EPISODE GUIDE
ULTRA WORLD
第23話後編
by しぃさぁ

「諸君、改めて、科学特捜隊パリ本部からの命令を伝える」
決意を示した強く冷たいその口調につられ、
ハヤタ隊員が力なくアランのほうを振り向くと、
アランはついに、その命令を口にした。

「ジャミラの正体を明かすことなく、秘密裏に葬り去れ。
 宇宙から来た一匹の怪獣として葬り去れ。
 それが国際平和会議を成功させるただひとつの道だ」

恐らくアラン、いや、パリ本部は、ジャミラの秘密を隠したまま、
ただの怪獣として科特隊極東支部に始末させようと考えていたのだろう。

しかし情に流され、涙してしまったアラン。
全てを知ってしまった科特隊。

夜が明ければ辛く苦しい戦いが待っているのだ。
両手で頭を抱え、悩み苦しむイデ隊員にフジ隊員が寄り添った。
「イデさん」
イデ隊員は動こうとはしない。
体を動かす気力など、彼のどこにも残っていなかった。



そんなイデ隊員の肩にムラマツキャップがそっと手を置いた。
「イデ、お前の気持ちは分かる。
 だがジャミラは今や人類の敵になってしまっているんだ」

理屈はわかる。だが・・・
訳も知らずにジャミラを責めた自分が許せなかった。
その葛藤がイデ隊員の心を締め付けた。
しかし科特隊隊員である以上、情は捨てなければならない。
キャップの手を払い、イデ隊員は立ち上がった。
「ばっかやろー!!!」

翌朝、ジャミラは世界平和会議の妨害を狙い、朝から姿を現した。
そこへ科特隊が応援を要請した防衛軍が火炎砲車を引きつれ着陣。
一斉火炎放射が始まった。



だがジャミラには何の効き目もない。
「あいつは火には何とも感じないのか」
ムラマツキャップは驚愕の声を上げるが、
ジャミラは科特隊と火炎砲車には目もくれず、
世界平和会議開催地へと進撃を開始する。

その途中に小さな村があった。
ジャミラ進撃を知り、村人達が大慌てで退避している最中、
ジャミラはその怒りから、その村さえもターゲットにした。

逃げ惑う村人達。その流れに逆行し、
一人の子供が村へと入っていくのをハヤタ隊員が発見した。
母親が子供を追いかけるが、村の消防隊に制止され、
必死に子供の名を叫んでいる。



「キャップ!オレはあの子を!」
言うが早いかハヤタ隊員が飛び出し子供の後を追った。
「おいハヤタ!待て!!」
あわてて制止するムラマツキャップだが、
そんな声はもうハヤタ隊員の耳に入らない。

ジャミラは口から火炎を吐き、
村とその周辺の森を火の海にしていく。
耐熱服も着用していないハヤタ隊員だが、熱さも忘れて火の森を走りぬけ、
無我夢中で子供を追いかけた。

今にも火に包まれそうな村に子供が入っていく。
そして子供は自分の家の前まで来ると、鳩小屋の扉を開けた。
彼は家で飼っていた鳩を逃がすために
危険をかえりみずここまで来たのだった。

狂気に駆られたジャミラがすぐそこに迫ってきている。
間一髪、ハヤタ隊員が子供を見つけ、小脇に抱えて走り出した。
ジャミラは村を踏み荒らし、火をかけ破壊の限りをつくした。

「ハヤタ!ハヤタ!!」
イデ隊員が駆けつけた。
ハヤタ隊員一人で子供を救出に行ったことを知り、援護にきたのだ。
「ハヤタ!」
ハヤタ隊員の姿を求め、必死に森の中を走るイデ隊員。
しかしイデ隊員がそこで見たものはハヤタ隊員の姿ではなく、
ひとつの村を壊滅に追い込み、更に荒れ狂うジャミラの姿だった。



「くそー」
惨劇を目の当たりにしたイデ隊員は深く呻いた。
そしてジャミラを見上げ、怒りの目でジャミラを睨みつけ、
その怒りをジャミラに向け思い切り叩きつけた。

「ジャミラてめえ、人間らしい心はもうなくなっちまったのかよ!」



燃える村を見たとき、
イデ隊員はジャミラに裏切られたような気がしてならなかった。
思わず叫んだイデ隊員の心の内は、
ジャミラを人間としてみていたからこその言葉だった。

そのイデ隊員の叫びがジャミラに届いた。
ジャミラの耳にはイデ隊員の言葉がはっきりと聞こえ、
我に返って自らの足元を見回すと、
そこには全てが火に支配され、
罪もない人々が逃げ惑う惨劇が映し出されていた。

