哲学以前

ギリシアの宇宙生成論については、近東の影響がみられる、まず、ギリシア以前の世界観をみていく。

①人類最古の文明を作り出したシュメール語で書かれた神話より。

農耕とともに神話が始まった。

資料
ナンムウ(海を表す)はつぎのように言う
おおわたしの母よ、あなたのいわれる被創造物は存在しています
それで神々の姿をつくってください・・・粘土のよいところをこね混ぜ・・・
ニンマは神々の似姿をの上にそれを結びつけるでしょう
これは人間です
資料、人間の創造
天地という不動の双生児が完成されたとき
母親が女神たちを産んで
大地が基礎づけられ、構築されたとき
天地の諸プランが確定されたとき(そして農業に重要な灌漑設備が整えられたとき)・・・
アン(天の神)、エンリル(大気の神)ウトゥ(太陽神)エンキ(地と水の神で知恵の神でもある)が集まり・・・

注、その後神々はつぎのように相談した「ラムガ神を殺して、その血で人間を創造しようと」その目的は、運河の維持や農作業などの労働、神々の神殿を建立し、祀りを絶やさないこと。どのように人間を創造したかわ書かれていない。なお、「エンキとニフンマム」では、人間は土からめばえた出たとされている。(シュメール語の資料では土説のほうが多い)「創世記」の記述と一致する。私には、その当時の統治者に都合がよい神話であると思われる。ヤコブセン(「古代オリエントの神話と思想」(p185)「どうんな風にいまある様相或いは領域が生じたか、即ち、どうしてあれかれの神がその機能と職分を獲たか、どのようにして農業が組織されるに至ったか、どうして人間の中にきまぐれな階級が存在するようになって、身分を割り当てたかを問う。神話は神の命令によってと答える。」と述べている。
資料、エンキとニンフルザグ(エンキは、塩水ではなく、真水をもたらした)
大地の水が流れ出る「口」から
大地から甘い水(塩水ではなく真水)を彼女のためにもたらした・・・
彼女の町は豊かに水を飲んだ・・・
彼女の田畑と耕地は、穀物を(実らせた)
彼女の町は国土の穀物倉のなった・・・
彼(エンキ)は、掘り割りに水を満たした・・・
彼は未耕地に水をもたらした

メソポタミアにおける灌漑について述べられていると思われる。農耕の発達は、都市国家における権力のもとで行われた。エンキ(水と知恵の神)は、灌漑設備(水)と、それを作る都市国家の技術(知恵)を二重に象徴していると思われる。

その後、統一王朝のころになると、エンキからエンルリに最高神としてとってかわる。

エンリル(大気の神)による天地の分離。シュメール人は、最初の天地は海から創られたと考えていた。なぜなら、海を表す女神ナンムウが天地を生んだ母なる神とされている。そして、神はこの分離以前に存在していた。次の資料のように分離として語られている。

資料、「エンルリと鶴嘴の創造」
有用なものをもたらす王
そのみこころを変えることなき王
地中から(国)の種子を芽生えしむるエンルリは、
地を天から離そうと企てた

資料「ギルガメッシュとエンキドゥと冥界」
天が地から移り去ってのち
地が天から分かれたのちに
人間の名が定められたのち
アン(天の神)が天を運び去ったのち
エンルリ(大気の神)が地を運び去ったのち
資料、「家畜と穀物」(人類に繁栄をもたらすために地上に送られる家畜の神と穀物の神の天上における誕生を語っている)
天と地の山の上で
アンはアンヌキを生んだ

以上から、クレーマーは、シューメルの宇宙創生をつぎのように要約している
①はじめに太初の海があった。その起源は不明
②太初の海が天と地を一つに結合している宇宙的な山を生み出した
③神々は人間の形態をもつものとして考えられ、天の神アンは男性神、地の神キは女性神である。この二柱の神の結合から、大気の神エンルリが生まれた
④大気の神エンルリは天を地から分離させ、彼の父神アンは天を運び去り、エンルリ自身は彼の母たる大地を運び去った、エンルリと彼の母大地との結合は宇宙構成の舞台となり、人間、動物、植物の創造および文明の形成の舞台となった。(「歴史はスメールから始まる」p82~83)

聖書のノアの箱船とよく似た「洪水伝説」も語られていた。この伝説では、人類の創世や王権は天からのものであるとされている。なお、この伝説「一握りの人間を除いては、全人類を絶滅させる大洪水」というテーマは、BC20世紀~19世紀のものでシュメール以後であるという説もある。

資料
(ジズウドラは聞いた)
人類の種を滅ぼすことが(神々の)会議の決定なのだ・・・

洪水が(首都)の上を暴れすぎた
七日七晩
洪水が暴れすぎてから
(そして)巨船が洪水の上を大風によって
(あちらこちら)吹き漂わせてから、太陽が昇ってきて、天地に光りを放つ。・・・
王であるジウスドラ、動物と人類の種を救済した
注、「ギルガメシュ叙事詩」のシュメール語版、バビロニア版ではジウズドラはウトナピシュティムと言う名になっている。

「アトラ・ハーシス」においても同じように、天地創造および洪水伝説が述べられている。

資料、「アトラ・ハーシス」
「彼等のアヌは王者だった」
「彼等の顧問官は戦士エンルリで」
「彼等の式部官はニヌルタ」
「彼等の保安官はエンヌギであった」
「アヌが天にのぼり、エンキがアプスーに降りた」(注、アヌがそらの神、エンルリが大気の神、エンキが水の神)

