ULTRA WORLD
ウルトラマン


第26話前編

下校途中の小学生数人。
なにやらわいわいがやがやと騒がしい。
その中心には、怪獣のお面をかぶった少年。
ほかのみんなはその少年を取り囲むみ、はやし立てている。

何を話しているのやら、ちょっと聞いてみようじゃないか。

「バカじゃなかろかね?
 今頃怪獣がいるなんて、信じてるヤツ、いるもんか!」
「こいつ、怪獣映画の見すぎで頭にきたんだろ」

だが、みんながみんな、お面の少年をはやし立てているわけではないようだ。
「お前ら何も分かっちゃいないんだな。
 オサムの怪獣キチガイは有名なんだぞ。な!」
オサムとは、どうやら怪獣のお面をかぶった少年のことのようだ。
そのオサム少年の横にいた少年は、一生懸命オサム少年の味方をする。



「タケシ、オサムのあだ名、なんてったっけ?みんなに教えてやれよ」
「怪獣殿下」
「怪獣殿下だってよ!」
その言葉に、ついにオサム少年がお面を脱いで反論した。

「ちっともおかしくなんかないじゃないか。
 怪獣はホントにいるんだぞ。ボク、先生からちゃんと聞いたんだ。
 万国博の古代館に出品するために、
 大学の偉い先生たちが、無人島に大怪獣を捕りに行ってるんだぞ」
どこで聞きつけてきたのか、オサム少年はそんな話を持ち出した。

しかし、他の少年たちは、オサム少年の力説にただただあきれるばかり。
「怪獣を捕りに行ってるんじゃないの!」
「分かってないんだなあ。あれはね、
 大昔の動物の化石や珍しい植物を採集しに行ってんの!」
全く取り合おうとはしなかった。
むしろ本気になって話すオサム少年をからかうばかりだ。

「いる!怪獣は絶対にいる!!」
「ちぇ、人がせっかく教えてやってんのに頭にきちゃうな!」
「しおしおの、パァ〜。バカらしい!帰ろ帰ろ!」
ムキになるオサム少年をそのままに、少年たちは走り去って行った。

失意のうちに帰宅するのか、と思いきや、
オサム少年は怪獣に夢中のままだった。
そして、母の姿を見つけると、一目散にその元へ。
「ママ!ママ!5重丸!5重丸もらったんだ!」
「5重丸!?ホント!早く見せてごらんなさい」
「ウン!」
得意になって傑作を母に見せるオサム少年。

だが母の表情は曇るばかりだ。
それは、なぜか?
「しょうのない子ねえ。どうして国語や算数で5重丸が取れないの。
 怪獣の5重丸なんて、いっくらもらってもママちっとも嬉しくないわ」
そう、オサム少年が広げたそれは、図工の時間に書いた怪獣の絵。

「どうしてさ。5重丸もらったのボクひとりだけだよ」
褒めてもらえるとばかり思っていたオサム少年の思惑ははずれ、
母は眉をひそめるばかり。
「怪獣の絵だけじゃなくて、今度は別のもので5重丸もらってごらんなさい」
「厳しいこと言わないでよ。このこの怪獣には苦労したんだからさ。
 バババババッって火が出るんだ」
苦言を呈されたオサム少年だったが、それでもめげることはない。
怪獣殿下の名の通り、彼の頭の中は怪獣のことでいっぱいだったのである。



しかしオサム少年の言っていた「大学の偉い先生たち」は、
はるか彼方の遠い地で、大変なことになろうとしていたのだった。

南太平洋にある未開の島、ジョンスン島に渡った阪神大学のナカヤ教授を中心とする学術調査隊は、
ジャングルの奥で4日目の夜を迎えていた。
科学特捜隊のアラシ隊員は、ナカヤ教授から、
その射撃の腕前を見込まれて特別に参加したのである。

「それ、なんだと思う?」
ナカヤ教授は、参考資料に目を通すアラシ隊員にコーヒーを手渡し、笑顔で声をかけた。
「怪獣でしょ」
即答するアラシ隊員だったが、どうやらちょっと違うようだ。



「名前があるんですよ。ゴモラザウルス。
 1億5000万年前に実在したという記録が残ってます。
 それは、想像図だ」
ゴモラザウルス、の名を耳にしたアラシ隊員の顔がこわばった。
「ゴモラザウルス・・・というと、昼間話題になったゴモラの・・・」
「伝説上の動物ではなかったはずだ。
 だとすると、この島にはゴモラの化石があるはずだ」

ナカヤ教授はゴモラザウルスの存在に確信があるようだ。
ここ、ジョンスン島に来たのも、その確信があったからだろう。
1億5000万年前の恐竜の化石がフルボディで見つかれば、
これはもう万国博の目玉になるだろう。
アラシ隊員も奮い立つ思いでナカヤ教授の顔をみつめた。

