ULTRA WORLD
ウルトラマン


第29話前編

日本一の埋蔵量を誇っていた山から、
急に金が採れなくなった。
多くの学者たちが調査にやって来たが、
原因が分からなかった。

そして、今、廃坑になった金山が大きく揺らいで、
山腹に大きな穴が開いたかと思うと、
そこからは1匹の、全身が金色に輝く怪獣が姿を現したのである。

「はい、こちら科特隊本部です。
 ・・・、場所は?・・・分かりました」
受話器を置いたムラマツキャップは即座に立ちあがった。
隊員たちもキャップの前に集まる。
「オオタ山から怪獣が現れたそうだ。ムロオ町は全滅!」
ムラマツキャップが手短かに状況を報告する。



「オオタ山というと、廃坑になった山ですね」
アラシ隊員が確認する。
「キャップ、すぐに出動しましょう!」
「イデ待て!」
出動をはやるイデ隊員だが、ハヤタ隊員がそれを制し、
ムラマツキャップの前に進み出た。

「それでその怪獣についての報告は何もないんですか?」
「うん。黄金の肌をもった凶暴な怪獣で、
 地上よりも地底での方が早く行動できるらしい。
 逃げようとする先々へ地下から現れて、退避しようとした人々が大混乱したそうだ」
戦う前に情報戦。ムラマツキャップは今聞いた情報を明確に隊員たちに伝えた。



「地底に潜って行動するとなると、こりゃ作戦が難しいなあ」
確かにアラシ隊員の言う通りだ。
だが、そのとなりで何やらイデ隊員がニンマリしている。
「おっとっとアラシ隊員ご心配なく。
 私が設計して科学センターに制作を依頼していた
 地底戦車ベルシダーが完成しています」
なるほど。そういうことだったとは。さすがはイデ隊員だ。

しかし調子に乗るのがイデ隊員の悪い癖。
「えーこの威力はですね・・・」
勢いがついたイデ隊員はその場で長話を始めようとしたが、
「イデ、今ここでベルシダーの威力を説明されても聞いてる暇はない。
 現地でゆっくり見せてもらう」
「そうでしたそうでした」
またしてもハヤタ隊員にさえぎられ頭をかく始末。
ともかく、イデ隊員新開発のベルシダーが活躍することになりそうだ。



「イデ、ビートル1号にベルシダーを乗せろ。
 ハヤタ、アラシ、フジはビートル2号でムロオ町へ行くんだ。
 怪獣のために、救助隊も町には入れないらしい。
 町にはまだ、動けなくて救助を待っている人々がいるはずだ」

いつもながら的確な指示を出す、冷静沈着なムラマツキャップである。
だが、キャップは一体どういう策を頭に描いているのだろう。

「キャップは?」
ハヤタ隊員が不安そうに聞くと、ムラマツキャップは自信に満ちた顔で答えた。
「私はイデと、ベルシダーで地底の怪獣をやっつける。
「これ以上被害を出さないためにも、こっちから地底に挑戦するんだ」

石橋を叩いて渡るムラマツキャップが今回に限り好戦的だ。
未知の世界ともいうべき地底に殴り込みをかけるという。
よほどイデ隊員開発のベルシダーに信頼を置いているのだろう。
キャップの号令と共に、隊員たちはそろってビートルに乗り込んだ。

そのころオオタ山では再度姿を現した怪獣が、
防衛隊の攻撃をあざ笑うように暴れまわっていた。



ミサイル弾が炸裂し、轟音と閃光に飲まれるオオタ山。
その戦場に科特隊のビートルが深紅の姿を現した。
科特隊は怪獣の姿を確認すると早速攻撃を開始。
次々と怪獣の背にロケット弾を撃ち込んだ。

科特隊の攻撃はすさまじい。
さすがの怪獣も、こりゃたまらん、とばかりに地底に逃げかえろうとする。
「アラシ、攻撃を続けろ!地底に潜らしちゃいかん!!」
「それ!」
ムラマツキャップが叫ぶ。アラシ隊員が咆える。

ロケット弾を雨あられと打ち込むアラシ隊員駆るビートル2号。
しかし怪獣はそれをかいくぐり、結局地底へ潜ってしまった。
「ちきしょう!!」
悔しがるアラシ隊員。あと少しの所で怪獣を逃がしてしまった。

