ULTRA WORLD
ウルトラマン


第27話前編

生物学者、ナカヤ教授を中心とする学術調査隊が、
ジョンスン島で古代怪獣ゴモラを生け捕りにしたというニュースは
世界の生物学者を驚かせた。
ゴモラは、万国博古代館に出品されるために、UNG麻酔弾を打たれ、
科学特捜隊の手によって大阪へ空輸された。



しかし、ゴモラは突然目覚めた。
2000メートルの上空から落下したショックにも耐えたゴモラには一切の武器は通用せず、
さすがのウルトラマンも歯が立たなかった。
そして、ゴモラは再び地底に潜ってしまった。



ウルトラマンとゴモラの戦いを目の当たりにした怪獣殿下はただただ興奮していた。
殿下ママをはじめ子供たちを心配した母親たちが駆け付けた時、
すでにはるか上空に去ったウルトラマンを、殿下はいつまでも手を振って見送っていた。

「オサムちゃん、怪我はなかった?」
駆け寄る殿下ママ。
しかし殿下は自分が恐ろしくも危険な目に遭ったとは思っていないようだった。
「ボクは平気さ。
 それより、ウルトラマンが危なかったんだ。みんなも見ただろ」
「うん、見たよ!ウルトラマンってかっこいいな!」
子どもたちはみなウルトラマンの雄姿に興奮状態である。



殿下も母親の心配をよそに、先ほど拾ったベータカプセルを天に高々と突き上げた。
「なんだい、それ」
一人の子供が珍しがって尋ねると、殿下は無言でベータカプセルをポケットにしまいこむ。
「オサムちゃんホントに大丈夫なの?」
殿下は笑顔で母親の方に振り向く。
その後ろから、ゴモラ出現の連絡を受けたアラシ隊員とイデ隊員が走り寄ってきていた。

「あ、科学特捜隊だ!」
子供たちのあこがれ。
オレンジのユニフォームに身を包んだ科特隊員が現れたことで、
彼らの興奮は一段と増した。

「ゴモラは?ゴモラはどこですか!」
息を切らしてイデ隊員が訪ねると、殿下は得意げに胸を張る。
「遅い遅い!もうとっくに地面の中に潜っちゃったよ」
「なに!?また潜った?
 大阪の真ん中にでも現れたら大惨事になるぞ」
あたりを見回しながらアラシ隊員がうめく。
ゴモラ、全くもってやっかいな怪獣だ。

ウルトラマン敗戦の報は、すぐさまゴモラ対策本部のムラマツキャップに伝えられた。
さすがのムラマツキャップも、この報告には失意の色が見える。
「ウルトラマンも歯が立たんのか。恐るべき怪獣だ」
その話を聞いていたナカヤ教授が口を開いた。
「そうだ、ムラマツ君。
 ワシントン大学のスミス博士のところには、まだUNG麻酔弾があるかもしれない。
 すぐ運んでもらおう」
「ゴモラを眠らせてから攻撃する作戦ですか。なるほど」

UNG弾はゴモラに有効だということはすでに実証済みだ。
最低でも5時間はゴモラを眠らせることができる。
ゴモラ退治に希望を得たムラマツキャップは、すぐさま行動を開始した。
「フジ君!ニューヨーク支部にもう一度UNG弾を大至急運んでもらえるよう要請してくれ」
「はい!」
命令を受けたフジ隊員はすぐさま電話に飛びつく。

ムラマツキャップの指示は続く。
「それから、本部からマルス133と小型発信器を運んでもらう」
「小型発信器?」
なぜそんなものを、と問うアラシ隊員に、ムラマツキャップは説明を加えた。
「うん。ゴモラの体にぶち込んで、地底に潜っても居場所が分かるようにするんだ」

「私が行きましょう」
名乗り出たイデ隊員だが、ムラマツキャップはそれを制した。
「待て!君は残ってビーコン(受信装置)を作るんだ」
「任してください」
イデ隊員は急ぎ研究室に向かう。

「ハヤタ!君はビートルで本部へ飛んでくれ!」
矢継ぎ早にムラマツキャップの命令が飛ぶ。
手づまりだった作戦の糸がほころびたことにより、
ムラマツキャップの明晰な頭脳は次々と作戦が浮かび上がった。
それらを瞬時に無駄なく組み立て、実行に移すあたりはさすがムラマツキャップというべきだろう。

