変わった奴…そう思った。                                     
女かと思えば男だったし、雷電と月光の仲間ってのにしては年はかなり違うようだし、座禅
では居眠りをするし。
武術の稽古で立ち会った時には腕は立つ、三面拳とやらのひとりというのも納得だという感
想を持ったが、その練習中に一人の修行僧が怪我をし雷電が彼を治療しながら、飛燕と伊
達に治療というのも重要であるから見ておくようにと言われると
「わたしには必要ありません」
他人が負傷しようが自分が負傷しようが構わない。怪我をする未熟さが悪い。他人が死のう
が、自分が死のうが構わない。そんな事を言うだけ言って背を向けて何処かへ行ってしまっ
た。
雷電は苦笑し、月光はたしなめるように小言を言うと飛燕を追って行った。二人とも飛燕には
手を焼いているようだ。

ある日の夕刻。伊達と飛燕が作務(掃除)をしていた時のこと。
伊達が量に文句は無いが肉のでない食事の不平を漏らした。
「肉じゃなくて魚なら…。まあ魚でも食べれば少しは背が伸びるかもしれませんね。」
飛燕は伊達を手招いて、掃除を放り出して寺を出て河へと案内する。小憎らしい事を言う奴
だと思う前に掃除をサボり肉食を勧めるこの少年にただ驚いた。
そして河で魚を採り焼いたあげくに自分でも口にする姿を見て再び驚いた。




「こんな所いつか出ていってやる。」                               
そう言うと飛燕は立ち去った。
最初に会った時もこいつはどこかに行こうとしていたなと伊達は数日前の事を思い出す。

俺も望んで此処に居るわけじゃない。だけどあの場所を出たのは自分の意思だ。包帯に
隠された左手首を伊達はきつく握り締めた。