ULTRA WORLD
ウルトラマン


第24話前編

この日は、海底資源の開発を目的とした、
海底センターの運転が開始される、記念すべき日であった。
我らが科特隊もその式典に向かうため、ハヤタ、アラシ、イデの3隊員が
ビートルに乗り込み、管制基地へと向かった。
やがてビートルは基地に到着。
3人は海底へと降下するエレベーターに乗り込んだ。

「わあ!アラシ君アラシ君!ちょっと見てごらんよ!」
ガラス張りのエレベーターから見える素晴らしい景色。
それを見たイデ隊員は任務を忘れたかのようにはしゃぐ。
「いよいよ海の中に入るぞ」
ハヤタ隊員も海中の景色に興味をそそられているようだ。
「うわあ、きれいだなあ」
すっかりご機嫌のイデ隊員。
はてさて、これで任務の方は大丈夫なのだろうか。



「ですから、この機器と、海底センターを結ぶパイプラインが、
 このセンターの生命線になるわけです」
管制基地ではこの日の式典を見ようと集まった来客に、スタッフが基地内部を説明中だった。
ハヤタ隊員たちは先に来ているムラマツキャップ、そしてフジ隊員の元へと急いだ。

科学特捜隊の任務は、海底センターに、初めてスイッチを入れる科学公団総裁と、
そして、この会場へ200人目に現れるゲストを、案内することだったのである。

そして、
「みなさん、お静かに願います。
 次に、この会場に入ってこられます方が、
 海底センターに招待される幸運な方でございます」
そう、これまたちょうどと言っていい偶然。
到着と同時に200番目のお客様が案内されるところだった。

「200番目の方、どうぞ!」
そこに入ってきたお客様。それは、小さな女の子だった。
「可愛いお嬢様でございます。おめでとうございます」
皆はこの小さな、そしてラッキーなお客様を笑顔と拍手で迎えた。

管制基地を出発し、海底センターへと向かうS−25。
中に乗るのはムラマツキャップ。操縦桿を握るフジ隊員。
科学公団総裁のヨシムラ氏と、200番目のお客様のジェニー。
そして、ジェニーの案内役として選ばれたホシノ隊員だった。

「管制基地管制基地、こちらS-25。快調に航行中です」
フジ隊員の軽やかな声が響く。
「フジ君、慎重の上にも慎重に頼むよ」
ムラマツキャップの注意も受け流し気味に、フジ隊員は笑顔で振り向く。
「キャップ、隊員を信頼していただきたいものですわ」



ムラマツキャップはジェニーの元へ近寄り、窓の外を一緒に眺め、微笑んでみせる。
「さあジェニュー、写してごらん。いろんな魚がいるでしょう」
ジェニーは窓の外の海の景色と
見たこともないめずらしい魚達に視線が釘付けだ。
「ほら、あそこ」
「OH!」
ホシノ隊員もジェニーと共に海の景色を楽しんでいるかと思えば、
ヨシムラ総裁もなかなかご満悦。

海の景色を満喫しながら、S−25は海底センターへ進行していく。
「ホシノ君、ほら!」
S−25のすぐ前を大きな魚が通過した。
フジ隊員が指をさしホシノ隊員とジェニーにそれを教えた。

その時だった。
S−25の船体が何かの衝撃を受け、大きく揺れた。
ムラマツキャップがすぐさまコックピットへ駆けつける。
「大丈夫かフジ君。パイプラインに引っ掛けたんじゃないだろうな」
心配そうにフジ隊員の顔を覗き込むムラマツキャップ。
「キャップ」
なんとか船体は立て直したものの、フジ隊員も不安気な面持ちに変わる。
海底センターの生命線であるパイプラインを破損したら一大事だ。