しかし、取り残された人が一人。
アラシ隊員だ。
「私は何をすればいいんでしょう?」
スパイダーを小脇に抱えたまま、棒立ちになり不安そうな顔をするアラシ隊員だったが、
ムラマツキャップはちゃんと彼の仕事も用意していた。
「君にしてもらうことはちゃんとある。府警を通じて緊急避難命令を出すこと!」
「了解!」
ひときわ大きな声で返事をしたアラシ隊員は、
府警に連絡を取るため、すぐさま受話器を握った。

オオサカ一帯に緊急避難命令が出たことにより、
殿下一家も例外なく非難を迫られた。
「あなた!早く逃げる用意をしてください!」
あわてて荷物をまとめる殿下ママは、夫、殿下パパにも非難を促す。



だが殿下パパはどっしりと腰を下ろしたまま、全く動こうとはしないのだ。
「どこへ出るかわからないものを、どこへ逃げたってムダでしょ」
そんなのんきなことを言いながら、パパはくわえ煙草で釣竿の手入れなんかしている。
「団地の下にいるかもわからないんですよ」
「いないかもわからないじゃない。
 それにさ、一度出たところには二度と出ないもんなんだよ。
 もしも出たところで、オサムが言ってた、なんとかマンがサッと現われて
 今度こそやっつけてくれるよ」
殿下パパ、なかなかの強者である。
それに生物の特性を理解しているようだ。
ゴモラはここには来ないという、ある種の確信が殿下パパにはあるのだろう。

「そんなこと言ったって・・もうみなさん避難してるんですよ」
相変わらずオロオロとする殿下ママ。
しかし、
「人は人。ボクたちはボクたちだよ。
 怪獣が出たくらいでビクビクしなさんな。そうだろう、な、オサム」
「ママ、パパの言う通りだよ」
夫と息子ののんきさに根負けしたのかあきれたのか、
「あわててやったから、お腹すいちゃった」
ついには殿下ママもどっかりと腰を下ろし、おにぎりをほおばるのであった。

2時間が過ぎた。ゴモラはどこに姿を消したのか。
更に2時間が過ぎたがゴモラ出現の情報は得られなかった。
一方、科学特捜隊本部から、ハヤタ隊員が武器を携えて戻ってきた。



「まだ怪獣はどこにも姿を現さないか」
自衛隊が情報収集に躍起になる中、ハヤタ隊員が姿を現した。
「キャップ、持ってきました」
両手にはマルス133と小型発信器のアタッシュケースが下げられている。
「御苦労」
ムラマツキャップは2つのケースを受け取り、中身を確認する。

イデ隊員が駆け込んできた。
「出来ました出来ました!キャップ、発信器のスイッチを入れてください」
イデ隊員はできたてのビーコンのスイッチをONにした。
「さあてと、うまくいったらおなぐさみ」
ムラマツキャップの顔を見て、催促するイデ隊員。
ムラマツキャップはうなずき、発信器のスイッチを入れる。

見事ビーコンが反応した。
発信器の電波をキャッチしたのだ。
「よくやった!御苦労!!」
ねぎらうムラマツキャップに、イデ隊員はうれしそうに微笑む。
「新兵器ならなんでもお任せください」
「これだけ武器が揃えば、勝負はこっちのもんだ」
自信満々のアラシ隊員。
さあ、ゴモラ殲滅の準備が整った。

「ゴモラ発見!」
自衛隊からの急報に本部は色めきたった。
ゴモラは今度はオオサカの真ん中に姿を現し、手当たり次第に建物を破壊している。
その狂暴さは恐ろしいばかりである。



ハヤタ、アラシ、イデの3隊員が現場に急行したとき、
ゴモラは怒りにまかせて大暴れの真っ最中であった。
「行こう!」
スパイダーを小脇にアラシ隊員が前線に飛び出す。

自衛隊の戦車部隊と科特隊の最新鋭兵器がゴモラを狙う。
だがゴモラは前進を止めようとはしない。
これだけの攻撃が全く効いていないのだ。
それどころかゴモラは、攻撃を受ければ受けるほど凶暴になり、
今まで以上に凶暴になり、まるで台風のように暴れ狂う。