その時、イデ隊員が地上に人影を発見した。
「キャップ、人がいます」

ビートル1号機は緊急着陸。
ムラマツキャップとイデ隊員は地上にいる男のもとに向かった。
「どうしたんです?」
イデ隊員が切り出すと、男はとんでもないことを口にした。
「二日前から坑内に友人が入ってるんです。
 金にとりつかれた男で、どんなに呼んでも出てこないんですよ」
「怪獣の出現で坑内は恐らくメチャクチャでしょう。
 助かってる見込みは・・・」
ムラマツキャップが男に説明するが、男は金鉱の中についてある程度知識があった。
「いやあ、一度入ったことがあるんですが、東北東1キロの地点に天然の大洞窟があるんですよ。
 そこへ入ってれば大丈夫です」
それを聞いていたイデ隊員がキャップの前に進み出た。
「キャップ、潜りましょう!」
「お願いします」
男もムラマツキャップにすがるように言った。



一瞬迷ったムラマツキャップもついに地下に潜る決意を決め、ビートル2号機に無線を飛ばした。
「ハヤタ、我々はベルシダーで地底に潜る。
 追い上げるから現れたらやっつけてくれ。
 それまで上空で待機。いいな」
「了解」

いよいよベルシダーがベールを脱ぐときがやってきた。
真っ赤なボディにシルバーのドリル。
これがイデ隊員新開発の地底戦車ベルシダーだ。
「イデ、しっかりやってくれ」
ベルシダーが動き出し、地底に穴をあけ始めた。
「頼むぞ、ベルシダー」
わが子に話しかけるようにイデ隊員はベルシダーの操縦管をなでる。



地中に潜ってすぐ、ベルシダーの地底レーダーは怪獣を捉えた。
「早い早い!ベルシダーの3倍の速さで進んでいます。現在東南東5キロ」
なんという早さだろう。
ベルシダーは地中では、最速20キロで進行する。
ということは、この怪獣は地中を60キロで進んでいることになるのだ。
恐るべき怪獣だ。
地底でまともにやりあったら、とてもじゃないが勝てる見込みはない。

ともあれベルシダーは順調に地中を掘り進む。
だが、突然ベルシダーのドリルにかかる負担がなくなったと思ったら、
ベルシダー本体は、いきなり大きな空間に投げ出されてしまった。

そこは大きな洞窟だった。
ベルシダーは掘り進んだ末、洞窟の中に落ちてしまったのである。
「こんなところに洞窟があるなんて」
幸いにも落下した高さはそれほどでもなく、
ムラマツキャップとイデ隊員は前のめりになっただけで事なきを得た。

「これだな、問題の洞窟は。イデ、ヘッドライトをつけろ」
なるほど、地上にいた男が言っていた天然の大洞窟とはこれのことか。
イデ隊員がヘッドライトをつけると、その明かりに照らされ浮かび上がったのは、
作業服を着た一人の男の姿だった。

ムラマツキャップはマイクで男に呼びかけた。
「我々は科学特捜隊の者だ。要請を受けて君の救出にきた。
 さあ、早く来い。坑内は怪獣に破壊されて出口なしだぞ」
だが男はそれを拒絶した。
「いやだ!イヤだ!!嫌だ!!!」
「早く来い!命が惜しくないのか?」
男は全く地上に出る気などなく、ムラマツキャップの呼びかけに応じようとはしない。



「ちきしょう!」
業を煮やしたイデ隊員がベルシダーを飛び出し、男のもとへ走り寄ると、
男の両肩をがっちりとつかみ、問答無用でベルシダーの中へ放り込んだ。
「待て!さあこっちへ来るんだ」

だがあくまでも男は抵抗する。
「放せ!」
「おとなしくしてろ!」
イデ隊員が一喝した。
見れば男は肩に大けがを負っている。
シャツが血で真っ赤に染まっていたのだ。

