ULTRA WORLD
ウルトラマン


第25話後編

戦いに夢中になるギガスとドラコをそのままに、
ビートルは雪の大地に降下、着陸した。

水爆を飲み込んだのはギガスとドラコではなかった。
ということは、まだほかにとんでもないやつが潜んでいるかもしれない。
機内にイデ隊員一人を残し、ハヤタ、アラシ両隊員は外へ出て調査を開始した。

ところが、二人が外へ出てまもなく、イデ隊員自慢の水爆探知機が激しい反応を示したのだった。
「おーい!反応があったぞ!」
イデ隊員がマイクで怒鳴る。
「方角は?」
アラシ隊員が叫び返す。
「動いている。一定していない」
「ハヤタ」
アラシ隊員が目配せをする。
二人は急ぎ足でビートルに戻る。



その時だった。
ハヤタ隊員たちのすぐ近くの頂から大音響が響いた。
怪獣の鳴き声だ。
その声が響くと同時に、ビートルに設置してあった水爆探知機が
過剰反応に耐え切れず破裂した。

近くにいる。間違いなく水爆を飲み込んだ怪獣が接近していた。
緊張に身を包み、厳しい顔であたりを注意深く見回すハヤタ、アラシ両隊員。

ビートルのすぐそばの岸壁が大きく割れた。
そしてその中から金色に輝く、とてつもなく大きな怪獣が現れた。
なんと、レッドキングだ。
レッドキングが山の中から姿を現したのだった。

ハヤタ、アラシ両隊員はすぐさま岩陰に身を隠し、突然現れたレッドキングの様子を伺った。
「ハヤタ。水爆を飲み込んでいるのはあいつだ」
アラシ隊員もハヤタ隊員も、すぐそのことに気がついた。
「あの怪獣の首のところ」
ハヤタ隊員が指差すレッドキングの首は異常に太い。
間違いなくこいつは水爆をその体に収めている。

「どうして爆発しなかったんだろう」
マルス133を抱え、アラシ隊員が疑問を口にする。
「新彗星ツイフォンが通過した時は、あの怪獣は地底深く眠ってたんだ」
やはりハヤタ隊員の説は正しかったようだ。



「そうか、それで爆発しなかったのか」
おかげで地球は全滅せずに済んだけど、
でもここでレッドキングに暴れられては元も子もない。
「おおい!」
イデ隊員が雪原を走って合流した。
「ハヤタ、あいつが怪獣同士のケンカにでも巻き込まれたら大変なことだぞ」
「やたらな武器を使うわけにもいかないし」

しかしそんな心配など知るはずもないレッドキングは、
ギガスとドラコの戦っているほうへと向かっていく。
恐らく自分が飲み込んだ水爆というものが、
どんなに恐ろしいものかということすら理解していないだろう。

イデ隊員が通信機のアンテナを伸ばした。
「科特隊本部、科特隊本部応答願います。
 こちら、イデ隊員です」
「イデか?ムラマツだ」
「ああ、キャップ」
通じた。やっとツイフォンの影響がなくなった。

「みんな無事か?」
安否を尋ねるムラマツキャップに、イデ隊員の応答は歯切れが良くない。
「ハッ!一応無事です。
 ところがキャップ、大変なんですよ」
曖昧な物言いにムラマツキャップの雷が落ちた。
「大変だけではわからんぞ!
 報告は分かりやすく正確にするんだ!!」
「はぁ〜・・厳しい・・・」
しょげるイデ隊員。そんな場合ではないと思うのだが。

相変わらず死闘を繰り広げるギガスとドラコ。
そして、悠々とその場に向かうレッドキング。
いよいよ三者が同じ場に集まった。



ギガスとドラコの戦いを見たレッドキングは、やる気満々である。
喧嘩好きのレッドキングは颯爽と2匹の間に割って入っていった。

レッドキングはまずギガスと向き合った。
突然の飛び入りにあっけに取られるギガス。
そのレッドキングを背後からドラコが突き飛ばした。
勢い余ってギガスに突っ込むレッドキング。



これで決まった。レッドキングの最初の標的はドラコだ。
どいてろ、とばかりにギガスを隅に追いやったレッドキングは
不意打ちを食らわせてくれたドラコに突っ込んでいく。
空を飛べるドラコは宙に逃げ、レッドキングは岩に体当たり。
おちゃらけるドラコ。なぜか悔しがるギガス。

だが百戦錬磨のレッドキングは1度でドラコの手を見抜いた。
再度ドラコに突っ込んだレッドキングは、宙に逃げようとするドラコの足をしっかり捉え、
そのまま地上に叩きつけると、馬乗りになりドラコの羽をむしり取った。
さすがはレッドキングだ。

