あまり知られていないディオファントス「算術」のなかの問題

ディオファントス「算術」の問題・・・中学校での授業において使える問題を選びました。ディオファントスは特有の解法を残しており興味深い。出典は、Heath訳、DIOPHANTUS OF ALEXANDRIAです。有名なフェルマーの書き込みは第二巻問題8にある。なお、有名な「ディオファントスの墓」に書いてあったという問題は、THE GREEK ANTHOLOGY BOOK ]TX巻問題126にある。トップページから、(リンク「ディオファントスの年齢の問題」)

ディオファントスの「算術」は西洋(ラテン世界)では知られることがなく、16世紀になってやっとラテン語に翻訳された。その歴史(Heathによる)

@1463年レギオモンタヌスの「演説」・・・ディオファントスのすばらしい13巻の書物を、ギリシア語からラテン語に翻訳したものは、まだいない、その中には、算術体系中の、まさに精華がかくされている。そこには今日、われわれがアラビア語によってAlgebraと呼んでいる事物や財産評価の術がある。
A1570年、ラファエル・ボムベリはヴァティカンで写本を発見し、翻訳し最初の4巻と5巻の一部を自著の「代数学」の問題の中に組み入れた。
中村幸四郎「近世数学の歴史」(p20)にこのボムベリ「代数学」の序文が引用されている。それは「・・・以前に、ヴァティカンの図書館において、代数学に関連して、アレクサンドリアのディオファントスという人によって著されたギリシア語の文献が再発見された。ローマの数学講師アントニオ・マリア・パッツィ氏が私にそれを見せた。私はこの著者は数についてすぐれていると判断した。このような大切な著書は世界を豊かにするという考えをもって。我々は、しかし二人とも多忙なので6巻あるうちの5巻を翻訳した」
B1575年、クシランダーはラテン語訳を出版
C1621年、バシェーがギリシア語原典付きのラテン語訳を出版、この第二版にフェルマーが注釈した
D1670年、フェルマーの注釈は、後に「フェルマーの定理」と呼ばれる書き込みを含めて48ヶ所ある。フェルマーの息子クレマン・サミュエル・フェルマーはこの書き込みを含む」P・ド・フェルマーによる所見を含むディオファントスの算術」を公刊した
E、フランス訳は1585年、ドイツ語訳は1822年に出版された。(ヒースによる)

注、中学校検定教科書では、東京書籍、大日本図書は「ディオファントスの墓」の問題を、啓林館は「算術」の解法を取り上げている。啓林館の教科書はつぎのように提示しており、ディオファントスの解法の特徴がわかる。

周の長さが104m、面積が576mの長方形の縦と横の長さを求めよ。という問題を提示し、まず一般的な解法を示している。

縦の長さを,Xmとすると、横の長さは(52−X)mだから
X(52−X)=576
従って
Xー52X+576=0

古代ギリシアの数学者では、上のような問題を次のようにして解いています。(と教科者に述べてある)。

縦と横は、和が52、積が576となる2数である。この2数が等しいとすると、積は、和の半分26の2乗、676になるはずだから、2数は等しくない。つまり、どちらか一方は26より大きく、他方は26より小さい。
大きい方を、26+X、小さい方を、26−Xとすると
(26+X)(26ーX)=576
676ーx=576
X=100

この問題と同じ型は、第一巻問題27にある、問題とディオファントスの解法は以下の通りです。

問題A、和と積が与えられた数になる2数を求めよ
必要条件、和の半分の平方は、ある数の平方だけ大きくなければならない
与えられた和は20、積は96
2Xを求める2数の差とする
従って、求める2数は、10+X、10−X
だから 100ーX=96
従って、X=2、そして、求める2数は、12、8
(第一巻問題27)

ディオファントスの年代(Heath前掲書より)
ディオファントスの年代の確定は、難しい。アブファラジ?というアラビアの歴史家はその著作「王朝の歴史」においてディオファントスは、ローマ皇帝ユリアヌス(在位361-3)の時代としている。しかし、これはユリアヌスの時代に生きたスイダスの著作における修辞学者との混同によるものである。決定的な根拠は、ごく短いものでしか現存しない。上限はディオファントスが「多角数について」という著作において、正多面体についての「原論」14巻を追加したヒュプシクスを引用していることから、BC150年頃以降である。下限はディオファントスはアレクサンドリアのテオンによって引用されているので350年以前となる。最上の資料はプセロス(11世紀頃)の手紙にディオファントスとアナトリウスが言及されていることである。プセロスによれば、ディオファントスとアナトリウスはエジプトの計算方法について研究し、「ディオファントスは、精密に研究したが、アナトリウスはディオファントスとは違う方法で、より簡潔に原理をの本質的な部分を収集し、自らの著作をディオファントスに捧げた」という。このことから、ディオファントスとアナトリウスはほぼ同時代であり、ディオファントスはアナトリウスよりやや年長であるようである。アナトリウスは278-9年に著作し、280年に司祭になっていることから、ディオファントスは250年頃の年代であるとされる。さらに、ニコマコス(100年)、スミュナルのテオン(130年)、イアンブリコス(3世紀後半)の著作は、ディオファントスを引用していないことからも補強できる。(イアンブリコスの著作の古注にはディオファントスよりの引用がある