窮地に追い込まれた科特隊。だがアラシ隊員が一計を案じた。
「ハヤタ!ヤツの武器は、あの大蛇のような尻尾だ。尻尾を狙え!」
ゴモラの動きをしっかり観察していたアラシ隊員は、
ゴモラが建物破壊にそのシッポを一番利用していることを知ったのだ。
「OK!」
アラシ隊員の肩を銃座にし、ハヤタ隊員がマルス133を構える。
ウルトラマンのスペシウム光線と同等の威力を発揮するマルス133の閃光が、
ゴモラのシッポ、その付け根めがけて発射された。



「やったあ!」
イデ隊員が飛び跳ねた。
マルス133は見事にゴモラのシッポを切断した。

一矢報いた。
ゴモラは再び地下に潜ろうと地面を掘り始める。



イデ隊員が小型発信器をスーパーガンに装填し、ゴモラに照準を合わせた。
しかし隣にいたアラシ隊員がそれを制止した。
「イデ、それ一個しかないんだ。そういうことはオレに任せろ」
「頼むぞ!しっかりな」
小型発信器をアラシ隊員に手渡すイデ隊員。
アラシ隊員は可能な限りゴモラに接近し、
そして見事にゴモラの背中に打ち込んだ。

「キャップ、発信器は命中しました」
「そうか!アラシ、よくやった!」
「ゴモラはまた潜りましたが、ビーコンは利いてますか?」
ムラマツキャップはナカヤ教授と一緒にビーコンをのぞきこむ。
「大成功だ!」
ムラマツキャップの作戦通り、ゴモラの居場所はこれで明確になる。
あとは出てくるところで待機し、叩きのめすだけだ。

ところが現場では、切り落としたゴモラのシッポがまだ暴れ狂っていた。
まるでトカゲのシッポさながら、主をなくしても暴れるゴモラのシッポ。
ハヤタ隊員は一気に片をつけるべく、
ウルトラマンに変身するべく地下道に入った。
「無い!」
胸ポケットにベータカプセルがない!
この時初めてハヤタ隊員はベータカプセルをなくしたことに気がついた。



「ハヤタ!ハヤタ!!」
暴れるシッポを持て余していたイデ隊員はハヤタ隊員の姿を探したが見当たらない。
アラシ隊員が前線から引き揚げてきた。
そしてゴモラのシッポめがけてスーパーガンとスパイダーをお見舞いする。
暴れ狂うシッポもその衝撃に大破。やっとのことで動きを止めた。

「フジ君、ゴモラの現在位置は?」
「現在キタハマを通過。東に移動中です」
ムラマツキャップに的確に答えるフジ隊員だが、
その言葉を聞いたナカヤ教授の顔がこわばった。
「なんだって?東というとオオサカ城のあるところじゃないですか」
「えっ!?」
フジ隊員はもう一度ビーコンに映る地図を確認する。
「本当だわ」

ナカヤ教授がムラマツキャップの前に進み出た。
「ムラマツ君。オオサカ城は大阪市民の、いや日本人の大切な遺産のひとつだ。
 絶対にゴモラの破壊から守らねばならん」
ムラマツキャップもそれは重々承知している。
自衛隊からの報告が重なる。
「ムラマツキャップ、自衛隊イタミ基地の火器部隊が、市街地に向かっております」
うなずき再び深く思慮するムラマツキャップ。

「スミス博士からの連絡はまだですか」
ナカヤ教授がまくしたてる。
「ニューヨーク科特隊支部から、間もなく返事があるはずです。
 フジ君、もう一度急ぐように連絡してくれ」
UNG弾の到着を首を長くして待っているのはムラマツキャップとて同じこと。

ゴモラが去った。現場から立ち去ろうとするハヤタ隊員たちのもとに
キャップからの受信が入った。
「ハヤタ、アラシ、イデ。
 ゴモラがオオサカ城の方向に向かっている。
 オオサカ城に万一のことがあってはいかん。急行してくれ!」
「了解!オオサカ城に向かいます」
ハヤタ隊員はベータカプセルを失くした動揺を隠し、
アラシ、イデ両隊員と共に車に乗り込み一路オオサカ城へと向かったのである。

(後編に続く)

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