「しっかり頼むよ」
「はい」
ムラマツキャップの注意に、緩んだ気持ちを引き締め操縦桿を握りなおすフジ隊員。
「フジ君、大丈夫か」
S−25の小さな異変に気付いた管制基地のハヤタ隊員からも連絡が入る。
「申し訳ありません。もう大丈夫です」
少々上ずったフジ隊員の声。
イデ隊員がハヤタ隊員からマイクを奪い取った。
「フジ君、がんばってね」
その言葉をかみしめるように、フジ隊員は慎重に操縦桿を操り、艦を海底センターへと進めていった。
その顔にはもう、先ほどのような笑顔はなかった。



「ジェニー、怖くない?」
「怖くない。勇気があるもん」
「へえ、えらいんだな」
ジェニーを気遣うホシノ隊員。
笑顔はじけるジェニーはカメラを両手でしっかり握り、
海の景色に次々とシャッターを押していた。



二人の会話にそばで微笑むムラマツキャップ。
そしてS−25は無事海底センターに到着した。

その内部を見学しながらヨシムラ総裁が口を開いた。
「200メートルの水底というと、水圧も相当なんだろうね、君」
「ええ。ですから非常に堅い特殊合金が使われているわけです」
センターのコントロール室へ招かれたヨシムラ総裁。
ここのメインスイッチを押すために総裁は海底センターに来たのだ。



「総裁。これは、メインスイッチです」
「ほう」
ムラマツキャップに誘われ、ヨシムラ総裁がスイッチの前に立った。
笑顔でスイッチに指をあて、力を込めるヨシムラ総裁。
ジェニーがカメラを構えるその前で、
ヨシムラ総裁の手によって力強くスイッチが押され、海底センターが起動を開始した。

「総裁、おめでとうございます」
管制基地から祝福のメッセージが飛び込んだ。
「おう、聞こえるかね。おめでとう。おめでとう」
上機嫌のヨシムラ総裁。ムラマツキャップも笑顔でヨシムラ総裁を見る。
「キャップ、では私、基地へ記者団を迎えに行ってきます」
フジ隊員は今一度管制基地に戻るため、S−25に乗り込むべく退室していった。

ムラマツキャップは次なる指示を下した。
「ホシノ君、総裁に施設を案内して差し上げなさい」
ムラマツキャップの言葉にヨシムラ総裁もご機嫌だ。
「じゃあ」
軽くムラマツキャップに会釈をし、
ヨシムラ総裁とジェニーはホシノ隊員の案内で共に各施設に向かった。

だがそんな和やかな雰囲気を打ち壊す事態が発生した。
いきなり海底センターを大きな揺れが襲ったのだ。
各計器が一斉に非常灯を点滅させ、センター内は一気に緊迫した。

「どうしたんだ!」
先ほどまで笑顔だったヨシムラ総裁の顔が引きつる。
原因はわからない。
大地震に遭ったような大きな揺れがいきなり海底センターを襲ってきたということしか、
今のムラマツキャップにはわかっていなかった。
「ホシノ君、ドックだ!」
ムラマツキャップは即座に退路の確保を考え、
ホシノ隊員をドックの安全確認に向かわせると、
まださほど遠くに行っていないであろうフジ隊員に無線を飛ばした。

「フジ君、フジ君、大至急戻ってくれ。センターに異常が起こった!」
しかしその急報はフジ隊員には届かなかった。
先ほどの揺れで無線がやられていたのだった。

そして、 海底センターを後に再び管制基地にもどるフジ隊員操縦のS−25もまた、
その途中とんでもない事故に遭遇していたのだった。
センターの生命線であるパイプラインが破損し、
エアが大量に噴出していたのだ。
フジ隊員は顔面蒼白になり、あわててムラマツキャップに無線で連絡する。
「キャップ、パイプラインが破損しているんです!
 キャップ!聞こえませんか?」
しかし海底センターのムラマツキャップからは応答がない。
とにかく帰還だ。フジ隊員は全速力でS−25を管制基地に走らせた。



