EPISODE GUIDE
ULTRA WORLD

第23話前編
by しぃさぁ
それは、国際平和会議がトウキョウで開かれる年であった。
だが、その年・・・
空や海の事故が相次いだ。
しかも、その原因はようとして不明であった。



この事件に対応するため、
科学特捜隊はパリ本部から派遣されたムッシュアランを迎え対応策を練っていた。
「この図でわかる通り、今年に入って起こった空や海の事故は、
 全て国際平和会議に出席する、各国の代表の乗った、船や航空機なのです」
世界地図を前にアランの調査報告に耳を傾けるメンバー。

「ということはムッシュ、アラン。
 今度トウキョウで開かれる国際平和会議を妨害しようとするやつらが」
「ウイ!パリの本部でも、事態を重要に考え、私を日本に派遣したのです」
ムラマツキャップの推測にアランは深くうなずいた。
大体パリ本部から人が派遣されてくることこそが、
事の深刻さを物語っていた。

「チキショウ!
 全世界の全ての国の代表が集まるというのに、
 一体どこの国だ、隠れてこそこそ妨害しようとしている卑怯な国は!」
イデ隊員がアランの横でつぶやいた。
国際平和会議を妨害する、ということは、
全世界から平和を奪い取りかねない結果になりうるのだ。



そんな世界の平和を乱すような国は許せない。
しかし横でそのつぶやきを聞いていたアランはイデ隊員のそれを否定した。
「待ってください!それは地球上の国とは限りません!」

そのアランの言葉にムラマツキャップが目を見開いた。
「それでは、地球の平和を妨害しようとする、別の星の宇宙人!?」
アランの考えはパリ本部の考えなのだろう。
この事件の犯人が宇宙人だとすると事の大きさは一気に拡大し、
場合によっては科特隊の手に負えなくなる可能性すらあるのだ。
科特隊作戦室はアランの一言で一気に緊迫した空気が張り詰めた。

そのころ、国道1号線を狂ったように走る1台の車があった。
トウキョウで、老人と子供をひき殺して、そのまま逃げた車である。
夜道を逃走する犯人の車を必死に追いかける1台のパトカー。

「くそー、間道へ入って逃げる気だな」
カーチェイスさながらダートを疾駆していく2台の車。
ところが・・・
「うわっ!」
次の瞬間パトカーのハンドルを握る警官が見たものは、
いきなりまばゆくフラッシュした青白い閃光と、
その閃光の中で何かに激突したかのように大破炎上している犯人の車だった。

周りは何もない切り開かれた山の中腹付近。
犯人の車は一体何にぶつかったというのだろう。

翌朝、この事件は科特隊に伝えられ、
アランの指示もあり科特隊は事故現場に急行した。
「見えない壁?そんなバカな!?」
移動中の車の中で昨夜逃走犯を追跡した警官から報告を受けたハヤタ隊員は、
警官の報告をいきなりは信じられなかった。

「いや本当なんです。確かに、見えない壁か何か・・・」
警官は信じてもらおうと再度ハヤタ隊員の顔を見て訴える。
だがアランはこの報告を、さもあらんかなという顔で受け止めていた。
「ムッシュムラマツ、これは例の今、全世界で起きている事件と関係あるかもしれません」
「というと?」
「今までにパリの本部に来た資料によれば、
 沈められた船も、墜落した航空機も、
 全て何か、壁みたいなものに衝突したと考えるより他ないのです」
アランの話を聞き、それでも信じられないという表情のハヤタ隊員。
「う〜ん・・・見えない壁か・・・」
ムラマツキャップが険しい顔つきでつぶやいた。
解決の糸口すらつかめないこの事件が、
国際平和会議に関連するやも知れないというのか。



「あっ、あそこが昨夜の事故現場です」
警官の案内の下、科特隊は事故現場に到着した。
「よし、徐行しよう」
ムラマツキャップの指示でアラシ隊員はギアをローにおとした。

しかし車を徐行させ始めたその直後だった。
「あれ?」
アラシ隊員の顔が引きつった。
「どうした?故障か!?」
異常を察したムラマツキャップがアラシ隊員に声をかけるが、
アラシ隊員はエンジンを吹かしながら返答した。
「おかしいんです。エンジンには異常がないのに、進みません」
「なに?」
「まるで、前に壁か何かあるみたいで」
ドライビングにかけては科特隊一のアラシ隊員だ。運転ミスなど考えられない。
しかし車はそれ以上前に進まなくなった。