これでドラコは空を飛べない。
圧倒的有利になったレッドキングは、ドラコ攻撃をギガスに譲り、
自分は大岩に腰掛けて観戦と洒落込んだ。

しかしギガスは弱い。
羽をむしられたドラコにすら叶わない。
観戦していたレッドキングのイライラは頂点に達し、
ギガスを下がらせ再びドラコと対峙した。



左フックから右フック。
レッドキングの攻撃が確実にドラコの顔面を捉える。
そしてトドメは逆エビ固めだ!
これにはドラコもなす術なし。口から泡を吹いて失神するドラコ。
見事、レッドキングのKO勝ちだ。

今度は的確な報告を受けたムラマツキャップだが、
本部からではどうしようもない。
「とにかく水爆を飲み込んでいる怪獣を戦わせることは危険だ!
 なんとか、2匹を引き離す手段はないか」
本部は現場にいる3人に全てを任せるしかなかった。

その現場の3人だが、
怪獣たちのケンカを指をくわえて見ているわけにいかない。
幸いにもドラコはレッドキングが倒してくれた。
あとは自分たちの手で何とかしなければならない。

ハヤタ隊員が指示を出した。
「いいか、あいつ=レッドキングはオレが誘い出す。
 その隙に向こうの怪獣=ギガスをビートルでやっつけてくれ」
「しかしハヤタ・・」
あまりに無茶な作戦にイデ隊員が渋るが、
「行くぞ!」
有無を言わせずハヤタ隊員は飛び出していった。
「待てハヤタ!」
マルス133をアラシ隊員から引ったくり、ハヤタ隊員を追いかけようとするイデ隊員だが、
見かねたアラシ隊員が遮った。
「おい!おいイデ、やめろ!」
「ハヤタが危ない!」
しかしその声を無視し、ハヤタ隊員は雪景色の中に消えていった。



ドラコ倒れ、レッドキングとギガスの一騎打ちとなった雪山の戦い。
しかしギガスなどレッドキングの相手ではない。
蹴りとパンチを何発か喰らい、張り倒されるギガス。
こりゃかなわん!とばかりにギガスはしっぽを巻いて逃げていく。

勝利の雄たけびを上げるレッドキング。
だが、そのすぐそばにハヤタ隊員が来ていた。
レッドキングのしっぽにレーザーガンを打ち込むハヤタ隊員。
これがレッドキングの機嫌を害した。



誰だ!オレに歯向かうのは!
そう言わんばかりに振り向いたレッドキングは、
岩陰から自分を狙い撃ったハヤタ隊員の姿を発見。

なんだこの小さいのは!と一睨みすると、近くの岩に右フック一閃。
その衝撃でハヤタ隊員は崖下に転落した。

しかしその手にはしっかりとベータカプセルが握られていたのだ。
ハヤタ隊員は転落し、転がりながらベータカプセルを頭上に振りかざした。



「ウルトラマンだ!」
そう、ウルトラマンの登場だ。
こうなればこっちのものだ。
「よし、我々はこの隙にあっちを!」
ビートルに戻ったアラシイデ両隊員は、レッドキングをウルトラマンに任せ、
自分たちはギガス攻撃に向かうため離陸した。

ウルトラマンvsレッドキング。
赤のボディカラーが白い雪にくっきり浮かぶ。
しかしレッドキングが水爆を飲み込んでいる以上、
ウルトラマンは迂闊に攻撃できないのだ。
それを知ってか知らずか、レッドキングは勇猛果敢にウルトラマンに突っ込んでくる。
力ではウルトラマンに勝るか?レッドキング。
しかもパンチの速度が速い!
ウルトラマンは防戦一方だ。



一方ギガスを追いかけたビートルは、程なくその姿を発見。
もはや戦意喪失のギガスめがけ、ビートルは背後からミサイルを撃ち込んだ。
ギガスは足がフラフラだ。レッドキングに受けたダメージが残っている。

それを見たイデ隊員がトドメの武器を選択した。
「ようし!強力乾燥ミサイルを撃ち込もう」
「え?なんだそりゃ」
アラシ隊員に説明もせず、イデ隊員はギガスの真上からミサイルを投下。
ミサイルは見事ギガスの頭部に命中。
すると、ミサイルに搭載されていた薬品がギガスの体内の水分を全て奪い取り、
完全に乾燥しきったギガスを粉々に粉砕したのだった。

「やったやった〜!」
両手離しで喜ぶイデ隊員。
だがアラシ隊員はまだ先を考えていた。
「バカ!喜ぶのはまだ早い!
 もしウルトラマンがスペシウム光線を使ったら、大変なことになる」
ビートルはウルトラマン援護のため、レッドキングのところまで引き返した。

光線技の使えないウルトラマンはパワーに勝るレッドキングに苦戦中だった。
ウルトラ1本背負いで応戦するものの、タフなレッドキングはすぐに起き上がり、
ウルトラマンめがけ攻撃を仕掛けてくる。

もうキリがない。
ウルトラマンはついに最後の大勝負に出た。
胸の前で腕をクロスに合わせる。ウルトラエアキャッチだ。
レッドキングの体が宙に浮いた。
両手から発せられた光がレッドキングの体を包む。レッドキングの動きが完全に止まった。

