音階を弾く

 

練習曲や普通のソロの曲、室内楽やピアノ協奏曲などを練習していると、結構頻繁に音階を弾く箇所が登場します。ハノンさんの練習曲には「両手で音階を均等に弾く」セクションもあるぐらいです。ただ、ハノンさんの練習曲などでは「ゆっくりからだんだん速くやっていけばそのうちできるようになる」という従来の練習法を採用しているため、実際に「どのように指を動かせば速く弾けるようになるのか」とまでは説明していません。私の想像ですが、ハノンさんか練習曲を書いた時代には速く弾くための技術は「常識」としてピアノの先生やピアノを弾く人たちの知識になっていたのではないでしょうか。で、時代が下るにつれて「常識」はうまく伝わらず「才能」や「根性」でどうにかするものだという認識が私たちに伝わってしまったのではないかと考えています。

 

複雑なリズムで書いてある場合はともかくとして、速い音符(16分音符、場合によっては8分音符など)で書かれている場合、作曲家の意図は、音楽の一部というよりもサウンドエフェクトなんじゃないか(「奥さまは魔女」ではサマンサさんが呪文を唱えたり魔法を使うときにハープの音が聞こえてきますよね、あんな感じです)と勘ぐりたくなってしまいます。ドレミファソラシド♪というよりもチャララララララン♪(わかりにくい例えですね)と聞こえればいいんじゃないの?みたいな(これは速く弾くアルペジオ「分散和音」にも言えそうですけれども)感じです。

 

とりあえず、速い音階の弾き方について考えましょう。指使いはハノンなどに載ってるものがいいでしょう。

 

まだ完成していませんが(やはり、言葉というのには限界がありますね)、腕の動かし方をマスターされた方がやりやすいかもしれません。

 

音階を弾くとき何が問題って、なんと言ってもくぐり(こんな言葉あるでしょうか)です。右手で上昇するときには親指を、下降するときには中指、または薬指をくぐらせますが、くぐらせる瞬間までボーっとしていると、くぐらせたときに他の音よりも大きすぎたり、逆に小さすぎたりして均等には聞こえません。「あ、やだ、くぐらなきゃ!」というのと、「ふ、もう少しでくぐるぜ、準備は万端さ、ベイビー」(そこまで大げさなものでもありませんが)と精神的に準備しておくのではだいぶ違います。

 

具体的に、ハ長調を例にとって考えます。ハ長調の音階が一番難しいといったのはどなたでしたっけ?ちょっと覚えていないのですが、他の調だと黒鍵が登場するので自然に手が前後しますが、ハ長調の場合、意識しないと手を前後する必要性が感じられないため、指以外の動きをどのように使えばいいのかわからなくなってしまうので難しいのです。などと、理屈は置いといて、実際にやってみましょう。ハ長調右手です。

 

初めの3つの音はくぐらなくてもできるので指の速さと手や腕の動きを組み合わせて「気持ちよく」弾ければいいのですが、問題はその次の音、親指でくぐるファになります。腕の前後の動きでもお話しましたが、親指や小指で弾く場合、手全体が他の指を使うよりも鍵盤の奥の方に入っている必要があります。また、初めに親指を使用したあと、親指はファを弾くのにちょうどいい位置に移動していなければいけません。具体的には、親指で弾いたら2を使うわけですが、そのときに2のすぐ後ろに親指をスタンバイ、3を弾くときにも3のすぐ後ろにスタンバイ、そうすれば、親指がまた登場する際の移動がスタンバイしていない場合よりも短く済みます。距離が短ければ、鍵盤により近いということで、音質をコントロールしやすくなるわけです(すなわちドレミファソラシドなんてならずにすむわけです)。後半も同じように少しずつ親指をそれ以外の指が弾いているときに、その真後ろに移動させます。あとは、それの繰り返しです(ハノンさんの場合は4オクターヴですね)。

 

で、下降です。この場合、初めの5つはくぐりませんね(一番上のオクターヴだけですけれども)。で、3で「くぐらない」(ごめんなさい、無知なため「くぐる」の反対言葉が思いつきません英語で言うところ、OverUnderになるんですけど)わけですが、この方向の場合3が再登場する前にスタンバイできません。これはぎりぎりまで待たなくてはいけないのです。1を弾くときに(打鍵をしたあと)、ミの上に3をセットして弾きます。そして、同じように、4で「くぐらない」ときにも、親指で打鍵したときに4をシの上にセットして弾くわけです。

 

左手も同じ理屈でやっていきます(逆方向になりますが)。他の調はこれに比べればずっと楽なはずです。

 

くぐる(あるいはくぐらない)ときの注意ですが、右手の右側(小指側)、あるいは左手の左側(やはり小指側)と腕との角度はできるだけ180度を保つようにしましょう。もしもなんらかの角度を作らざるを得ない場合、できるだけ早く「気持ちのいい/痛くない」角度に戻すようにしてください。

 

これと、「速いパッセージはだんだん音を増やしていく練習」を組み合わせれば、メトロノームで四分音符120どころか、160ぐらいまで上げられるようにもなるそうです(私の大学の教授はそういってました)。