「フジ君、フジ君!」
無線に向かい怒鳴るようにフジ隊員の名を呼ぶムラマツキャップだが、
その応答は返って来ない。
不安に駆られたヨシムラ総裁が立ち上がりムラマツキャップに駆け寄った。
「ムラマツ君。パイプラインが我々の生命線だと言っておったね」
「そうです。ただちに管制基地に引き上げましょう」
「うむ」
危険がある以上いつまでも海底にとどまってはいられない。
一刻も早くフジ隊員を呼び戻し、管制基地へ引き上げなければならないのだ。

しかし、状況はそんな彼らに追い討ちをかけるように悪化していく。
ムラマツキャップの通信機に受信が入った。ホシノ隊員だ。
「ムラマツだ」
「キャップ、キャップ!ドックから浸水してきます」
ホシノ隊員からの信じがたい報告。
ムラマツキャップの顔が青ざめた。
「なに!?ハッチを閉めるんだ!」
無線に向かって怒鳴り声を上げる。
「ドックを破壊してしまったら我々は帰ることも出来んじゃないか!」
報告を聞いていたヨシムラ総裁の言葉を無視し、ムラマツキャップはドックへと向かった。

「キャップ!」
ホシノ少年が駆け寄りドックの損傷箇所を指差した。
「よし」
二人は損傷箇所目指し走る。
しかし全ては手遅れだった。
ドックには大量の海水がごうと音を立てて流れ込み、
すでに海底センターの排水能力も機能しなくなっていた。

「キャップ、ドックが壊れたら、もう船は入れないんでしょ」
「そうだ」
なぜだ。
流れ込む化物のような海水を、ムラマツキャップは顔を紅潮させ見つめていた。

海底センターとパイプラインの異変は管制基地でも確認されていた。
「博士、これはどういうことです!?」
データの異変に気付いたハヤタ隊員が資料を手渡した。
その資料に目を通し、博士はイデ隊員をにらみつけた。
「おかしいよイデ。酸素の放出が多すぎるじゃないか」
「コントロールに間違いはないと思うんですが」
博士から資料を突きつけられ、原因の分からないイデ隊員は困惑している。

確かに酸素の放出は定量をはるかにオーバーしているのだ。
「パイプラインに事故があるかもしれない。
 向こうと連絡を取ってみたまえ」
「はい」
返事と共にハヤタ隊員はマイクを握る。
「キャップ、キャップ」
海底センターのムラマツキャップを呼び出すべく、マイクに向かい叫ぶハヤタ隊員。

その時、S−25で帰還したフジ隊員が、今にも泣き出しそうな顔で走り込んで来た。
「博士!」
「フジ君」
一同は驚いてフジ隊員の名を呼ぶが、フジ隊員はただただ下を向くばかり。
「どうしたんだフジ君」
がっくりと肩をおとすフジ隊員。その背後からハヤタ隊員が叫ぶ。
「博士、通信が出来ません」
その声に押されたかのようにフジ隊員も口を開いた。
「私の操縦ミスで、パイプラインを破壊してしまったんです!」
「なんだって!?」

いるもの皆驚愕の面持ちになった。
事態は最悪。パイプラインが破損したとなれば、
海底センターにいるメンバーを救うにはあと数時間の猶予しかないのだ。
フジ隊員は両手を机につき、がっくりとうなだれた。

ハヤタ隊員はなんとか海底センターと通信を取るべく、本部に急報を入れた。
「科特隊本部、こちらハヤタ」
「本部です、どうぞ」
「海底センターとの連絡が不能になった。
 そちらを中継して通信してくれ」
「了解。中継回路セットします」
本部で的確な処理が行われたおかげで、
ハヤタ隊員の無線はムラマツキャップの通信機に届いた。



「キャップ、キャップ!」
「ムラマツだ!」
やっと聞こえたムラマツキャップの声。
その声にハヤタ隊員も、フジ隊員も安堵の表情を浮かべる。
しかし、事は急を要する。事態は何ひとつ解決していないのだ。

「ハヤタ、不審事態が発生してるんだ。
 ドックが何者かによって破壊されてしまった」
「ドックが破壊された?」
海底センターはフジ隊員の報告以上に深刻な様相になっていた。
「S-25が出入りすることが出来なくなったんだ!」
「キャップ・・・」
さすがのハヤタ隊員も困惑するばかり。

