日経金融 200310月末頃

情報先物市場

 大統領選挙など社会事象を対象にした先物を上場する新しい取引所の開設構想が相次いでいる。
 十月一日、先物の本場米シカゴで英国人起業家のリチャード・ブキャナン氏(
34)が、誰でも参加できるインターネット上の意見、交換ウェブサイト「オピニオン・エクスチェンジ(OX」を立ち上げた。同名の電子先物取引所を来年六月に創設するにあたっての下準備だ。
 現時点で一日に二千五百人が訪れる
OXサイトは、一般参加者がチャットや投票などを通じて興味のある社会事象について意見を表明する。例えば今、最も人気のあるテーマは「来年、ブッシュ大統領は再選を果たすか?」だ。参加者は「イエス」「ノー」で投票し、結果は世論調査のようにパーセントで刻々と表示される。
 ブキャナン氏によると、このサイトは先物取引所を開設する際に上場する社会事象先物を選ぶ判断材料になる。
O]サイトを通じて一般人が最も興味を持つ事象を把握し、トップ十位の事象を随時先物として上場する予定。見通しの割合(パーセンテージ)が価格となる仕組みで、再選を予想する人が半分から七割になれば、価格は五〇から七〇に上昇する。
 
OX取引所のビジネスモデルは既存の先物取引所と大きく異なる。既存取引所は収入を取引手数料などから得るが、0]取引所は市場を通じて得る情報データの販売が主な収入源(理解できない?)。参加者が各自の資金を投じる市場で得られる情報は通常の世論調査より信憑性が高く、企業や政治団体にとって利用価値が高いとみる。
 先物市場の情報集積力に注目したのはブキャナン氏だけではない。今年七月、米国防総省はテロ関連の情紺集めを目的に「政策分析市場」を開設し、テロ先物を上場する計画を発表。だが議会から「不謹慎だ」と猛反対され、数日のうちに撤回を余儀なくされた。
 国防総省に依頼を受け取引システムを開発したネット・エクスチェンジ(カリフォルニア州)は来年三月、民間取引所として同市場の創設を計画している。取引所形態など詳細は明らかにしないが、中東問題を対象に取引を行うという。
 ブッシュ政権に反対する市民が同政権の将来の動きを把握しようと情報集積のための疑似先物市場を開設する計画もある。匿名を希望する大学教授などが、年内をメドに「アメリカン・アクション・マーケット」を開設し、ブッシュ政権先物≠上場する予定だ。
 こういった新市場開設の動きは全く新しいものではない。国防総省の政策分析市場の開発に関与したロビン・ハンセン氏(ジョージ・メイソン大学助教授)は、「先物市場の情報集積機能を利用した情報市場のコンセプトは約十年前に生まれた」と話す。オレンジ先物市場が天候予測に利用されるほか、アイオワ大学は八八年に大統領選結果を予測する電子先物市場を開設している。
 また、ヒユーレット・パッカードなど民間会社が社内で「情報市場」を開設し、社員が資金を投じて取引に参加し、市場の動きを販売戦略決定に役立てた例もある。ダブリンのトレードスポーツ・エクスチェンジ社はウェブサイト上で「サダム・フセイン先物」を上場し話題になった。
 米国では賭博サイトは禁止されているため、投機が絡む先物電子取引の市場創設には米先物取引委員会(
CFTC)の承認が必要。オピニオン・エクスチェンジは来年二月に申請する予定だ。CFTCでは情報市場の位置づけを討議中で、まだ態度決定には至っていない。新タイプの先物取引所が誕生するかどうかはCFTCの判断にかかっている。
                                 以 上