ULTRA WORLD
ウルトラマン


第28話後編

崖の中腹で待つように言ったムラマツキャップを無視した黒服の女は
そのまま崖を登り切り、宇宙線研究所に足を踏み入れた。
いったい彼女はダダの存在を知っているのだろうか。

黒服の女は少なくともこの建物の中について知識があるようだ。
しかし彼女はなぜここにやってきたのだろう。
中の様子をうかがう黒服の女。人の気配は感じられない。
彼女はある一室のドアをそっと開けた。
「何が起こったのかしら・・・?誰もいないなんて・・」

そう言いながら振り返った時、彼女の背後に一人の男が立っていた。
「どなたですか?」
男が訪ねる。
黒服の女は一瞬驚きを見せたものの、男がここの職員だということがわかり安堵の表情を浮かべる。
「中央宇宙原子力研究所のアキカワ技官です。
 こちらからいただく先週の報告資料がまだ届いてないので、いただきにあがりました。
 いくら電話しても、誰も出ないものですから」
そう、彼女は決して怪しい者ではなかった。
話の通りアキカワ女史は、連絡不通の研究所まで
忙しい時間を割いてわざわざ報告書を取りに来たのである。



むしろ怪しいのは男の方だ。
そう、この男こそ、先ほどイデ隊員の入院している病院からここに転送され、
ダダに乗り移られたあの男だったのである。

「当研究所の電気系統回路に事故が発生して、外部との電信電話は不能です」
「だったら・・・どうして中央研究所に報告しないんです?」
男の説明にアキカワ女史は反論するが、
その反論を遮るかのように男はひときわ大きな声を出した。
「所長以下全員で修理中です。
 資料はすぐ持ってきます。お待ちください。どうぞ」

男の態度にぎこちなさを感じ不信感を募らせるアキカワであったが、
疑うにしても証拠がない。
アキカワは勧められるままに椅子に腰かけ、報告書を取りに行った男を待った。

だが男=ダダは報告書などを取りに行ったわけではない。
別室からアキカワの生体を分析し、標本としての質を調べていたのだ。
「IQ145.生体反応898.標本に適当・・・」

なんとなくではあるが不気味さを漂わせているこの研究所。
用を済ませてさっさと帰ろう、と考えていたアキカワであったが、
ふと見やった机の上、ビーカーの下に隠された走り書きに目をとめた。
アキカワはそっとビーカーを持ち上げると。
その下には、〜SOS DADA〜、とチョークで記されているではないか。
その走り書きでアキカワは全てを悟った。
ここは宇宙人に占拠されていることを。

そんなところに長居は無用だ。
アキカワは立ち上がり、研究所を脱出するためドアに手を伸ばした。
だが遅かった。ドアの向こうにはすでに、男=ダダが立ちはだかっていたのだ。

「どうしました?」
「いえ、ちょっと・・・」
「椅子にどうぞ。資料を持ってきました」
ためらうアキカワ。
「どうぞ」
強く促す男=ダダ。
やむなくアキカワは椅子に座る。
男は資料をアキカワに手渡した。
「一応目を通してください」
アキカワは無言でうなずき資料を開いた。
男はアキカワの前を離れ別の机で何やら作業を始めた。

(まずい、さっきの走り書きを隠さねば)
アキカワは男の目を盗み、そっとビーカーを持ち上げ、
走り書きの上に置き、隠そうと試みたのだが、
緊張の余り手が滑り、ビーカーを落としてしまった。

物音に気づき男がやってきた。
そして、机の上の走り書きを発見されてしまった。
「見たな」
男はアキカワの首を絞めた。見た以上生かしておくわけにはいかない。

アキカワ、万事休す!
そう思われたその時だった。いきなりの衝撃音と共に男はその場に倒れ込んだ。
ムラマツキャップだ。ムラマツキャップがあの後もアキカワの後を追い、
アキカワを襲うこの男の後頭部に椅子で一撃を加えたのだった。

一部始終を見ていたムラマツキャップにも、一連の謎の全てが理解できた。
「くそぉ!」
男は立ち上がりムラマツキャップに向かってきたが、
再び椅子で殴られ横倒しになる。
更にスーパーガンを喰らい、男はダダの姿に戻り、そして姿を消した。