「何とか対策を考えます。がんばってください」
「了解」
通信機から聞こえるハヤタ隊員の声に、ムラマツキャップは全てをかけるしかなかった。
通信を切り、救援隊が来るまでどうすればいいか、
ひとり最良の策を検討するムラマツキャップ。
ふと見るとヨシムラ総裁は落ち着きなくイスに座り、葉巻を口にしている。

「ヨシムラさん、緊急の時です。部屋の空気を汚さないようにしましょう」
「なんじゃと!」
「ここへはもう酸素も送られて来ないんです。
 迎えに来てもらうことも出来なくなったんです」
貴重な酸素。
その残量=ここにいるメンバーの生きていられる時間なのだ。



「この中に安全な場所はないのか!」
逆切れするヨシムラ総裁にムラマツキャップはきっぱりと言い切った。
「ありません!全てパイプラインを通じてセンターの安全を図っていたのですが・・・」

テーブルにうつぶせていたジェニーが堪えきれずに泣き出した。
ホシノ隊員がなぐさめようと近づく。
「ジェニー?ジェニー」
こんな緊急の事態でもジェニーの前で笑顔を保つホシノ隊員。
その優しい顔に、ジェニーも泣き止み、少しばかりの笑顔を見せるようになってくれた。

管制基地では海底センターのメンバー救出について話し合われていた。
「全て、私の責任です」
「フジ君、反省は後でも出来る。
 今はまず4人の命を救うことだ」
「はい」
博士になぐさめられ、力なくうなずくフジ隊員。



アラシ隊員が一計を案じた。
「博士、海洋研究所から、海底探検船トータス号を呼びましょうか」
アラシ隊員のひらめきに、博士は一筋の光を見た。
「トータス号なら海底センターへ行くことが出来るかもしれん。大至急頼む!」
「はい」
早速アラシ隊員は海洋研究所に連絡を入れる。

イデ隊員とハヤタ隊員は博士を挟み、次の手を考えた。
「しかし博士、問題はその先ですよ」
「ドックが浸水してるとなると、トータス号が現場へ行っても
 中の4人をどうやって収容するかですねえ」
しかし博士の頭には青写真が出来上がっているようだ。
「方法はひとつだ。
 海底センターのどこかに穴を開けて、そこへトータス号の排水ハッチをくっつけるんだ」
「なるほど!トータス号の排水能力をフルに使えば、
 いったん流れ込んだ海水を押し出すことができますね」
トータス号の能力を熟知しているイデ隊員にも、その作戦の全様がつかめたようだった。

しかし、まだ問題はあった。イデ隊員は再度質問をぶつけた。
「うん?いや、ちょっと待ってください。
 海底センターは特殊合金でできています。
 とても普通のバーナーじゃ穴なんか開けられませんよ、博士」
海洋研究所とのやり取りが終わり、再び作戦会議に参加したアラシ隊員がくちばしを挟む。
「いやいや!どんな特殊合金だって・・・こうすりゃ!」
ゲンコツで机を殴る格好をし、勢いつけるアラシ隊員だが、
しかしそんなアラシ隊員をあざけるようにイデ隊員がたしなめる。

「アラシ・・・力ずくじゃダメだよこういうことは」
さすがのアラシ隊員も返す言葉がない。
二人の会話を無視するかのように考え込んでいた博士がイデ隊員を見上げた。
「強力な溶解機はないだろうか?」
「う〜ん・・・よし!私にお任せください!」
ここ一番の武器兵器の開発はイデ隊員の得意とするところ。



「おいおいイデ!」
軽はずみな返事かとアラシ隊員が呼び止めるが。
「分かっています!4人の命がかかっています」
自信満々のイデ隊員。
彼の開発する超強力バーナーに、海底センターに残る4人の命運が委ねられたのであった。

(後編に続く)

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