この時ハヤタ隊員が聞きなれない異常な機械音をキャッチした。
ハヤタ隊員は直感的に叫んだ。
「危ない!車を離れろ!早く!!」
反射的に皆はあわてて車を降り退避する。

そして5人が岩陰に身を隠した時だった。
車のすぐそばからとてつもなく大きい火柱が上がったかと思うと、
車はその火柱に飲み込まれ大爆発を起こした。
これが今までの事故の真相だったのだ。

「ロケットだ!」
謎の火柱。その正体をアラシ隊員がいち早く見破った。
「見えないロケットだ!」
驚愕の表情でハヤタ隊員が火柱を見つめる。
「ムラマツから本部、ムラマツから本部!
 見えないロケットに注意せよ。東京上空を警戒せよ!」
即座に命令を飛ばすムラマツキャップ。
しかし火柱=見えないロケットは、そんな彼らを置き去りに、
悠々と空へと舞い上がり消えていった。

「あわてて出てきたけどよ、見えねえロケットなんて探せっこねえじゃねえか」
ジェットビートルで緊急出動してはみたものの、途方に暮れるイデ隊員。
しかしフジ隊員は忙しそうに計器を操っていた。



「うるさいなあ、ちょっと黙っててよ。
 あなた科学特捜隊の隊員でしょ!電波探知機のことくらい覚えときなさいよ」
フジ隊員にたしなめられ、イデ隊員は渋い顔になる。

計器が未確認飛行物体を捕えた。
「しめた!北北東13キロ」
それが見えないロケットと確信したフジ隊員は少しの笑顔。

「よし!」
イデ隊員も気合を入れなおし、フジ隊員に指示された方角にビートルの機首を向ける。
「あ、あれ?」
その方向、北北東には、一筋の飛行機雲が天に向かって真っ直ぐに伸びていた。
「見えないロケットだ」
マルス133を握り締め、イデ隊員はしっかりとそれを確認した。



ビートルはすぐさま追跡を開始した。
早い。見えないロケットはすさまじい速さで逃走を図る。
しかしビートルの性能はそれに負けていない。
逃げるロケットに威嚇の砲撃を開始した。

フジ隊員は計器をにらみ付ける。
「南へ2キロ。東南へ1、5キロ。
 アッ、西へ5キロ。ダメじゃないそんなにはずれちゃ。
 北西へ1キロ。イデ君、しっかりしてよ!」
矢継ぎ早のフジ隊員の指示に、
操縦桿とマルス133の両方を操るイデ隊員は少々イラつき気味である。
「てやんでいちきしょう。見えねえっていうのは癪だなあ」
そんな文句を言いながらも、しっかりとビートルは追跡を続ける。



だが・・・
「逃げたわ・・・」
フジ隊員の見つめるレーダーから見えないロケットの反応が消えたのだ。
最先端後術を誇る科特隊のビートル。
その追跡を逃れるほど優秀なロケット。
「ちきしょう・・・あと少しだったのに・・」
イデ隊員は悔しがるが、
フジ隊員は呆然として助手席に座り込んでしまった。
「見えないロケット、一体どこの星から・・・」

本部に集合した、アランを含めた科特隊全メンバーは
見えないロケットについて、その性能を話し合っていた。
「よく見ろ、自転車の車輪には何本という金属の矢がついてる」
ムラマツキャップが自転車を例にロケットの秘密を説明し始めた。
「しかし、こうして・・・」
ムラマツキャップが自転車のペダルを手で回し始めると、
自転車の後輪は高速で回転し始め自転車のスポークは目で追えなくなった。



一同はこれを食い入るように見つめている。
「早く回せば回すほど見えなくなる。
 ものすごいスピードで動くものは我々人間の目には捕えにくくなるんだ」
「そうか!あのロケットはものすごい力で、振動してるってわけか!」
キャップの言わんとすることを理解し、叫んだイデ隊員。
彼には何かひらめきが浮かんだのだろうか。

