夾脊穴刺鍼
夾脊穴刺鍼の適応症
夾脊穴は頚椎、胸椎、腰椎、仙椎の両側に刺鍼します。夾脊穴への刺鍼により局所の緊張が緩み中を通る神経根の絞扼を解消します。脊髄から脊髄神経が出ており刺鍼する高さによってそれぞれ適応症が変わります。また運動器疾患だけはなく、体性-内臓反射の要領で自律神経の調整する効果があり、非常に汎用性の高い刺鍼法です。
・頸肩腕症候群
・腰背部痛
・肋間神経痛
・自律神経の調整
夾脊穴の解剖事項
夾脊穴は脊椎の両側にありますから固有背筋、つまり板状筋や脊柱起立筋(棘筋・最長筋・腸肋筋)、棘間筋、回旋筋、多裂筋、半棘筋等のほとんどの部分に刺鍼します。これら固有背筋は姿勢筋ですから文字通り、重力に抗い姿勢を正す役目を司ります。これらの筋が機能しなければどうなるか。立位や坐位が保てずタコのようにフニャフニャと崩れ落ちていきます。また勉強中に眠気に襲われ頭がガクっと前に落ちてしまった経験は誰しもあると思いますが、それも頚部の姿勢筋が眠りに落ちることで機能しなくなった状態です。
筋肉というとダイナミックに体を動かすイメージがあります。反対に姿勢の保持となると一見筋肉を使っていないようですが、実は静的に収縮しているのです。動的な収縮は筋のポンプ作用によって組織に血液が押し出されますが、静的収縮は血管がずっと圧迫されたままなので血行が障害されやすく筋緊張につながります。しかも現代の日常生活では体を動かす機会は減りつつあるのでどうしても静的収縮が強いられるので、臨床では夾脊穴に限らずこのような姿勢筋へのアプローチが重要になります。
また固有背筋には脊髄神経の枝が分布しています。それが脊椎の両側面にある交感神経節において交感神経とリンクしています。よって夾脊穴を刺鍼することで自律神経症状に対応ができます。
夾脊穴の刺鍼法
大腰筋刺鍼のように棘突起間に中指を置き、押手を置いたらC7/T1の棘突起間の外方2~3センチに直刺かやや内に向けて刺入し、同じようにT1/2の外方からも刺入します。そしてT2/3間以下にも同様に等間隔でうちます。また首から腰までうつ時は、首を最後にうちます。これは顔が動かせない受け手の負担を考えての事です。また抜鍼の時も同じ理由で頚部から抜いていきます。
ここで一番気をつけるべきことは気胸を起こさない事。刺鍼事故で一番多いのが気胸なのです。
ではそのためにどうすればいいか。最も重要なのは鍼尖を椎弓に当てる事です。骨に当てれば絶対肺には刺さりません。今まで浅刺の鍼しかしていないと、この鍼尖が骨に当たっている感覚がよくわかりません。鍼から伝わる鍼尖が骨に当たったコツコツとした感覚を手に教えて覚えさせて下さい。その感覚さえ掴めれば自信を持って深刺できます。臨床では骨にうまく当たらなければ、その鍼はあきらめて安全深度まで引き上げます。
確実に鍼尖を骨に当てるにはしっかりと取穴しなければなりません。正中に近すぎれば効果が劣り、反対に外側に取りすぎると肋間から鍼が胸腔に入って気胸が起こる可能性があります。その為に棘突起間に中指を置いて椎弓に当たるように背部兪穴のより少し正中よりに取ります。