ジャミラは怒りで我を忘れ、自分の敵を忘れていた。
動きが止まり、ゆっくりと周りを見渡すジャミラのその姿は、
紛れもない、人の姿だった。



ジャミラは本来の敵、
本来の目的である世界平和会議開催地へ進撃を再開した。
しかし科特隊と防衛軍も1度の攻撃でジャミラの弱点を掴んでいた。
水のない星に育ったジャミラは火には強かった。
科学特捜隊によって高射砲がすえつけられ、
人工降雨弾が装填された。

降雨弾が発射され、ジャミラの頭上で爆発すると、
多量の水が雨のようにジャミラの頭に降り注いだ。
とたんに苦しみもがき始めるジャミラ。
防衛軍の狙いは的中した。
しかしそれでも開催地に向け歩を進めようとするジャミラ。
その執念はいかほどのものなのだろうか。



水に苦しみ倒れこみ、それでも再び立ち上がり、
開催地をめざし破壊しようとするジャミラ。
もはや怒りと執念だけがジャミラを支えている。

遠くからその光景を見ていたハヤタ隊員は、
抱えていた子供を安全圏に非難させると、すぐに立ち上がり、
そして胸ポケットからベータカプセルを取り出して天高くに突き上げた。



ウルトラマンの登場だ。

ジャミラは居並ぶ国旗を蹴散らして、
今まさに開催地に足を踏み入れるところだった。
ウルトラマンはジャミラの横腹にタックルを入れ、開催地への侵入を阻んだ。



突然現れたウルトラマンに妨害されたジャミラは
怒りに任せてウルトラマンに襲い掛かる。
しかしウルトラマンは、ジャミラを押さえつけようとはするものの、
殴る、蹴るなどの攻撃は一切見せない。



そう、ウルトラマンは戦っているのではない。
ジャミラを押し留め、宇宙に返そうとしていたのである。
しかしジャミラはそんなウルトラマンに猛然と襲い掛かる。
なんとかジャミラを押さえ込もうとしたウルトラマンではあったが、
もうこれが限界だった。

ウルトラマンはジャミラとの間合いを取ると、
腕をクロスに組み、指先の照準をジャミラに合わせた。
ウルトラ水流だ。



多量の水がジャミラの体を襲う。
抵抗を続けようとするジャミラではあったが、ついに力尽きた。
ウルトラ水流により体が溶け、崩れ始めたのだ。

立つ力もなくなり、はいつくばってのたうち回るジャミラ。
断末魔のその声は、まるで人の泣き声のように聞こえた。
そして今、ジャミラの体は土に帰した。
ジャミラが踏み荒らし、たたきつけた世界平和会議参加国の
土で汚れた国旗とともに。



国際平和会議開催という華やかな舞台のその裏で、
人類がここに至るまでの過程で犠牲になった一人の青年のため、
人目につかないところに墓碑が建てられた。

青年の名は、ジャミラ。

戦いを終えた科特隊は全員墓碑の前に整列した。
「ジャミラ、許してくれ。
 だけどいいだろう。こうして、地球の土になれるんだから。
 お前のふるさと、地球の土だよ」



その日、国際平和会議は盛大に幕を開いた。
そして、科学特捜隊の手によって立てられた墓碑銘は、こう読めた。

人類の夢と、科学の発展のために死んだ戦士の魂、ここに眠る。



ジャミラの冥福を祈り、ムラマツキャップが、
ハヤタ隊員が、アラシ隊員、フジ隊員が
墓碑を後にする中、イデ隊員だけが墓碑の前を動こうとはしない。
「イデ、イデ!」
みんなが帰ろうとしてイデ隊員を呼ぶが、
彼はその声をあえて無視し、墓碑の前に立ち尽くした。

「犠牲者はいつもこうだ。
 文句だけは、美しいけれど」

あとがき

毎回ここで「主役は怪獣」と申し上げていますが、
今回はあまりにも悲しい主役、まさに悲劇のヒーローでした。

ジャミラ、今回活躍してくれた、人、の名です。

こういった話は昔から噂として誰もが聞いたことがあると思います。
宇宙に限ったことではなく、日常社会においても「隠蔽」という言葉は蔓延しています。

その犠牲者、というものは必ずいるわけで、
トカゲのしっぽきりさながら、そこに全てを押し付けて
のうのうとしている人たちも必ずいるわけです。

イデ隊員の言葉と行動に同情を覚えるのは、
みんなそれが正義と思っているからだと思います。

「犠牲者はいつもこうだ。文句だけは、美しいけれど」

今回のお話はこの言葉が全てだったような気がします。
脚本を書いた佐々木 守氏
この作品を取り扱った実相寺監督。

いったいどういうお気持ちだったのか、聞いてみたい思いで一杯です。

なんだかウルトラマンのあとがきじゃなくなってしまいましたね、すみません。

さて気を取り直して、次回のお話は、
海底センターを襲う死の恐怖。
こんなすごいのが暴れてくれます。



次回もぜひお付き合いください。
今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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