「今だ!逃げろ!!」
アキカワを促し急いで部屋から飛び出すムラマツキャップ。
非常口を見つけ、脱出しようとするが、鍵がかかって扉が開かない。
何とかこじ開けようとしているところへ、後方からダダが接近してきた。

ムラマツキャップはスーパーガンで応戦しようとするが、
「しまった!エネルギーが!!」
こんな時に!
ムラマツキャップはスーパーガン自体をダダに向かって投げつけた。
ダダは何事もなかったかのように向かってくる。



しかし・・・
ダダは二人のすぐ前まで来て姿を消したのだ。
「どうしたんだ!?」
不思議がるムラマツキャップだが、今は脱出することが先決だ。
ムラマツキャップとアキカワは、再び出口を求めて走り始めた。

ダダが二人を追い詰めておきながら姿を消したわけは、
ミクロ化器がなかったからであった。
ミクロ化器がなければあの二人を標本にすることはできない。
ダダは通信機のスイッチを入れ、上司に連絡を取った。
「チキュウジンノ テキトウナ ヒョウホンヲ ハッケン シマシタ
 シカシ ミクロカキ コショウ シキュウ テンソウ ネガイマス」
「リョウカイ」
すると通信機の前には、数秒を待たずしてミクロ化器が転送されてきた。
おそらくこの通信機は転送機の役割も担っているのだろうが、
それにしても何という科学力なのだろうか。



出口を求めて走り回るムラマツキャップとアキカワは、
動力室のドアを発見した。
「動力室だ」
ドアを開け中に入る二人。
そこには見たこともない機械が置かれていた。

「これは?」
アキカワが訪ねる。
「連中はこんなものまで運びこんだのか。
 小型の、エレクトロニクス動力源だ」
ダダはこの動力室をまず占拠し、
自分たちの意のままに機械を操り、そして研究所員を襲ったのだ。
ムラマツキャップは言うが早いか、動力源のメインスイッチをOFFにした。

「イソゲ!ジカンハアト101・・・」
ダダ通信機に映っていたダダ上司の顔が消えた。
ムラマツキャップが動力をストップさせたからだ。
ダダはミクロ化器を掴むと、ただちに動力室に向かった。

動力が止まったことで妨害電波も消えた。
ムラマツキャップは無線で本部に急を知らせた。
「こちらムラマツ!こちらムラマツ!!
 宇宙線研究所にいる!宇宙生物ダダに襲われている。応援頼む!!」
その通信を受けたのは、本部にただひとり残っていたハヤタ隊員だった。
「了解!!」
通信を切ったハヤタ隊員は、そのまま本部の中で、
ポケットから取り出したベータカプセルを高々と突き上げた。



ウルトラマンの登場だ。
ウルトラマンは大空へ舞い、ヒュウガ峠へと急行した。

ムラマツキャップとアキカワが動力室を出た直後、ダダが動力室にやってきた。
ダダはすぐさま動力をONにする。
全ての機能が生き返った。その全ての機能はダダのものなのだ。
館内のあらゆるドアとシャッターが閉まり、
脱出しようとするムラマツキャップとアキカワの行く手を遮る。
あとはゆっくり追い詰めるだけだ。

だが、ここでまたダダの計算に狂いが生じた。
ダダ上司からの警報だ。
「ウルトラマンダ ゲイゲキセヨ!」
「リョウカイ ウルトラマンヲ タオシマス」

ダダはとりあえず二人を後回しにし、ウルトラマン撃退のため巨大化した。
上空からウルトラマンがやってくる。まずは空中戦だ。
ダダは大空へと舞い上がった。
しかしウルトラマンと接触したダダは大きくバランスを崩し、
テレポーテーションを使って、かろうじて地上に着地した。



次は地上戦。
しかしダダはここでもウルトラマンに全く歯が立たない。
必死にテレポーテーションを使ってウルトラマンの背後を取ろうとするが、
基本的な強さが違う。

すぐにウルトラマンにつかまり、パンチ、キック、チョップの雨あられ。
挙句の果てにはジャイアントスイングで目を回され、強烈に地面に叩きつけられて完全にグロッキー。
もはやテレポートする力さえ残っていないところへとどめのスペシウム光線を頭部に喰らってジ・エンド。
やっとのことでテレポートし、通信機の前まで帰ってきて上司の命令を仰ぐ。



「ダメダ、ウルトラマンハ、ツヨイ」
「ニンゲンヒョウホン562タイ、シキュウサイシュシテ、テンソウセヨ、イソゲ」

この上司にとって、ここにいるダダよりも標本の方が大事らしい。
その命令に忠実に行動するダダ。
最後の標本、そう、それはムラマツキャップとアキカワ。
上司の命令を受けたダダは、この二人の確保を優先とした。

だがこのダダ、科学と身体能力には優れているものの、
弱い!とてつもなく弱いのだ!!

