ULTRA WORLD
ウルトラマン


第28話前編

オクタマのヒュウガ峠で、ここ一週間にバスの転落事故が続発した。
当局の必死の調査にも関わらずその発生の原因は全く不明。
警視庁は、我が科学特捜隊に調査を依頼してきた。

事故は、決まって正午に発生した。
トウキョウからオゴウチに向かうこの長距離バスは、
ちょうど正午にヒュウガ峠を通過する。
そのバスに乗っているのはムラマツキャップだ。
イデ隊員を伴い、ちょうど正午にヒュウガ峠を通過するこのバスに乗り込んだのだ。



ムラマツキャップの腕時計は、12時10分前を示している。
事件発生予想時刻まであと10分。
何が起こっても対応できるよう、ムラマツキャップは気を引き締める。
だが・・・
イデ隊員はというと、マイクロレコーダーを片手にコックリコックリ・・・
気持ち良さそうにうたた寝の真っ最中。
気づいたムラマツキャップがゆすり起こすが、
それでも睡魔に襲われたイデ隊員はシャキッとできないでいる。

そうしているうちに正午まであと1分。
何かが起こるのだろうか。

ムラマツキャップの腕時計が正午をさした。
そして、急な左カーブにバスがさしかかった時、運転手の視界を黒い闇が覆った。
「うわー!」
運転手が叫び急ブレーキをかけるが間に合わない。
バスはそのまま深い谷底へと転落していった。



意識を取り戻したムラマツキャップがあたりを見回すと、
自分の体は崖の途中の木にひっかかり助かったことを理解した。
恐らく転落の際、バスから放り出され、偶然ここに引っかかったのだろう。
ムラマツキャップは起き上がり、転落したバスのもとへ行こうとした時、
すぐ横にもう一人、黒服の、サングラスをかけた女性が倒れていることに気がついた。

「しっかりしろ、おい、しっかりするんだ」
ムラマツキャップは彼女をゆすり起こすと、女性はすぐに意識を取り戻した。
「大丈夫か?」
「大丈夫です。なんともありません。でも、どうして・・・」
彼女は突然の事故に、まだ混乱しているようだった。

「見ろ、バスだ」
ムラマツキャップが指さす方、
二人の足元から100メートルくらいの崖下には、
転落し、炎上しているバスの車体が横たわっている。
「では・・・」
「うん、我々だけがここに投げ出されて助かったらしい。
 しかしおかしい。これだけの事故だ。
 救援隊が来ていてもいいはずだ。それに死体も見えん」
事の成り行きからムラマツキャップは現状を疑う。

「ここを動いちゃダメだ。危険だからな。ちょっと下を見てくる」
黒い服の女性にそう言い含めると、ムラマツキャップは崖下で炎上するバスに向かっていく。



バスの車体は損傷著しい。火もまだ燃えている。
しかしバスの乗客は一人もいない。
「どうしたんだ・・・」
さらなる不信を募らせるムラマツキャップの背後から、一本の手が伸び、彼の肩を叩いた。
驚きあわてて背後を振り向くと、そこには一人の警官が立っていた。
「何しているんです?」
警官はムラマツキャップに冷めた口調で尋ねる。
「バスの乗客はどうしたんだ?」
「とっくに収容されましたよ。もう事故から1時間経ってますからね」
「もう1時間も・・・?そうか、それで・・・」



乗客が一人も車内にいなかったわけはこれで分かった。
警官は更に話を続ける。
「この高さから墜落したにしては不思議な事故ですな。全員かすり傷程度ですから。
 まあ一人だけ足を折った人がいましたが」
「一人だけ?」
「科特隊のイデ隊員とか・・・」
「ヤツは無事だったのか」
「ハァ?」
「いや、ありがとう」
警官に頭を下げ、ムラマツキャップは再び崖を登っていく。

「あ、国道へ上る道は向こうですが」
背後から警官が声をかけるが、
「この上にまだ用事があるんだ」
そう一言言い残しムラマツキャップはさっさと崖を登り先ほどの女性のもとへ向かった。

そして黒服の女性を待たせてあったところまで戻ってきたのだが、
いない。先ほどの女性の姿がない。
どこへ行ったのかとあたりを見回すと、
女性はちょうど崖の向こうに姿を消そうとしていたところだった。

「どこへ行くつもりなんだ?この先は・・・」
ムラマツキャップは胸ポケットから地図を取り出し、
周辺の様子を調べ始めた。
「いや街はないぞ。宇宙線研究所が山の上にあるだけだ」



ムラマツキャップは本部に無線を飛ばした。
「こちらムラマツ、本部どうぞ」
その無線を待ちわびていたかのようにフジ隊員が即座に応答する。
「あ、キャップ、フジです、どうぞ」
「バスは転落した。私は無事だ。突然のことで原因は全く不明。
 怪しい者がいるんで尾行する」
言い終わらないうちにムラマツキャップをアクシデントが襲った。
足元が崩落し、ムラマツキャップは十数メートル転落してしまったのである。

「キャップ!キャップ!!」
フジ隊員の叫び声に、ハヤタ隊員とアラシ隊員が駆け寄ってきた。
「キャップ、聞こえません!キャップ!応答してください!!」
必死にマイクを握るフジ隊員だったが、その声に反応したのはムラマツキャップではなく、
足の骨折で病院に収容され、これ幸いとばかりにのんびりしているイデ隊員だった。

「こちらイデ隊員。キャップと連絡が取れたのかい?無事なんだね!」
しかし悠長な口調のイデ隊員にフジ隊員は怒りの矛先をぶつける。
「イデ隊員、何呑気な事言ってるの?
 元はと言えば一緒に行ったイデ隊員がぼんやりだから!」
「だってしょうがないでしょう!気がついたらここに寝かされていたんだから」
「なら起きて探しに行きなさい!」
「ハイっ!」
フジ隊員に一喝されたものの、所詮自由の利かないイデ隊員であった。