イデ隊員の顔を見てうなずいたムラマツキャップはそのまま言葉を続けた。
「ウン!それともうひとつ」
今度はさまざまな色が描かれた円盤の元に皆が集まった。
「この円盤には、見るとおりこんなにたくさんの色がついている。
 しかしこうして・・・早く回せば回すほど、ほら!全ての色が消えて灰色一色のように見えるだろう!」
回転運動によってそれぞれの色彩を目で追えなくなると、複数の色は見た目混ざり合い、
人の目には一色の色へと変化したように見える。
この理論を応用したものが、あの見えないロケットだというのだ。



「すると見えないロケットを見破るには・・・」
イデ隊員が頭を抱えた。
この原理をこちらも応用し、今度こそ見えないロケットに勝利しなければならない。
悩み考えるイデ隊員を黙って見つめるムラマツキャップ。
こんな時はムラマツキャップもイデ隊員の頭脳が頼りだ。

しかしいいアイデアはそう簡単には浮かばない。
「くっそー!」
頭をかきながらイデ隊員はそのまま部屋から出て行った。
誰も静止はしない。皆はイデ隊員が研究室に向かったことを知っているから。
イデ隊員の姿を見送った後、ムラマツキャップはもうひとつの問題を取り上げた。
「しかし問題は、あのロケットがどこの星から来たのかだ」
ロケットの事に関してはイデ隊員に任せておけばいい。
残ったメンバーはロケットで飛来した宇宙人の素性の割り出しに専念することとなった。

深夜になってもイデ隊員の研究は続いた。
一度は逃がしてしまった見えないロケットを今度こそ捕獲しなければ。
イデ隊員執念の研究だ。
「イデさん、コーヒー」
フジ隊員が笑顔で入ってきた。
「ありがとう」
イデ隊員は振り向きもせずに言葉を返す。

「ここに置いとくわね」
昼間はバカにしてしまったが、彼女はイデ隊員のこういう能力を知っている。
今はあこがれのまなざしでイデ隊員を見つめるフジ隊員。
その視線にふと気付いたイデ隊員。
照れくさそうに笑い、コーヒーを口にし、更にまた研究を進めるのであった。

翌朝、イデ隊員開発の新兵器を積み込んだビートルの格納庫に全員が集まった。
「では、出発する。1号機にはスペクトルα線とスペクトルβ線。
 2号機にはスペクトルγ線がそれぞれ積み込まれている」
対見えないロケットの新兵器。
それを一晩で完成させるのだからさすがはイデ隊員と言うべきか。

だが、当のイデ隊員は、というと、
「イデ、おい、イデ!」
ムラマツキャップの怒声が飛んだ。
なんと、イデ隊員は立ったまま居眠りをしていたのだ。
フジ隊員にゆすり起こされ、ハッと気がつくイデ隊員。
「え?あ?なんですか??」
「なんですかじゃない!これから出発だという時に何を寝ぼけとるんだ」
「すいません。昨夜徹夜したもんで、つい・・・」
ムラマツキャップも呆れ顔だ。が、しかし彼がいなくてはこの作戦は始まらない。



「呑気なヤツだ・・・
 お前から一応3つの新兵器について説明してくれ」
イデ隊員は気合を入れなおし、新兵器の説明を始めた。
「はい。では説明します。
 スペクトルα線は光の屈折を自由に変えることの出来るものです。
 スペクトルβ線は光の色彩吸収力を破壊するもの。
 そしてスペクトルγ線は、光の反射角度に、ある制限を加えるものです」

いよいよ見えないロケットと戦うため科特隊出動だ。
1号機にはムラマツキャップ、イデ、フジの両隊員が、
2号機にはアラシ隊員とハヤタ隊員が乗り込んだ。



見えないロケットの所在を求め、山奥深くへと飛んでいく2機のビートル。
「よし、スペクトルα線発射!」
まずはイデ隊員がα線を照射した。
「スペクトルβ線発射!」
イデ隊員の掛け声で、ムラマツキャップがβ線を照射。

「スペクトルγ線発射!」
2号機からγ線が照射された。
そして3つの光線の照準がピタリと合い、その先には、
ついに見えないロケットがその姿を見せたのであった。



「見えないロケットが見えた!」
歓喜のイデ隊員。こうなればもう科特隊のモノだ。
「攻撃開始!」
ムラマツキャップの号令の元、2機のビートルは姿を現したロケットに砲撃を開始した。

(中編に続く)

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