なんとか外へ出たムラマツキャップとアキカワの前に立ちはだかってはみるものの、
ムラマツキャップのタックルを喰らい簡単に倒れこむ。



その横を走り抜けようとするアキカワの足を引っかけて転ばせて、
ムラマツキャップの蹴りを喰らってまた倒される。
非常梯子を使って屋上に出るムラマツキャップとアキカワを、
テレポーテーションを使って先回りしてみれば、
またしてもムラマツキャップに簡単に足をすくわれ地上に落下してしまう。



弱い。ダダは本当に弱い。

しかしダダにはミクロ化器がある。
これにかかったらさすがのムラマツキャップもかなわない。
ダダは再びテレポーテーションで屋上に上がり、ムラマツキャップとアキカワにミクロ化器を構えた。
後ずさりする二人。詰め寄るダダ。
アキカワが足を滑らせた。
かばおうとしたムラマツキャップもバランスを崩した。
二人は屋上から地面に転落!

しかし、ここにウルトラマンが飛び込んだ。
地上すれすれ、ウルトラマンが回転レシーブさながらのキャッチで、二人は窮を脱することができた。

さあ、ここからはウルトラマンとダダの一騎打ち。
ダダはテレポーテーションを駆使してウルトラマンの背後をとるが、
何回も言うように基本的な強さが違うのだ。
どんなにダダが背後をとっても、ウルトラマンにつかまり一撃を喰らう。



どんなことをしてもウルトラマンには敵わないことを知ったダダは、
ついにウルトラマンの前から逃げ出した。
敵前逃亡。
テレポートしながら空を飛び、ウルトラマンの目をかく乱するが、
ウルトラマンはウルトラアイでダダの姿を明確し、
ついにとどめのスペシウム光線を放った。
ダダは空中で大爆発。
人間標本のもくろみもここに露と消えた。

宇宙線研究所に到着したアラシ、フジ両隊員。
「怪獣は?怪獣はどこだ!?」
勢い込んで駆け寄ってきたアラシ隊員をムラマツキャップが笑顔で迎える。
「もうウルトラマンがかたずけちゃったよ」



そして車の蔭からは、
「残念だったな、アラシ」
「あっ!ハヤタ!!」
そう、ハヤタ隊員がイデ隊員を伴って姿を現したのだ。

結局アラシ隊員とイデ隊員の活躍の場はなく、
ウルトラマンとムラマツキャップの活躍で、今回も地球の平和は守られたのである。

あとがき

今回は宇宙人のダダが活躍してくれました。
バルタン星人、ザラブ星人に次いで3人目の宇宙人の登場です。

ダダ、この姿はインパクト強いですね。
この顔、このシマシマの体。一度見たら忘れません。
お話の内容は全く覚えていませんでしたが、
ダダを忘れることはありませんでした。

しかし・・・弱い!本当に弱い!!
ウルトラマンの鉄則「宇宙人はケンカに弱い」を地で行くお話で、
あまりの弱さに最後はまじめに書くのがアホらしくなっちゃいました。
多分今まで出てきた怪獣、星人の中でも最弱だったでしょう(笑)

あれだけの科学力と身体能力があれば
地球征服なんて簡単だったと思うのですが、
作戦を間違えたのかなあ・・・?

ダダ君、体も鍛えようね。お疲れ様でした<m(__)m>

とは言うものの、中盤ではムラマツキャップが大ピンチ。
自らの命をかえりみず、アキカワ女史を守って奮闘しました。
さすがはムラマツキャップ。男の中の男。理想の上司です(^_^)v

イデ隊員は・・・足を骨折するためだけに出てきて・・・
こちらも、お疲れ様でした<(_ _)>

さて次回29話は、
ムラマツキャップとイデ隊員が地底で大ピンチ!
黄金色に輝くすごいヤツが登場です。



次回もぜひお付き合いください。
今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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