ふたりが振り返り左右へ分かれて跳んだのと、その殺気が黒い影となって襲い掛かって
来たのはほぼ同時だった。それは無言で武器を振り上げる。どうやら問答無用で殺すつ
もりであるらしい。
伊達の目は、その黒い影のような男の左手首に、見慣れた刺青が存在するのを見逃さ
なかった。
「逃げるぞ」そう飛燕に目で合図を送る。




大人の足と子供の足。直ぐに追いつかれた。
二手に分かれるべきだったと今更ながら伊達は思う。しかし二手に分かれたところでどうな
るものでもないとも気付く。こいつは俺を始末しそのまま帰って行くとは思えない。
あの深い穴の存在を隠すために俺と行動を共にしていた人間は消していくだろう。
そう考えると身体が自然に戦闘体制にはいった。
いつまでも逃げ切れるわけはない。いつかは戦わなければならない。
でも、それは今では無い筈だ。体力をつけ戦い方をもっと学んでおく必要がある。今自分が
生き延びるためにする事は逃げる事。誰かを犠牲にしても独りで逃げる事だと頭では判って
いた。
頭では判っていたのに何故かそうは出来なかった。