そして神々は、自分たちの重い仕事をさせるために粘土より人間を作った。しかし、人口が増えてしまい、エンルリいわく「人間どもの耐え難い騒ぎはひどくなった」、そして、人間に始めに「疫病」、次に「飢饉」、最後に「洪水」をもたらす。アトラハーシス神はこれを救う。この「洪水伝説」も同じように船を作り脱出する。

②シュメールの滅亡後、バビロニア人が勢力を強め、天地創世神話「エヌマ・エリシュ」が物語れる。(様々な神が色々なものに関連させているのは、ホメロス、ヘシオドスに似ている。また、内容はヘシオドスの語るものに似ている。また、タレスの「水」にかんしても関連性を指摘することは可能であると思う。さらに「旧約聖書」とも似ている)こらは、シュメールの最高の神エンルリから、バビロニアの最高の神マルドクへの交代劇でもある。内容は、宇宙の起源と、現在の世界秩序の形成である。

上ではまだ天空が命名されず
下では大地が名づけられなかったとき
彼ら(神々)をはじめてもうけた男親、アプスー(淡水)、ムンム(生命力)、かれらをすべて生んだ女親
ティアマト(塩水だけがいて)、彼らの水(淡水と塩水)がひとつに混ざり合った。
草地は(まだ)織りなされず、アシのしげみは見あたらなかった。
神々はいずれも(まだ)姿えおみせず、天命も定められていなかったとき
(そのとき)神々がその混合水のなかで創られた。
(男)神ラッムと(女)神ラハムが姿を与えられ、そう名づけられた。
かれらの年が進み、背丈がのびていく間に、アンシャルとキッシャルが創られ、かれらにまさるものとなった。
かれらは日を重ね、年を加えていった。
かれらの息子がアヌ、父祖に並ぶもの。
アンシャルは長子アヌを(自分と)瓜二つにつくった
そうしてかれらの生き写し、アヌは、ヌディンムド(エア)をもうけた。
ヌディンムドこそかれらの祖父たちの主人公だった。・・・・
エアは反逆者を捕縛したりうち殺して、おのれの敵に対する勝利を祝った。
かれは自分の部屋で心なごんでゆっくり休み、それを「アプスー」と名づけ、聖所と定めた・・・
神々のなかでもっとも賢明なマルドクが聖なる「アプスー」で生まれたのだ。父エアがもうけた、母はダムキナ

その後、マルドクは、神々との戦い、様々な怪物との戦いに勝利し、最高神になる。敵のティアマトの殺害において、マルドクによる天地の創世が語られ、つまり「創られる」(天地をマルドクが分離した)。それに反して、シュメールのほうは、自然に「なっていく」(天地が分離した)話になっている。それと折り合いをあわせてか、天をアヌ、空をエンルリ、地下をエアに割り当てている。なお「ハムラビ法典では、アヌと「天地の主」「国の運の決定者エンルリがエアの長子マルドクに「エンルリの名誉を与える」という書き出しによって、マルドクが最高の神になったことがうかがえる。

マルドクは干し魚のようにそれ(ティアマトの屍)を二つに切り裂き、その半分を固定し、天として張りめぐらした。
マルドクは彼女(ティアマト)の頭を固定して、その上に山を築き、地下水を開いて川を流れくだらせ、
彼女の両眼をティグリスとユーフラテス両河の源とし・・・

洪水伝説(ギルガメシュ叙事詩)・・・旧約聖書「創世記」のオアの箱船の物語の原型か。部分的に引用する。

第七日目に船は完成した・・・(私の持ち物のすべてを)そこえおいた・・・私の持てる生命あるもののすべてをそこえ(置いた)
私は家族や身寄りの者すべてを船に乗せた。
野の野獣、野の生きもの、すべての職人たちを(船に)乗せた。・・・・
七日目になって洪水の嵐は戦いにまけた。

大英博物館にある、BC600年頃の「バビロニアの世界地図」によれば、バビロンを中心に同心円が書かれ、中の円は大地、その周りの円環は大洋(ホメロスのオケアノスを連想させるが)、その後ろには、山が描かれている。チグリス河も描かれている。おそらくこの洪水はユウフラテスかチグリス河の洪水をさすのか。叙事詩には、ユウフラテス河の名がでてくる「ユウフラテス(の河岸)に位置している古い町で、なかに神々が住んでいた。彼らは、大いなる神々に洪水を起こさせたのだ。」とある。

この時代までには、まだ神話的思考からの解放されなかった。それは、ギリシアがなしえたことである。そこでは、神にとらわれない一個人の自然にたいする見方、考え方が生まれる。フランクフォートは「メソポタミアでは創造主は混沌の諸力の脅威の前には無力であった。神々の会議で選考されたマルドクは、宇宙を創造することでこてらの敵手に対する勝利を手に入れることができた、この宇宙の創造は、ほとんど一つの後思案として行われたものであり、人間はわけても神々の召使いとして定められている。人間の圏内には恒久的なものは何もない。神々は毎年の新年の日に集まって、気の向いたままに人間に運命を定めるのである。・・・個人は社会の一部分であり、社会は自然の中にはめこまれている」(p234)と述べている。例外は、ヘブライの人びと(旧約聖書)である。

数学・・・ギリシア数学との関連は、新たなページを作ります。

数は60進法を用い、シュメール語、アッカド語で表されていた。分数も用いられていた。
数表・・・かけ算、逆数、平方数、平方根、立方根、ピタゴラス数
計算・・・主に書記の練習問題であった
     例、等差級数、利子の問題、一次方程式、連立方程式、二次方程式、連立二元一次方程式
幾何学・・・台形の面積、正四角台の体積、三平方の定理(証明なしで使われていた))、正方形や長方形の対角線を求める(近似値)
     

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