弾き始める前に

姿勢

 

ピアノを弾くときにはどんな姿勢がいいのでしょう?

 

不自然な状態で長時間練習や演奏すると、体に痛みを覚えます。肩がこったり、腰が痛くなったり、腕に負担になったり。痛みを覚えれば演奏や練習に集中できなくなります。ひどい場合、腱鞘炎などの負傷でピアノを弾けなくなる体になってしまうかもしれません。これを避けるためにも、望ましい姿勢について考えてみましょう。

 

どんな姿勢も、長時間続ければ違和感がでてきます。たとえば、寝てるときに寝返りを打つことを経験される方は多いと思います。飛行機など乗り物に乗って移動するとき、足がむくんだりされた経験がある方もいらっしゃるでしょう。どんなに快適な椅子でも、ずっと同じ姿勢でいればそのうちイヤになります。エコノミー症候群という状態をお聞きになった方もいらっしゃると思います。実は、この違和感を解消する方法を、私たちは経験上すでに知っているのです。

 

その方法とは、その通りです。重心を移動させるんです。

 

学校の教室で机や椅子に座っているとき、無意識のうちに体を動かすことはありませんか?おしりの左に重心を乗っけたり上体を少しだけ右に動かしたり。そんなの当たり前でしょと思われるかもしれませんが、実はこれはすごく大事なことなんです。

 

ピアノの先生に、「あまり動かないで弾きなさい」と言われたことはありませんか?確かに、おもしろい顔(あっかんべーとか)をしながらピアノを弾いたり休符で客席に手を振ったりするのは体力の無駄遣いだと思いますが(音楽の流れも止めるし)、音楽の流れを著しく止めるものでなければ多少の体の動きは止められるべきではありません。

 

長時間練習していると体に痛みが走る、という方はちょっと止まって考えてみてください。重心をずらすにはほんの少しの動きで充分です。ゆっくり軽く首をうなずいてみたり、ちょっと上体を前に(あるいは後ろに)傾けるなどで効果が見られるはずです。

 

プロのピアニストの方たちは演奏中、優雅に体を動かされますよね。実はあれは見た目もきれいですが、体に余分な痛みを与えないという効果もあるんです。ピアノの先生は、「テクニックもないあなたがあんな動きをするのは身分不相応」などとおっしゃるかもしれませんし、「え、私プロじゃないし下手だからそんなこと恥ずかしくてできない」とお考えになる方もいらっしゃるかもしれませんが、これはステップアップするための大切な技術です。ですから、体得しましょう。

 

それから、これは体が痛くなる前に行うことが重要です。普段の生活で、経済的によっぽど切羽詰っていなければ普通一日に何回か食べ物を口にしますよね。餓死する寸前まで待ったりはしないでしょう?痛みというのは、体が「このままでは使い物にならなくなっちゃうよ」と私たちに信号を送っていることなのです。ぎりぎりまで待ったり(痛くて弾けないという状態になったり)、「筋トレみたいなものでそのうち痛みも消えるだろう」などと過信せずに、痛みを感じたらすぐにやめて、体ががちがちになっていないか、何らかの方法で重心を動かせないかの研究に入りましょう。

 

これまで、「練習中や演奏中に動くのは悪いことではない」と申し上げてきましたが、実際に椅子に座ってピアノを弾く場合は、以下の点に注意してみてください。一人一人、楽な姿勢は違うと思いますが、基本的に楽な姿勢で疲れてくる前に少し体を優雅に動かせればいいでしょう。

 

      椅子の高さは、座って腕を鍵盤に置いたときに、手首が上がりすぎたり下がりすぎたりせずに床と「手から肘」が平行になるのが望ましいといわれています。

      椅子にどっかり座ると、重心をずらすときにやりにくいかもしれません。椅子から落ちない程度に、簡単におしりを動かせるぐらいの浅さがいいでしょう。

      背筋は伸ばしすぎると、肩に負担がかかりますし、曲げすぎると今度は腰に負担がかかります。痛みを感じる前に簡単に動かせるぐらいを心がけましょう。

 

「こんなの慣れだから」と無理に体に負担になるような姿勢は避けましょう。ピアノの先生に言われたからではなくて、ご自分が楽な姿勢を研究してくださいね。