ピュタゴラスは哲学者であり、初めてコスモスを宇宙の秩序という意味で、ΚΟΣΜΟΣ(コスモス)という言葉を使ったのか後代のものである

これらは、次の証言にある

資料、DL8−48
天をコスモス(秩序)と名付け、地球は円いと言った最初の人はピュタゴラスであったといわれている。しかし、テオプラトスのよれば、それはパルメニデスであったとされているし、またゼノンによればヘシオドスであったとされている。
資料、アエティオス
ピュタゴラスは、万有を包み込むものをその中にある秩序にもとづいてコスモス(秩序)と名付けた最初の人
資料、DL8−9
ピュタゴラスはプレイウスのレオンから「あなたは何者か」と尋ねられたとき。「哲学者だ」と答えた。
注、キケロによれば、ヘラクレイデスに同様な証言があった「トゥスクラヌム壯談」(5−3)

ΚΟΣΜΟΣは、アテネにおいて哲学の術語として用入れられていた

資料、クセノフォーン「ソクラテスの思い出(1−1−11)
ソクラテスは、コスモスの性質を問うたり・・・
資料、プラトン「ゴルギアス」(508a〜)
賢者たちの言うところによれば、カリクレスよ、天も地も、神々も人間たちも、そのすべてを統括して一つに結びつけているものは、ほかならぬ交友と友愛なのであり、さらには秩序と節度と正義なのである。彼らが宇宙全体をコスモス(秩序)とよんで、けっして無秩序と放蕩とも言わない理由がここにあるのだ。・・・君は幾何学的な平等(幾何学的平均)というものが、神々のあいだでも、人間のあいだでも偉大な力を持っている事実に・・・

「賢者たち」とは、ピュタゴラス派ではないかと後代の人が考えるて、コスモスをピュタゴラスに帰した可能性もあるが、最も古いピュタゴラス派は幾何学ではなく、数論(とちらかといえば数の遊びに近い)(Burkert p78)。さらに、プラトンは賢者とした、リュシスではエンペドクレス(214)、ヘラレイトス(215)のことを語っている。同様に、パイドロス(235)では「賢者アナクレオン」、国家(365)では、アルキロコス、等でかならずしもピュタゴラス派ではない。

さらにアテネでは、エウリピデス(484〜)も用いている

資料、断片910
不正な行為に手出しすることもなく、不死なる本性、不老の宇宙世界(ΚΟΣΜΟΣ)がいかなるもので、またいずこより、いかなる仕方によって、成ったかを見てとる、かのものらは、はずべき所業に心をうごかすことを断じておらず。

Burkert(p78 n157)で、アナクシマンドロスのころと同時代のものとしている。そのアナクシマンドロスの断片は

断片1
存在するものどもは、それらがそこから生成してきたところのそのものへと必然に従ってまた消滅するのだ。というのも、それらは、時の定めに従って、互いに不正にたいする罪を受け、償いを支払うからだ。

つまり、相対するもので世界秩序(コスモス)をあらわし、宇宙の法に従う世界秩序(コスモス)をあらわしている。

カーンは、ΚΟΣΜΟΣという言葉が、何時どのように使われ始められたかは正確には分からないが。哲学的意味でのコスモスという言葉はミレトス派によって(特にアナクシマンドロス)始められたとしている。(p119)。上記断片では、宇宙秩序という言葉なしに解釈はできない。アナクシメネス(574年頃生まれた)には次のような使用例がある

断片2・・・空気と気息が宇宙全体(コスモス)を包み囲んでいる。

従って、コスモスや哲学者という言葉をピュタゴラス本人に帰することは無理がある(Burkert p78)。たしかにディオゲネス・ラエルティオスの証言は不正確なものであり、アエティオスはディオゲネス・ラエルティオスより後代の人である。カーンは、次のような可能性を示唆している、ピュタゴラスの生まれたサモス島は、ミレトスの近くであり、ピュタゴラスないし後継者がミレトス派からコスモスという概念を借用した。
と(p119n2)。確かに、5世紀半ばのピロラオスの断片にはΚΟΣΜΟΣが頻繁の現れる。

では、ミレトス以前に使用例はなかったかとうと、自然哲学の意味ではな、一般的には、もともとは「整えられたもの」「正しく並べられた」「きちんとしている」でそこから色々な意味が派生したと思われる。以下に使用例を挙げる。

ホメロス
オデッセイア
「野菜が整然と栽培」(7歌)
「居間で食事の準備をする」(7歌)
「広間を掃除する」(22歌)
「全体の清掃」(22歌)
イーリアス
「アトレウスの子。民を統べる王(1歌)
「矢をす手早く弦にえ」(4歌)
美しい被衣」(14歌)
飾り」(4歌)
整っている⇒きちんとととのった⇒美しいもの⇒装飾品、と意味が拡大していく
ヘロトドス
順序よく並べ」(7−36)
チュキュデス
「指揮官の裁量に従順」(2巻11)軍隊の規律を意味する
プラトン
国家の秩序を整え(プロタゴス)

なお、哲学の範囲では、天や天体の運行をさす場合もある。

最後に、ミレトス派に関するいくつかの証言を挙げるが、ΚΟΣΜΟΣとうい言葉の最初の使用はピュタゴラスではなくミレトス派であるとすることは、適切であると思われる。その宇宙生成論からも適切であろう。

アナクシマンドロスついて
シンプリキオス
それからすべての諸天界およびその内部の諸世界は生ずる
ヒュポリュトス
それから諸天界および内なる世界(コスモス)は生じた。
擬プルタルコス
それから諸天界および総じてすべての無限にある諸世界が分離した
アナクシメネス
シンプリキオス
宇宙世界が常にある

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