レター248    
  

――――― モーツァルト愛好家の集い ――――――

第375回 モーツァルティアン・フェライン例会 2017年11月18日

事務局レター【第248号】/2017年11月

【編集者】澤田義博/松永洋一/高橋徹/笠島三枝子/大野康夫



●11月例会(第375回)のお知らせ

演題「W.A.モーツァルトとM.レーガーにみるユーモアの共通性」    お話:伊藤綾氏

日時:2017年11月18日(土)午後2時開演(1時30分開場)

会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)

例会費:¥2500(会員・一般共)


講演の概要:
 昨年没後100年を迎えたドイツ人作曲家マックス・レーガー(1873〜1916)は、J.S.バッハからR.シュトラウスに至るまで、あらゆる作曲家の作曲手法を研究し、自らの手法と融合させた。
研究対象の中にはW.A.モーツァルトも含まれ、その結果《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ》(作品132)が作曲された。また、モーツァルトとレーガーの間には、人間的にも音楽作品的にもユーモアの点で多くの共通点が見られることは興味深い。
本講演ではふたりの作曲家のユーモアの共通性について紹介するとともに、それがそれぞれの作品で、具体的にどのように結実していったのかを見ていきたい。



例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051



●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)


12月23日(土) 西川尚生氏
           場所:日仏会館501号室(恵比寿駅東口から恵比寿ガーデンプレイス方面へ徒歩10 分)
           二次会場:銀座ライオン・恵比寿ガーデンプレイス グラススクエア店

1月20日(土) 新年会

2月17日(土) 黒岩 悠氏 ♪ピアノリサイタル♪  場所:代官山教会チャーチ・ホール



モーツァルティアン・フェライン10月例会(第374回)報告

江端津也子ピアノリサイタル(2017年10月22日)

 今月の例会は、モーツァルティアン・フェラインにとっては「聖地」とも言える、原宿のカーサ・モーツァルトで開催された。折しも、突然の衆議院選挙に超大型の台風襲来というダブルパンチに見舞われ、受付で待つ私は、激しい雨の様子をうらめしい気持ちで眺めていた。
ところが、次々とやって来るお客様は、「凄い雨ですねえ〜」と傘をたたみながらも、笑顔の方が多いのに驚いた。皆さん、リサイタルを心待ちにしていたのが良くわかる。心配をよそに、会場はほぼ満席。熱気と緊張感に包まれたサロンに、江端さんが登場して、リサイタルの幕開けとなった。





オープニングは、モーツァルトのオペラ「魔笛」より、「何と素晴らしい音楽」を江端さんご自身がピアノ用に編曲したもので始まった。良く知られたメロディーをカーサ・モーツァルトのベヒシュタインピアノで演奏すると、この楽器の特徴とも言える透明な響きによって、一気に「魔笛」のメルヘンの世界へ引き込まれてしまう。江端さんの演奏は、原曲の持つ個性を損なう事がない。技術をアピールしたり、華美な装飾・即興を抑制した「趣味」の良い演奏で、やや緊張した会場の雰囲気をなごませてくれた。

 2曲目は、モーツァルトの「グラーフの歌謡主題による8つの変奏曲ト長調K24」である。1766年に作曲され、全ての変奏がテーマと同じト長調の4分の2拍子であり、リズム変奏の形を取る。テンポは、アレグレットを中心に進行するが、第7変奏でアダージョになって変化を付けている。江端さんは、この第7変奏で非常に優雅な響きを聴かせてくれた。そして、最後は軽やかに駆け抜け簡素ながらも親しみやすいこの曲の魅力を存分に楽しむ事ができた。

 3曲目は、前半の目玉と言って良い、モーツァルトの「ピアノソナタ イ短調K310」である。モーツァルトにとって短調の曲は、極めて少ないが、その中でもこの曲は、めったに自分の感情を作品に反映させないモーツァルトが絶叫しているような曲である。
江端さんは、第1楽章の冒頭から緊張感に満ちた演奏。左手で刻む8分音符にのった付点リズムのテーマから時々、ため息をつくように立ち止り、やがて16分音符で乱れる思いを流れるように表現していた。決して、感情にまかせて突っ走るのではなく、1音1音を大切にした演奏に好感が持てた。
第2楽章では、かなりゆっくりと始まったヘ長調の美しいメロディーが印象的。中間部では不穏な感情から嘆きに満ちた激しい曲調へと変化する所などモーツァルトの特徴である「突然に見えていかにも自然な転調」にぴったりな演奏であった。
第3楽章プレストで江端さんの演奏は、悲しみに暮れながら駆け抜けていくが、中間部での天国的な優しさも忘れられない。





