大腰筋刺鍼
大腰筋刺鍼の適応症
大腰筋は腰痛や下肢症状を治療するのに欠かすことができない筋肉です。まずはどんな症状に対して大腰筋に刺鍼すればいいのでしょうか。適応症を挙げていきます。臨床で以下のように訴える患者さんはおられませんか。
・あお向けで寝ているとき腰痛が起き膝を立てるか側臥位になって胎児のように丸まって寝ると楽。
・立ち上がるとき腰が真っ直ぐ伸びにくく、どこかに手をかけて立ちたくなる。
・立ちっぱなしや歩きっぱなしで腰痛が起き、座ると楽になる。
・身体を後ろに反らすとき腰痛が起きる。
・大腰筋が痙攣して起こるぎっくり腰の場合は咳、くしゃみをすると腰にひびく。
・朝起きたとき腰が痛む、寝床で寝返りして起き上がる時が辛い。
・睡眠時は仰臥位でいると辛く、側臥位で胎児のように仰臥位では膝を立てて丸くなっている方が楽。
・場所は腰の中央が痛み、左右はやや不明瞭である。
・腰の痛む所を押しても気持ちいいくらいで痛まない。
・深部に位置するために特に細身の人では腹部に痛みが投影されることがある。
以上はこういうタイプの腰痛には大腰筋刺鍼が適応ですよ、ということです。更には坐骨神経痛は勿論、膝痛、こむら返り等の下肢症状でも使用します。東洋医学でいう腰膝酸軟が当てはまるのではないでしょうか。また運動器疾患のみでなく腰下肢の冷えや、二便や生殖器疾患、慢性前立腺炎(非細菌性)等、骨盤内臓器の働きを調整します。
大腰筋の解剖事項
次に大腰筋の場所をおさらいしましょう。刺鍼する上で基本となります。深部にあるため腹側からみた画像になります。
起始:T12椎体、L1~5椎体、横突起、並びに腰椎間の椎間板側面
停止:小転子
支配神経:腰神経叢
作用:股関節の屈曲、上体を前に倒す
大腰筋はハの字の形のように末広がりで、腰椎の前面からお腹の両側を走行し大腿骨の内側についています。そして作用は股関節の屈曲させたり、上半身を前屈させたりと体を丸める働きがあります。
筋肉は緊張すると縮みっぱなしになります。丁度、日光に当たって劣化した輪ゴムをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。劣化した輪ゴムは伸びる力が失われて短く縮こまっています。ですから大腰筋が緊張した人は腰を曲げていた方が楽。反対にしゃんと真っ直ぐに伸ばす時や伸ばしっぱなしが辛いです。
極めつけは大腰筋が痙攣してひどいギックリ腰になっている場合です。体が真っ直ぐにならず腹臥位がとれません。
それに加えて重要なのが深さで成人なら標準体型で体表から大体5~9cmの所にあります。余程、細身の人でないと直接、手で触知することは難しいでしょう。ですから大腰筋が悪くても圧痛はありません。また大腰筋に適確に刺鍼するならば2.5~3寸の鍼が必要です。
更に大腰筋は腰椎に沿って付着していますから、腰神経叢(L1-4)や仙骨神経叢のL4.5は大腰筋の中を走行します。要するに大腰筋の緊張で腰下肢を支配する神経は、ほぼすべて絞扼される可能性があるので大腰筋の治療は欠かすことができません。また腰から腸や泌尿器、生殖器を司る交感神経がでています。



