コアジョイントメンテナンス

リンク機構とリンクペイン

 博田先生は1990年、著書【関節運動学的アプローチ (AKA)】に、“関節機能異常による筋スパズムが、その筋に付着する骨膜痛を起こし、その骨に付着する他の筋に有痛性のスパズムが発生し、この連続により痛みが全身に広がる可能性”があることを指摘しておられます。
 この可能性を1999年より柔道整復師として開業し、5年間で約3万例の放散痛を経験することで解明することができました。


 正常な関節可動域範囲で運動が行われた場合は、関節端での挟み込みによるロッキングは起こらず、靭帯−筋リンク機構による過剰運動の制動が行われます。もしオーバーユーズや筋疲労により、関節運動が関節の遊びの範囲を超えて過剰に行われた場合、関節端で軟部組織の挟み込みによるロッキング(関節機能異常)が容易に発生します。


 関節機能異常は、関節に周囲の軟部組織が挟み込まれ、ロッキングと言う異常が起こった状態であり、軟部組織の挟み込み部に疼痛が発生します。さらに機能異常のある関節を動かし続けると、特定のリンク経路上に痛み(リンクペインと命名)と筋肉の過緊張が現われます。


 この事より関節機能異常による関連痛(放散痛)は、オーバーユーズや過負荷が起こった時、関節の異常を知らせる生体の警告手段であると考えています。そしてこの生体の運動生理学的警告が特定のリンク経路上に一定の法則で放散していることを発見しました。


 仙腸関節を例にあげると、仙腸関節の機能異常から発生する痛みと過緊張は、仙骨が腸骨の軟部組織を挟みこんだ場合は、縦走する仙結節靭帯の長い線維束を下方へ放散し、それが坐骨結節内側部へ伝わり、さらに仙結節靭帯停止部と接する半腱・半膜様筋(内側ハムストリングス)の起始部の腱へ伝わっていました。
 次いで痛みは腱に続く筋線維の束へ伝わり、末梢部の腱を経て停止部である鵞足へ伝わっている事実に気づきました。また腸骨が仙骨を挟みこんだ場合は、仙骨の靭帯に痛みが発生し坐骨結節外側部へ放散していました。そして坐骨停止部から大腿二頭筋長頭へ放散し、腓骨頭の停止部へ放散していました。また仙腸関節の機能異常が強い場合や、下後(下前)腸骨棘近位の機能異常からは、さらに下腿を下がり足部・足指へ放散していました。


 それまで臨床において、関節機能異常のある仙腸関節にAKAを試みて、ある一定の部位の痛みと筋肉の過緊張が瞬時に消失する例を多く経験していました。このことは関節の一部に、ロッキング状態である関節機能異常がある場合、その部位より痛みが発生すると同時に、そこから起始する靭帯に緊張が発生し、リンク経路上を両者が伝わり特定の末梢に痛みを発生させていると考えました。特定の部位の関節機能異常(ロッキング)を外すことで、直ちに特定の部位の痛みと、過緊張が消失したと仮説しました。


 全身の放散痛に対し、原因となる特定の関節機能異常を検討した結果、頭部、顔面、頸部、体幹、腰部、手、足の全身に至るリンク痛の発生部位とリンク経路、末梢部の筋の過緊張、圧痛部位をピンポイントに詳細かつ正確に特定することができました。


 以上により、全身の放散痛(リンク痛)の発生源は、31対ある脊柱および周辺の関節(コアジョイントと命名)だと分かりました。頭頂から前頭部や眼窩、側頭骨および後頭骨に起こる筋緊張性頭痛は、環椎・後頭関機能異常からのリンク経路でした。眼窩より下部の顔面筋や歯肉などには、上位頚椎からのリンク痛でした。また上肢・上部体幹では、上位肋椎関節から3つのタイプのリンク経路が分類出来、下部体幹では下位肋椎関節に2つのタイプが分類出来ました。脊柱の椎間関節の機能異常からは主としてその部の痛みを訴えることが多い傾向がありました。


 仙腸関節からは、関節上部で腸骨が仙骨を咬み込んだ場合にのみ、体幹上方へ放散痛領域が出現し、その他のリンク経路は骨盤と下肢に放散領域が認められました。


 全身における具体的リンク経路と、各コアジョイントの機節機能異常に対する機能的治療法ソフトコアジョイントモビリゼーション(SCJM)は、希望する医療関連職種有資格者・スポーツトレーナーなどを対象に、講習会で示します。
 詳細は左紀メールアドレスにて、資料をご請求ください。