「おい、この山には怪獣がいるんだぞ」
ムラマツキャップが諭す。
だが男は意味不明なことを口走った。
「いいか!いくら科学特捜隊でも、ゴルドンに手出ししたら承知しないぞ!」
「ゴルドン?」
「そうとも。この山の金鉱を発見したのは、このオレなんだ。
 その宝の山を、ゴルドンは台無しにしてしまった」
「ゴルドンが金を食べたとでも言うのか!?」
「ひとかけらも残さずだ!
 だから、ゴルドンの体は、純金でできてるんだ」
そこまでいうと男は壁にもたれかかった。
出血多量で体力もかなり消耗している。
男の話を聞いたムラマツキャップは唖然としてイデ隊員を見た。

倒れこみながら男がまた口を開いた。
「あの金は全部オレのものだ。手を出したら、承知しないぞ」
自分の命よりも金にこだわるこの男に、
ムラマツキャップも少々あきれた様子だ。

「よおし分かった。金は全部お前のものだ。
 安心して少し休め。ひどい傷じゃないか」
ともかく男を落ち着かせねば。ムラマツキャップはその場を取り繕ったが、
その言葉を聞いた男は狂ったように笑いだした。
「オレが寝てる間に、金を横取りしようってんだろ!そうはさせんぞ」
「出血多量で頭がおかしくなってる。イデ!」
ムラマツキャップはイデ隊員を操縦席に戻し、
自分はこの男の介抱に努めることにした。
でなければこの男、何をしでかすかわからない。



しかしこの時、ベルシダーのレーダーはとんでもないものをキャッチしていた。
「キャップ、ゴルドンはこっちへ近づいてきます」
「なに!?」
こんな時に。男に気を取られてゴルドンを忘れていた。

致命的なミスだ。
ムラマツキャップはイデ隊員に指示を出す。
「ヘッドライトを消せ。横穴を掘って退避しろ。衝突したら一巻の終わりだぞ」
ベルシダーはすぐさま反転し、洞窟の壁面に穴をあけて姿を隠した。
間一髪、ゴルドンが通過したのはその直後だった。

間一髪危機を免れたベルシダーは、ゴルドン通過を見計らい再び洞窟に出た。
「イデ、後を追うんだ。行け!」
今度はゴルドンの後を追い始めるベルシダー。

やがてゴルドンは洞窟の一角で足を止めた。
金鉱でも探しているのか?
「エンジンを止めろ、様子を見るんだ」
しかしこんな重大な局面であるにもかかわらず、
先ほどの男がまた絡んできたのである。
「オレの金を返せ、金を返せ!オレは、億万長者なんだ〜!」
だが男もついに力尽き、イデ隊員の肩にがっくりともたれかかった。

しょうがない、といった顔つきで男を支えたイデ隊員は、男の体が異常に熱いことを知った。
「ひどい熱だな。キャップ、早く地上に運ばなきゃ!!」
「頼む」
ムラマツキャップは男をイデ隊員に任せ、自分はゴルドンの動きを見張った。
すでに気を失った男を後部座席に寝かせるイデ隊員。



その時、
「ゴルドンが近寄ってくるぞ」
ムラマツキャップが叫んだ。
イデ隊員は急いで操縦席に戻るが、今から逃げても間に合わない。
ゴルドンとベルシダーではスピードが違いすぎる。
「よし攻撃だ」
もはや迎撃するしか道はない。

「アラシ、アラシ」
ムラマツキャップは地上と連絡を取った。
「はいキャップ、ベルシダーの上空にいます」
「攻撃する。地上に追い上げるから後を頼むぞ」
「了解!」
地上にこちらの様子を伝えると、ベルシダーはゴルドンめがけて突っ込んでいく。

「イデ、エンジン全開」
ついにベルシダーはゴルドンの正面に陣取った。
なんて大きな、迫力のある怪獣なのだろう。

そして射程圏内に入った。
「光線銃発射用意」
イデ隊員が光線銃のレバーを握る。
「撃て!」
光線銃はゴルドンの首にヒットした。効いている。
このまま地上に逃げてくれれば。



しかしゴルドンは、ベルシダーに向かってきた。
光線銃の光を嫌ったゴルドンは、前足でベルシダーを振り払うように弾き飛ばすと、
そのまま地上に逃げて行ったのであった。

(後編に続く)

このページのトップへ