槍のはなし




古い汚ぇ店で、奥に座っている店主らしい爺さんも
これまた売り物の一部かと思うほど、年くった爺さんで。
その店の薄暗い片隅にこの槍は立て掛けてあったんだ。
何故だろうな。
槍を学んできたせいか、その槍が目に付いた。
心惹かれたんだ。
俺はその爺さんに値段を聞いた。
爺さんは値段を言った。
―ふざけるな。
俺はそう言った。
なんでって、明らかに安すぎる。
古ぼけたガラクタだの骨董品だのの目利きなんざ出来ぇが、
この槍が業物か、そうでないかくらいかは判るつもりだ。
そうしたら、爺さんは言った。
この槍は俺に持って行ってもらいたがってるってな。
骨董には、ごくたまにそういうことがある。それに逆らってはならないと。

爺さんはこうも言った。

この槍は本当の主を探している。
その御方は愛しい者に想いを告げることも無く、
遠い地へと離れ離れになってしまった。
きっといつの日にか転生して、思いを遂げられるはずだから。
どうか、その御方に出会うことがあればこの槍を渡して欲しい。
貴方が其の方とも思いましたが、どうも違うらしい。
その槍の主には「しるし」が有る筈だから。と


不思議なことに、店の場所も、爺さんの顔も何故か思い出せない。
もしかしたら、あの爺さんは人間じゃなくて、
売り物の骨董品か何かが喋っていたような気もしてくる。