行政サービスの経済性・効率性のアカウンタビリティ向上が期待できるので、この面での改善についても提案します。

(5)定量評価の表示
 三重県の評価システムには、3Eの定量評価はなく行政監査(評価)に示されている。東京都や名古屋市の評価システムでは、一次評価と二次評価(東京都は知事部局、名古屋市は外部識者による)が、ともに3Eの定量評価を行い、両者を対比して公表されている。
 みえ政策評価システムにおいても、これらを参考にして現在の内部評価と行政監査(評価)の両者が3Eの定量評価を行うことが望ましい。また、「評価の視点」のページでも述べたように、監査委員による評価は正統性の問題もあるので外部専門家や県民代表等で構成する評価委員会(仮称)等による外部評価の仕組みの構築も必要であると考えられる。
 三重県は全国に先駆けて評価システムを導入した先進県であるが、その後導入した自治体の評価システムがかなり進化している実情を真摯に受け止め、三重県のさらなる進化を目指すためにも、これらの改善を図られるよう提案します。