腕の「前後」運動

 

人間の手の指の長さにはそれぞれ差があります。だいたい、親指と小指が短く、中指が一番長いですよね(私は親指の方が長いわ、という方にはあまりお役に立たない情報になるかもしれません)。ところが、ピアノの鍵盤はすべて均等の長さになっています(音によって長さが違っていたら指を変えて弾くときに不便です)。ということは、親指や小指で弾くときには手は多少前に進ませないと届かないわけです。

 

白鍵を弾く場合でさえそうなのですから、親指や小指で黒鍵を弾く際には、さらに前の方に手を進めないといけません。ここまではピアノを弾く方の常識ですね。ただ、ここに盲点があるのです。

 

というわけで私のインチキ物理のお時間です。小学校の理科の時間(私の時代では6年生で習いました)、てこの勉強をされた方もいらっしゃると思います。ピアノが音を出す仕組みはてこの原理を応用したものなのです。あまり詳しく知る必要はないと思いますが(ご興味がある方は、小学校の理科の参考書や高校の物理の教科書を参考にされてみてください)、この仕組みのポイントをピアノ用にアレンジしたものを下に並べておきます。

 

      指が打鍵する点をここでは力点となります。なかなか見る機会はありませんが、鍵盤をずっと追っていくと力点で与えられた力の向きを反対に変えるための点があります。これを支点となります。打鍵するとハンマーが弦をたたくのですが、このハンマーが弦に当たる点を作用点となります。このとき、支点と力点の距離が長ければ長いほど、力点にかける力は小さくても作用点が実際に受ける力が大きくなります。言い換えれば、鍵盤の奥の方で打鍵するよりも、手前の方で打鍵する方が力の節約になるんです。

 

ということは、特に速いパッセー字を弾くときには、できるだけ鍵盤の手前の方の位置で弾いた方が楽、というわけです。

 

234のあとに15が続くときには234を弾くときに少しずつ奥に入っていくようにします。逆に15のあとに234が続くときには、やはり少しずつ外に向かっていくようにしていきます(これはそういうイメージでという意味で、実際に演奏される際には直線よりも直線に近い曲線を描くような動きができればいいと思います)。曲率があまりに大きいと次の地点に到達するための体力がもったいありません。

 

「楽をするために努力をする」ということを肝に銘じて研究されてみてください。

 

(73日追記)

手を前後することを述べましたが、場合によっては手首を上げることによって結果として手が前に、また手首を下げることによって手が後ろに動く場合もあります。場合に応じてやりやすい方法を使うことが大切です。