何故かムラマツキャップの前から姿を消した黒服の女性は、
なんとか崖上の道路まで登りきった。
足元崩落で谷底へ転落したかと思われたムラマツキャップも、
さほどの被害はなく、
再び崖を登ると彼女の追跡を再開していた。

本部ではハヤタ隊員がアラシ、フジ両隊員を前に
今後の対策を話していた。
「事件から、すでに2時間経過したが、キャップとの連絡が取れない。
 キャップのことだから大丈夫だと思うが、一応万一の場合も考えられる。
 キャップとの連絡が取れるまで以後は私が指揮を執る」
二人ともそれに異論はなかった。

ハヤタ隊員は早速至急の手を打った。
「アラシ、フジ両隊員は事故現場に急行、イデ隊員と合流。
 キャップの行方を捜査してもらいたい」
「ハイ!」
ハヤタ隊員の指揮により、二人はヒュウガ峠に向かうため、車を走らせた。

ムラマツキャップは、なんとか崖上の国道まで這い上がってきた。
平地に立ち、まずは一息入れ、本部に連絡を取ろうと無線のアンテナを伸ばす。
だが、ノイズが入り通信できない。
落下のショックで壊れたのか?今のところ孤立無援のムラマツキャップ。

そのころ一人の男が、イデの救助されている病院に助けを求めてきた。
彼は山頂にある宇宙線研究所員だった。
すぐさま病院に収容された男はイデ隊員をはじめとした病院関係者や警察に、
宇宙線研究所で起こった事件の内容を話し始めた。
だがその報告は、常識ではとても信じがたいものだったのである。

「占領された・・・ダダに・・・」
「ダダァ!?」
苦しそうに話す男。しかし話の内容は意味不明だ。

「そ、そう・・う、宇宙生物だ・・・怪物だ・・・」
ベッドのすぐ横で話を聞いていた警官は不思議そうな顔で男を見つめたが、
イデ隊員だけはある程度、事の成り行きが理解できたようであった。



「もっと詳しく話してくださいよ詳しく!」
イデ隊員が男に向かって叫ぶと、
男は息も絶え絶えに話を続けた。
「一週間・・前だった・・・」

男の話によれば、ちょうど一週間前のこと、
宇宙線研究所の計器が突然全て狂いだし、
そして稲妻のような眩しい光と共にダダが現れた。
ダダは持っていたミクロ化器で研究所員を試験管大に縮小し、
人間標本を作り始めたという。

「私は、その時ちょうどデータを取りに行き、外にいた」
男は、ダダが標本を採取しているところに偶然戻ってきて、
その一部始終を目撃した。
だが彼もダダに見つかり標本にされる寸前でかろうじて逃げ切った。

「私は運が良かった。偶然飛び込んだのが貯蔵室だったのです。
 ヤツらは壁をすり抜ける能力を持っているが、
 貯蔵庫は、あらゆる宇宙線を遮る目的で、
 特殊重金属を遮る壁で覆われていたので入ってくることができなかった」
そしてダダの隙を見つけて貯蔵庫から抜け出し、この病院まで来たのだという。



「ヤツらは3匹いるんだな。そうか・・・」
おおまかな事情を把握したイデ隊員はダダに対抗する作戦を考えだしたが、
「もしかするとキャップは!」
そう、キャップももしかしらダダの餌食になってしまったかもしれない。
イデ隊員が無線に手を伸ばそうとしたその時だた。
ベッドの上にいた男が急に奇声を発し、音もなく姿を消したのである。

「おお!」
「どうしたんでしょう!?」
「何が起こったんだ!」
目の前でいきなり消え去った男。警官とイデ隊員は原因も分からずただ驚くだけだった。

消えた男が再び姿を現した所はダダの足元だった。
ダダの物質転送能力によって男は病院から宇宙線研究所のダダの元まで転送されてしまったのだ。
「トウトウツカマエタゾ、テマヲカケタナ」
ダダは足元に転がる男を標本にするつもりだったのだ。

通信機の呼び出し音が鳴る。ダダがスイッチを押すと、
モニターには、ここにいるダダの上役と思われる者の姿が映し出された。
「ダダ271ゴウ。ニンムヲチュウジツニスイコウセヨ」
「ハッ トウケンキュウジョ ゼンショインヲテスト。
 ウチ4タイガ ヒョウホントシテ テキトウナノデ サイシュシマシタ」
「シジシタ ヒョウホンハ6タイダ ワレワレノ ホシデハ ヒョウホンヲ イソイデオル。
 ダダジカン222 イナイニ 6タイノ ヒョウホンヲ カンセイセヨ」



やはりダダは、地球人を標本として集めているらしい。
ダダが通信を切ろうとした時、ダダ上司から警戒令が発せられた。
「ダダ271ゴウ ナニモノカガ ソコニチカヅイテイル ケイカイセヨ」
ダダ上司の言うとおり、研究所に向かう人影がある。
あの黒服の女だ。

ダダは通信を切り、その横に並ぶ試験管に目をやった。
試験管の中には、研究所員たちが収められていた。
試験管は全部で6本。空いているのはあと2本。



ダダは足元で寝転ぶ先ほどの男を立たせると、
なんと男に乗り移り、そのまま白衣を着て、研究所に入ってくる黒服の女のところに向かっていった。
高度な文明と能力を持ち合わせた高等生物ダダ。
黒服の女とムラマツキャップはこのダダにどう立ち向かうのだろうか。

(後編に続く)

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