フェルマーの書き込み(これにより後代の数学者を悩ますこたになる)
一方、三乗した数を、三乗した数に分ける(三乗した二つの数の和にする)または、四乗した数を分ける、一般に累乗した数を分けることは、二乗を除いて不可能。(このことのについて)私(フェルマー)は、真に驚くべき証明を発見したが、(証明を続けるには)余白が少ない。

ディオファントス「算術」における問題(中学校の数学の時間に使えるかも)

問題B、差と積が与えられた数になる2数を求めよ(上記の問題の和が差になったもの)
必要条件、積の四倍と差の二乗を加えた数は、ある数を二乗したものになっていなければならない
与えられた差は4、積は96
求める2数の和を2Xとする
従って、求める2数は、X+2、Xー2
だから、Xー4=96
従って、X=10、そして求める2数は、12、8 
(第一巻問題30)
問題C、和とおのおの数の二乗の和が与えられた数になる2数を求めよ
必要条件、これらの二乗の和の二倍は、2数の和の平方よりも、ある数を二乗した数だけ大きくなっていなければならない。
与えられた2数の和は20、二数の二乗の和は208
求める2数の差を2Xとする、従って、2つの数は、10+X、10ーX
だから、200+2X=208
従って、X=2、そして求める2数は、12、8
(第一巻問題27)

注、ディオファントスが問題として提示した、連立二元二次方程式は
@上記の問題A、X+Y=2M、XY=Nの型
A上記の問題B XーY=2M、XY=Nの型
B上記の問題C、X+Y=2M、X+Y=Nの型
の三通りで、和や差が偶数になっているものをたくみに解いている。現代の解き方とはちがう

問題、ある数を与えられた差になるようにふたつに分けること(2数を求めること、以下同様)
ある数、100、与えられた差40
小さい方をXとする
従って、2X+40=100
X=30
求められている数は、70、30
(第一巻問題1)
問題、ある数を与えられた比もつ2つに分けること。
ある数60、与えられた比3:1
2つの数を、X、3Xとする、だからX=15(ここではディオファントスは方程式を書いてはいない)
数は45、15
(第一巻問題2)
問題、ある数から、与えられた2数を引いた差が与えられた比をもつようする。(ある数を求めよ)
与えられた数、100、与えられた比、3:1
求める数をXとする、だから、Xー20=3(Xー100)そして、X=140
(第一巻問題7)
問題、与えられた2数がある、小さい方の数に加え、大きい方の数から同じ(等しい)数を引くと、和と差が与えられた比となる。
与えられた数、20、100、与えられた比4:1
求める数をXとする、だから、(20+X)=4(100ーX)従って、X=76
(第一巻問題10)
問題、与えられた2数がある、第一の数に加え、第二の数から同じ(等しい)数を引くと和と差が与えられた比となる。
与えられた数、100、20、与えられた比3:1
求める数をXとすると、だから3Xー300=X+20(ここではディオファントスは3(Xー100)とはしていない。X=160
(第一巻問題11)

ディオファントスは次の問題のように、三元連立一次方程式、四元連立一次方程式もたくみに、一元一次方程式に還元して解いている

問題、それぞれ3組の数の和が(2つの数の和のこと)、与えられた数になる3つの数を求めよ
必要条件、3つの与えられた数の和の二分の一は、ひとつづつの数(3つの数のこと)よりも大きい。
(1)+(2)=20、(2)+(3)=30、(3)+(1)=40とする(与えられた数のこと)
Xを求める3数の和とすると、3つの数は、Xー30、Xー40、Xー20
和X=3Xー90 X=45、求める数は、15、5、25、
(第一巻問題16)

問題、それぞれ4組の数の和が(2つの数の和のこと)、与えられた数になる4つの数を求めよ
必要条件、4つの与えられた数の和の三分の一は、ひとつづつの数(4つの数のこと)よりも大きい。
4組の数の和は、それぞれ、22、24、27、20
Xを求める4数の和とすると、4つの数は、Xー22、Xー24、Xー27、Xー20
和X=4Xー93 X=31、そして、求める数は、9,7、4、11
(第一巻問題17)

ディオファントスには、二乗した数(平方数)となるという問題が多い。なお次の問題(第二巻問題8)にフェルマーが余白に書き込みをした問題である。ディオファントスにとって未知数は1つに還元して問題を解いている。

問題、与えられた平方数を、二つの平方数の和に分けること
平方数が16が与えられたとする
Xを一方の数とすると、他方の数は、16ーXである。従って(16ーXは)平方数に等しいはず。平方となる式
(mXー4)をとる。4は16の平方根。たとえば、(2Xー4)をとる。これは16ーXに等しい、従って
4Xー16X+16=16ーXである。そして、5X=16X、だからX=16/5
(第二巻問題8)

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