その時だった。
闇夜を切り裂く何か動物の叫び声が轟いたのだ。
「あの鳴き声は!?」
ナカヤ教授とアラシ隊員は、思わず参考資料のゴモラザウルスに目をやった。

次の日、早朝より探索が始まった。
ゴモラザウルスの化石の発掘はもちろんだが、
昨夜の不気味な鳴き声の主を探し出す、というテーマもナカヤ教授は密かに持っていた。
不気味な、見たこともない植物ばかりの未開のジャングルを、
ナカヤ教授は恐れることもなく、コンパス片手に先頭で進んでいく。

「わぁ助けてくれ〜!」
不意に後方部隊から叫び声がした。
「待ってろ!!」
アラシ隊員がスパイダー片手に駆け付けると、
隊員の一人が吸血植物スフランに巻きつかれていた。

アラシ隊員はスパイダーでスフランを焼き切り、隊員を救出した。
「よし、逃げろ!!」



隊員は危機一髪助かった。
怪我はなかったが体力の消耗が激しい。
ナカヤ教授はここで休息を取ることにした。

ナカヤ教授とアラシ隊員は、これからの計画を変更せざるを得なくなった。
二人は地図を広げ、これからの行動を話合っていたのだが、
その目の前で驚くべき事態が起こった。
地面が大きく揺れ、はるか前方にある山肌に亀裂が入り、
大穴があいたかと思ったら、そこからは一体の大きな怪獣が姿を現したのだ。

その鳴き声。昨夜テントで聞いた鳴き声と全く同じ。
「ゴモラだ・・ゴモラだ!生きていたのか」
ナカヤ教授は歓喜の声を上げた。
「夕べ見せてもらったのとそっくりだ」
アラシ隊員は言うが早いかゴモラに向けスパイダーを構えた。

しかしそれを遮るナカヤ教授の手。
「おい、アラシ君、撃っちゃいかん。生け捕りにするんだ。
 生きたゴモラを日本に持って帰る」
「そんなムチャな!」
突然姿を現したゴモラと、とんでもないことを言い出すナカヤ教授。
アラシ隊員は顔を紅潮させ、両者の顔をかわるがわるに見るのだった。

ところかわってこちらは、とある団地の一室。
「オサムはもう学校へ行ったのか?」
「とっくの昔よ」
オサム、ということは、どうやらこの方、
あのオサム少年の父親である。

出勤前のくつろいだ朝。
オサム少年の父親は新聞を手にした。
「んっ!?なんだこの新聞は」
みればその新聞、1面の真ん中がしっかり切り取られ、ぽっかり穴が開いている。
「オサムが切り抜いてましたよ」
「困ったヤツだ」

その切り抜き記事をしっかりポケットにしまい、
オサム少年は得意げな顔で学校へ向かっていた。
そして仲間たちの前で教室の掲示板に貼りつけた。
「古代怪獣ゴモラだ。かっこいいだろ!」
「今朝の新聞に出てたやつだ」
「怪獣ってホントにいるんだな」
昨日までバカにしていたクラスメイトたちは口々にオサム少年のことを羨望のまなざしで見る。

「当り前さ!これでオレの言ったことを信用するな、みんな」
「うん!信用する」
「これからおれのことをくるくるパーなんて言わないな」
「言いません言いません、殿下」
一夜にして態度を変えたクラスメイトたちにすっかり気分を良くしたオサム少年。
ゴモラの存在を信じきった彼に敬意を表し、ここからは彼を「殿下」と呼ぼう。



殿下はすっかりご機嫌だ。
そして昨日5重丸をもらった自分の力作を友達の一人に渡した。
「よし、それでは、これを貼れ」
言いつけられた少年一人、掲示板に怪獣の絵を貼り付けた。

その絵について、殿下が説明をなさる。
「ボクが考えたゴモラの全身想像図だ。
 身長40メートル、体重2万トンの大怪獣だぞ」
得意満面の殿下。しかし、ここで少々きつめの質問が。
「でもどうやってそんなでかいヤツ日本に運ぶんだい?
 その怪獣空飛べるの?」
「そこまではまだ分かってないよ」
さすがの殿下もこの質問にはお手上げのようだった。

そのころ科学特捜隊本部では、ゴモラ空輸の会議が開かれていた。
「なんですって!?」
内容を聞いたフジ隊員の顔は驚きと怒りの形相である。
そして、ムラマツキャップもまた・・・
「う〜ん・・・
 本来なら科学特捜隊の名誉にかけても、怪獣の運び屋なんてお断りするところだが、
 万国博のためとあっては、協力せざるを得ない」
なるほど、そういうことか。

