| 小説名 |
解説 |
主人公の一言 |
| 笛吹川 |
有名な小説だと思いますが、あまり紹介される事がないですね。厳密に言うと武田家の小説では無く、
戦国時代の庶民の暮らしを描いた小説だからでしょうか。
個人的には武田関係の小説では最も好きな小説です。 感動したというより、『重いな・・・・』という感じでしょうか。主人公は土屋惣蔵とその家族ですが、あの惣蔵は期待出来ませんよ、あくまで一雑兵として
描かれています。
武田ファンは豪華絢爛の戦国絵巻を期待するでしょうが、この小説では全く無縁です。生きることで
精一杯だったであろう戦国時代の人々の生活が淡々と描かれています。『実際はこんなものだったん
だろうな~』と思い知らされます。戦の場面もありませんし、武田家も決して好く書かれておりません、
ですから好き嫌いはハッキリ分かれるでしょうね。逆に武田家や戦国に興味のない人の方が好む小説
かも知れません。
唯一武田家の小説らしい新府城から天目山の場面では、純粋に勝頼に着いて行こうとする惣蔵兄弟と
引き止める家族の姿が胸を打ちます。ここからラストまでの生々しさと緊迫感は本当に凄いですよ。
著者は深沢七朗、そうあの≪楢山節考≫を書いた人です。(楢山節考も強烈な小説だったな・・・・)
そういえば笛吹川も楢山節考にとても近い雰囲気がありますね。ちなみに深沢氏は石和出身です。
この小説、50年位前に映画化されてます、何とDVDになっています!よし買おう!
この本は東京ではBOOK OFFで深沢七郎集としてよく100円で売られているので見つけたらぜひ
読んでみて下さい。
但し何度も言いますが嫌いな人は生理的に受付ないタイプの小説です(特に女性にはキツイかな・・・・・?)
それを覚悟の上でならぜひ! |
左手で藤づるを摑んで身を
ささえながら一人しか通れ
ない崖の曲がり角で
『お屋形様の御最後までは、
敵を寄せつけるものか』と、
一人斬っては崖下へ
蹴落とした。 |
| 戦国甲斐犬物語 |
小説としては平均的レベルですが,レア度としてはかなりなものではないでしょうか、読まれた方
いらっしゃいます? 主人公は一応武田家に飼われたワンコとなっておりますが思った程活躍して
いないのが残念です、
本のあとがきに『武田家秘書口伝の中にも、馬に精を入れるべき頃に、犬は守りを以てとある』
との一文があります。何のこっちゃか良く分かりませんが、犬は守ってくれますよ、という様な事でしょう。
(適当だな俺も・・・・)
犬越峠という信玄と犬の関係する史跡もありますが、現在でも犬の調教は原始的な作業である事を考えますと、戦国時代でも現在とほぼ同等に犬を動かす事は可能であり何かしら犬を使っていた可能性は
あるのではないでしょうか。
放光寺や深草観音などが出てきたり、また信玄の弟で恵林寺の僧の宗智が出ていたりと
個人的には好きな場面もあるのですが、まあコレクターズアイテム的な本でしょうか。
武田の小説らしからぬ本のジャケットも大変綺麗で(そう綺麗なんです)GOODです。 |
『ワン』 |
| 井上靖短編小説 |
大河ドラマ原作『風林火山』で有名ですが、短編小説でも面白いものがありますよ。
① 『天正10年元旦』 (天目山の雲より)
武田勝頼 織田信長 豊臣秀吉 明智光秀という天正10年の主役達の元旦の風景なのですが、
それぞれの運命を暗示させる大変面白い表現で描かれております。
勝頼は北条夫人と共に描かれておりますが、これがまたよい雰囲気なんですよ、けなげな北条夫人と
やさしい勝頼が描かれています
短編小説なのでほんの数十行なのですが、こんな美しい場面は他の武田の小説で読んだ事は
ないですね。初めて新府城に行った時は丁度桃の花の季節でこの場面が重なって感動したのを
憶えています。
文庫本のジャケットの絵がこれまたいいですね、表題の天目山の雲を表した絵だと思いますが
最後まで武田家の誇りをもって旗を立て田野の山中を歩く武田軍を表していると思います。
ちなみに武田の小説は二話のみです。
② 『篝火』 (真田軍記より)
長篠の合戦を描いた小説です。詳しい内容は控えますね、あの合戦を知っている人なら誰でも考え
付く事だとは思いますが・・・・・・・。思わず『プッ!』と吹き出してしまいました。
主人公は多田新蔵となっています。調べてみると実在の人物で多田淡路守満頼の孫にあたり
名を正勝といい、長篠の合戦で討死しています。小説では満頼の倅となっています、どちらが
正しいかは不明です。ちなみに兄弟の久蔵は天目山で勝頼と共に 討死しています。
この真田軍記という短編集は他にも武田とは無関係ですが『高嶺の花「』や『犬坊狂乱』など面白い
短編小説がありました。 |
① 『天正10年元旦』
勝頼は心の一方では全く
別のことを考えていた。
せめて桃の咲く季節
まで、どうにかしてこの
城を持ちこたえたい
ものだと。
② 『篝火』
『ひ、暇だったので
ございます』 |