 休憩を挟んで、後半は、ハイドンの「アンダンテと変奏ヘ短調」で始まった。1793年に作曲したピアノ曲。
モーツァルトの死を悲しんで作曲したという説もあるらしい。悲痛な感情の高ぶりを見せるヘ短調の主題Aと昔日を懐かしむようなヘ長調の主題Bが現れた後、交互に変奏が進んでいくA-B-A’-B’-A”-B”-A-コーダの形を取る。
江端さんは対照的な2つの主題を良く捉えており、変奏に入ると、スタッカート、シンコペーション、トリルとリズムの変化を軽やかに表現していた。主題が再現された後のコーダの部分は、まるで、ベートーヴェンのピアノソナタの様な激しさ。フォルティシモのオクターブや重音、スケール、アルペジオが続き、非常にドラマチックになったかと思うと、最後は除々に弱音へと収束して消えるように静かに終わった。曲の起伏の激しさを良く捉えていた様に思う。「ハイドンもこんな曲を書いたんだ!」新たな発見をした瞬間だった。

 次は、クープランの2つのへ長調の小品からである。
 最初の「修道女モニカ」は、バロック的な装飾音が全編に現れるが、この特徴を江端さんは自然な形で表現していた。中間部で右手による上行、下行のスケールも滑らかで心地よい。前曲と対照的でプログラムの流れとしても興味深く聴く事ができた。
 2曲目の「ティク・トク・ショク」は快活なロンドである。一貫して16分音符がせわしなく動く中で、左手による旋律が美しい。江端さんは、単調になりがちなところを実に表情豊かに生き生きと演奏してくれた。

 続いては、フォーレの曲を2曲。江端さんは、日本フォーレ協会の会員でもあり、フォーレの音楽に対しても造詣が深い。
 「夜想曲第5番変ロ長調」は、1884年作曲である。ゆったりと始まる冒頭Aは、夜を思わせる優しい曲想に溢れている。江端さんは、緩やかな曲線を描くように滑らかに演奏していた。中間部Bに入ると一変して、やや悲しい激しい嬰ハ短調になる。ダイナミックな演奏は、Aとのコントラストが見事。そして冒頭Aに近いA’となってまた滑らかになりコーダを迎えて静かに終わった。

 最後は、フォーレの「即興曲第3番変イ長調」である。1883年に作曲された。江端さんの左手の心地よい16分音符の和音にのって、右手のメロディーは華やかだ。しかもかなり広い音域を上下しての演奏で即興の感じが良く出ている。中間部では、瞑想的な雰囲気が醸し出されながら転調を繰り返し、最後は華やかにフィナーレを迎えた。

 大きな拍手が会場全体を包む中、アンコールは、この日誕生日を迎えた江端さんが同じく誕生日のリストの作品から選んでくれた。「4つの小さなピアノ作品1865より第4曲アンダンティーノ」、それからモーツァルトに戻り、映画「アマデウス」で目隠し演奏で有名な「ピアノ小品K33B」、本日の第1曲「何と素晴らしい音楽」、「メヌエットヘ長調K2」と弾いて頂き、会場は更なる拍手に包まれた。

 足元の悪い中、お集まり頂いたお客様の熱意と、それに応えようと素晴らしい演奏をしてくれた江端さんのおかげで大変盛り上がった例会となり、外の天気とは裏腹に清々しい気持ちで会場を後にする事ができた。
 最後にお忙しい中、リサイタル開催に向けてこまめに連絡を頂き、当日も主役として御活躍頂いた江端さんに厚く御礼申し上げたい。  (文責:高橋 徹)



例会・懇親会コーナー

 今回の懇親会は、台風接近のため、残念ながら中止となった。

  


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