ナカヤ教授はどうしてもゴモラを生け捕りにしたいらしい。
だが大学研究室のスタッフでは生け捕りも空輸も不可能だ。
そこで白羽の矢を立てたのが科学特捜隊、というわけだ。

しかしフジ隊員はその計画の危険性を訴えた。
「でもキャップ、40メートルもある大怪獣を空輸するなんて無謀だと思うんですけど」
それにはイデ隊員も同調する。
「もし途中で暴れられでもしたらどうします?」

百戦錬磨の科特隊だからこそ、怪獣の怖さを知っている。
イデ隊員もフジ隊員も、万一の被害を考えると反論せざるを得ない。



だがムラマツキャップには勝算があるようだ。
二人の質問に笑みを浮かべると、
パイプ片手に二人に一言を言い放った。
「眠らせるんだよ」
あんなにドでかいゴモラを眠らせるなんて、そんなこと出来るのか。
ハヤタ隊員とイデ隊員は思わず顔を見合わせた。

ムラマツキャップは作戦の全容を話し始めた。
「現地のナカヤ教授からの連絡によると、
 ワシントン大学のスミス博士の発明したUNG麻酔弾を
 すでに取り寄せる手配がしてあるそうだ。
 ただし、UNGの効力時間は6時間しかないらしい。
 問題はこの6時間以内に、どうやってゴモラをオオサカまで運ぶかということだ」

ジョンスン島では、山に空いた大穴からついにゴモラが全身を現した。
凶暴なゴモラザウルスの末裔がこの地で再び暴れだす!
と思ったら・・・
外に出てきたゴモラは、まだ寝たりないのか、ちょっとした空地を見つけ、
再びゴロリと横になり、片肘ついて再び寝こんでしまった。



敵などいないこのジョンスン島。当然のことながらゴモラに全く戦意なし。
本当に凶悪恐竜の末裔なのだろうか・・・

ただちに特捜隊はジョンスン島に向けて出発した。
一方、国連本部にあるニューヨーク科学特捜隊支部からは、
スミス博士から託されたUNG麻酔弾をジョンスン島に運ぶため、
最新鋭のジェット機が飛び立っていた。
現地に到着した特捜隊は、ゴモラ生け捕りの作戦をたて、
今か今かとUNG弾を待っていた。

ニューヨーク支部からの機影が見え、UNG弾がパラシュート降下される。
こうして、すべての準備が完了し、ゴモラ生け捕り作戦が始まった。
現地に到着した科特隊。
ムラマツキャップとアラシ隊員が前線に発つ。

ゴモラは相も変わらず腹を出し、お昼寝の真っ最中だった。
その本能で、なのか、自分を襲う恐竜の気配を感じないのか、
全くの隙だらけである。
アラシ隊員は作戦通り、就寝中のゴモラの頭部にスパイダーを命中させた。

寝込みを襲われたゴモラは跳ね起きた。
寝起きは悪い方なのか、いささか不機嫌そうである。



不機嫌なゴモラはあたりを見回し、
自分にちょっかいを出しているムラマツキャップとアラシ隊員を見つけると
すぐさまその後を追いかけた。
「キャップ、計画通りゴモラはこっちへやってきますよ」
「このままA地点までゴモラを誘導。分かったな」

なるほどこれはムラマツキャップの作戦だったのだ。
ある一定地点までゴモラをおびき出して、そこでUNG麻酔弾を叩き込む。
ゴモラはその策にまんまと乗り、計画地点まで誘導されてきた。

「ここでよし」
ムラマツキャップがUNG弾をアラシ隊員に手渡した。
「わざわざアメリカから届けてくれた貴重品だ。仕損じるな」
科特隊一の射撃の名手、アラシ隊員にも緊張が見える。
自分の手首を銃座に、ゴモラに照準を合わせるアラシ隊員。



「撃て」
ムラマツキャップの号令とともに、UNG弾が放たれた。
しかし惜しくもゴモラの急所には当たらず、麻酔効果は全くない。
それどころか、更に自分に攻撃を加えてきたアラシ隊員に戦意満々で向かってくる。

「これが最後だ。失敗するな」
ムラマツキャップから渡された最後の一発。
アラシ隊員は慎重にUNG弾を装填する。
「撃て!」
再びゴモラに向けUNG弾をが放たれた。
今度は見事命中!ゴモラは強力な麻酔効果でぐっすりと眠りについた。



「大成功だ」
ムラマツキャップは笑顔になり、アラシ隊員とハイタッチ。
そしてすぐさま次の作戦を指示した。
「イデ、ハヤタ、予定どおり空輸作戦開始!」
ゴモラはUNG弾の効き目で大いびきをかき、まったくもっての熟睡中。
さてさて、科特隊はこの大怪獣ゴモラを空輸するようなのだが、
そううまくことがはこぶのだろうか・・・

(後編に続く)

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