そして、絶対狙いをはずすわけのない八つ裂き光輪。
光の輪はウルトラマンの腕から発し空中で2つに分かれると、
狙い通りにレッドキングの首と胴を切断した。



水爆のつまった首がウルトラマンの方に飛んできた。
ガッチリこれをキャッチしたウルトラマンは、そのまま空へと飛び立っていった。
「おい!ハヤタだ!!」
戻ってきたビートル。
その眼下でハヤタ隊員が大きく手を振っていた。
「ちくしょう、心配させやがって」
笑顔で喜ぶアラシ隊員。
ビートルは早速、ハヤタ隊員収容のため降下したのだった。



その時、宇宙の遠い彼方で、謎の大爆発が起こったのを、
各地の天文台が観測していた。
何人かの天文学者は、新彗星ツイフォンによって乱れた宇宙が、
再び普段の姿に返るために起こった、宇宙エネルギーの逆爆発だと発表した。

「ハヤタ、アラシ、イデ。よくやった。
 ありがとう!みんな、早く帰って来い!」
全てが終わった。報告を受けたムラマツキャップは満面の笑みだ。
ムラマツキャップからマイクを受けたフジ隊員が嬉しそうに報告を開始する。
「ハヤタさんアラシさんイデさん!今入った情報を知らせます。
 日本時間午前3時20分15秒に地球とすれちがった新彗星ツイフォンは、
 その後次第に遠ざかり・・現在地球との距離は・・・
 え〜と・・え〜と・・・85億7千・・・」
桁が多すぎる。
「もういいでしょ。つまりキラキラ光る小さな星になっちゃったのよ」
つまりは平和が戻ったということだ。
本部にも笑顔が戻ったのだ。
きっとビートル機内も笑いに包まれていることだろう。

しかし・・・
なぜかイワモト博士だけが険しい表情で何か書類を睨みつけている。
そして、一枚の資料をムラマツキャップに手渡した。

「3026年7月2日・・・午前8時5分・・・なんですか?」
「電子計算機がはじき出したんだ。
 計算によると、彗星ツイフォンが同じ軌道を通って再び地球に近づき、
 今度は地球と衝突するんだ」



なんと、イワモト博士の計算によると、
彗星ツイフォンはランダムに浮遊する星ではなく、
約1100年かけて軌道を一周する彗星だというのだ。
「衝突!?」
フジ隊員がイワモト博士の顔を見る。
「そうだよ」
「3026年7月2日・・・」
唸るようにつぶやくムラマツキャップ。

だが、ムラマツキャップの顔はすぐに自信に満ちたものとなる。
「しかし、人類はその時想像もつかないような優れた科学を持ち、
 ツイフォンの軌道を変えることも出来るだろうな」
「だろうね」
その言葉を待っていたかのようにイワモト博士も微笑んだ。

「地球が、自分の作った武器で自滅してしまわないためにも
 その時までに人類は、もう少し賢くなっていなければ」
ムラマツキャップのその言葉に、イワモト博士が自信を持って答えた。
「なっているさ。僕は信じるよ」
「ボクも信じてる」
盟友二人はお互いを信じ、仲間を信じ、そして未来を信じた。

「フジ君、コーヒーを頼む」
「はい!」
キッチンへ向かおうとするフジ隊員。
だが・・・
「いや、ボクが入れよう。おいしいコーヒーをね」

ツイフォンは宇宙の彼方へ去った。地球は再び青く美しい。
しかし、3026年には再び、ツイフォンは地球に迫るのだ。
宇宙は、限られたごく一部のことしか知られていない。
いつ、どんなことが起こるのか、それは誰にも分からないのだ。

あとがき
さて今回は、ギガス、ドラコ、そしてレッドキングが活躍してくれました。
怪獣同士の戦いは、アボラス、バニラ以来だったと思いますが、
とても特撮らしくて、書いててとても楽しかったです。

彗星ツイフォン。
彗星が地球にぶつかる、というSFモノは映画などで結構見られます。
たいていの場合は、彗星が無事通過して一件落着、なのですが、
このお話は彗星が通過した後が大変でした。

科特隊もウルトラマンも大活躍でしたね。
冷や汗交じりでしたが(笑)

レッドキングが2度目の登場。
しかも水爆を6個も飲み込んで!
前回にも増してとんでもないやつです(笑)

ですがこの時代、すでに核の恐怖は伝えられていたんですね。
前編のイデ隊員のセリフ、
「その6個は起爆装置もそのままのはずだ。きっと爆発するぞ。
 6個も一度に爆発してみろ!猛烈な放射能で地球上の生物はみんな死んでしまうぞ!!」
核の恐怖を伝えるには十分なセリフです。

知らず知らずに子供のころ、
私たちはウルトラマンからいろんな社会のことを学んでいたのかもしれません。

やはりウルトラマンは偉大ですね。

ということで、次回は・・・
ウルトラワールド史上最大の難関!
大阪城をぶっ壊す、すごいヤツが登場です。



次回もぜひおつきあいください。
今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

このページのTOPへ