キオスのヒポクラテスにおける月形の方形化(ヒポクラテスに関する資料
 ヒポクラテスは、立方体陪積問題を二数の間に二つの比例中項を求める問題に還元した。これは以前述べた。もう一つの数学的な業績は月形の方形化である。また、ヒポクラテスは、プロクロス(資料1)に、よれば最初に『原論(ストイケイア)』を著した人物とされている。また、資料2、資料3によると、商人であり、アテナイで幾何学を学んだとされる。しかし、ヒポクラテスの出身地のキオスには、数学者のオイノビデスがいたので、キオスにおいて幾何学を学んだ可能性もある。 
資料 プロクロスの摘要
 アナクサゴラスとオイノビデスにつづくのが,キオスのヒポクラテスであるが,この人は,月形の正方形化(円の求積法のこと)を発見した.さらに,キュレネのテオドロスが幾何学において名をはせた.‥…・というのは,いま言及した人たちのうちで、ヒポクラテスが最初に『原論(ストイケイア)』を著したからである。      
 
資料 エウデモス(アリストテレス「エウデモス倫理学」)(1247a17)
 例えば,ヒポクラテスは,幾何学者であったが,それ以外のことにかけては,凡庸で思慮に欠けるという評判の人である.伝えられるところによると,彼は航海したおりに,愚かさのゆえに,ビュザンティオンにおいて,50分の1(2パーセント)の関税をとりたてる役人たちによって多くの金をだましとられたということである。
         
資料 ピロボノス(アリストテレス「自然学」注解)GM1-p235、DK42-2
 キオスのヒポクラテスという人は,貿易商であるが,海賊船に出会って,多くの財産を失ってしまったとき,海賊たちを告発しようと,アテナイヘ赴いたことがあった.その告発の手続きのために,長期間アテナイに逗留することとなった彼は、哲学にいそしむようになり、幾何学に研鋳を積んで,円の正方形化を発見する試みをするほどになった。彼は円の正方形化を発見しなかったが、月形を正方形化して、誤ってこれから円も正方形化できると考えた。なぜなら、月形の正方形化から円の正方形化もできると彼は考えたからである。  
さて、ヒポクラテス月形の正方形化は、次のアリストテレスの一節に対してシンプリキオスが、エウデモスの幾何学史からの引用して注釈を書いた。「原論」以前では唯一のまとっまた数学的な資料。
 
資料4、アリストテレス(詭弁論駁論171b12)DK42-3
 誤った図形は論争好みのものではない(というのは,その場合の誤謬推論はその技術の対象にしたがったものであるから).さらに,真なることに誤った図形をもちいる場合にも論争好みとは言えない。例えば、ヒポクラテスがもちいた図形(すなわち,月形をもちいた(円の)正方形化)(注)がそうである.
                       
(注)Dielsは後からの説明とみて削除している.「ヒポクラテスが月形をもちいて円の正方形化を試みたのは,誤りであっても,論争好みによるものではない。なぜなら,その手続きは幾何学の規則にかなったものだからである.ブリュソンやアンテイボンの場合はこれとはちがっている」(Diels)
 
資料、アリストテレス(自然学185a16)DK42-3
 弧をもちいて(円を)正方形化する方法を論駁することは,幾何学者の仕事であるが,アンテイボン[第87章B13]のような方法を論駁することは,幾何学者の仕事ではない.            
シンブリキオス(アリストテレス「自然学」注解)DK42-3(上掲個所への注解)
「弧をもちいて」とは,キオスのヒッボクラテスが発見した,月形をもちいた方法のことを言っている.というのは,月形は円の弧だからである.
     
資料、シンブリキオス(アリストテレス「自然学」注解) DK42-3、GM1P236-253
 しかしながら,エウデモスが『幾何学史』の中で言うところによると,ヒッボクラテスはこの月形の正方形化を,正方形の辺にたよることなく、むしろ,いわゆる一般的な仕方で示したという.すなわち,すべての月形が半円と等しいか(図3)あるいはより大きいか(図4)あるいはより小さい外円周をもつならば(図5)そして,ヒッボクラテスが,半円と等しいか,あるいはより大きいか,あるいはより小さい外円周をもつ月形を正方形化しているのであるならば,彼は一般的な仕方で証明したように思われる.‥…・また,『幾何学史』の第2巻において,エウデモスは次のように言っている.「月形の正方形化は,(月形と)円との近しい関係のために並々ならぬ問題と思われているものであるが,ヒッボクラテスによって最初に作図され,適切な仕方で説明された.」
注、「正方形の辺にたよることなく」とは、シンブリキオスが述べる、アレクサンドロスの説明のことであり(図1)では月形が三角形に等しい。これは数学的に正しい。(図2)では、左の半円=台形ー三つの月形、これで図1において月形の正方形化ができているので、円の正方形化ができる。しかし図1と図2の月形は形が違う(中心角がちがう)従ってこれは間違えである。つまり、正方形化は不可能。

図1

図2


図3

図4


図5

図6

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