練習法その2

 

さて、前回、「いきなり両手で指定のテンポで練習したほうが効率がいいのではないでしょうか」などといいましたが、「そんなことできるわけないでしょ!」と怒られてしまいそうなので、すぐに続けましょう。

 

次の「軽く、速く」のコーナーで練習法に触れていますが、この方法で実際に練習するのに、指だけでなく腕や体のほかの部分も使って演奏する知識が必要になってきます。指だけで演奏していくには限界があります。だったら、せっかく付いているんだから手や腕も有効に活用しない手はないわけです(ただし、必要最低限だけです)。その上で、それが新たな「癖」(もう少しいい表現はないかな?)となったとき、もう無敵になったといっていいでしょう(って、戦うわけではありませんけど)。

 

小学生のころ、「計算ドリル」ってありましたよね?足し算や引き算、割り算(掛け算九九は除外します)を勉強したときに宿題として出されたアレです。この世に存在するすべての数の組み合わせを使ってその値を暗記しましょうなんて方法でやらなかったはずです(そんなことさせられたら頭がパンクしてしまいます)。

 

人間の脳にはパターンを認識する能力が備わっています。ですから、脳に「この問題にはこのように考えなさい」と情報をインプットすることによってこれまで私たちは足し算や引き算などの四則をマスターしてきたわけです。

 

同じように、ピアノの場合も「このように弾けば楽に、きれいに演奏できる」というパターンが存在します。そして、これまでお話してきたことを組み合わせることによって、「正しい」弾き方というものを身に付けることができるわけです。曲を数多くやれば、脳は瞬時に「ああ、このパターンね。じゃこういうふうに体を動かせばいいんだよ」と判断することができるようになります。やればやるほど新しい曲は(相対的に)簡単になるわけです。

 

ゆっくりの曲の場合、いきなり両手で弾いても大丈夫でしょう。音を間違えたら、その前の音を弾いてから、違和感のない移動を考えて、そこに気持ちよく着地する方法を模索して「ああ、なるほどね」と思いながら何回か繰り返して、「こういうことね」と違和感なく弾けるようになったら次に進みます。

 

速い曲の場合は難しいかもしれませんが、やはりいきなり両手で弾きましょう。どうしても難しければ片手ずつでさらうのも仕方がありません。そのとき、初めの音から次の音までだけだったら速く弾くことはできますよね。音楽には複数の線が絡み合うものですが、線は点の集合です。そして、点と点を結べば線になります。それができたら2番目と3番目を速く(でも、必要以上の力は使いません)弾き、違和感を感じずにできるようになったら、初めの音からだんだん音を足していきます。そのうちに(もしかしたらその次の音からいきなりできるようになるかもしれませんし、パッセージの半分か全部やらないといけないかもしれませんが)脳は指や腕をどれぐらいの速さでどのように動かせば違和感なく(気持ちよく)演奏できるかを認識します。そのときに、「ここでなんかこの音だけが大きすぎるな」などと考えながらできれば、もっと結構です。そうなれば、しめたもの。あとは、ご自分の頭の中で響く音にできるだけ近づくように試行錯誤して、それが再現できるようになればいいのです。

 

初めのうちは時間がかかるかもしれませんが、脳が認識するパターンを増やせば、どんどん練習にかける時間を短縮できます(そうなったらそうなったで他の曲を勉強したくなったりして結局ピアノに向かう時間は減らないかもしれませんが)。

 

もちろん、「私はゆっくりからだんだん速くなる過程が好きなの」という方もいらっしゃるでしょう。そういう方にも知識として知っていただければいいなと思います。