| ULTRA WORLD ウルトラマン 第30話前編 |
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| 山々を覆う純白の雪。 降り注ぐ黄金色の陽の光。 あたり一面はキラキラと宝石のように輝きを放つ。 雪原を割って走る貨物列車。 高い背丈のモミの木から滑り落ちるパウダースノー。 そして、雪の中を泳ぐように走る一人の女の子・・・ ![]() ここは、都会から遠く離れた山奥のスキー場である。 最近開設されたばかりだが、雪の量が多いので人気を呼び、 休暇になると大勢のスキーヤーたちが集まってきた。 若者たちは皆、笑顔でスキーを楽しんでいる。 その傍らで、都会から来たスキーヤーたちを楽しそうな笑顔で眺める一人の女の子。 そう、さっき雪原を走っていた少女だ。 彼女はまるで自分の家の居間にいるかのように雪に寝そべり、 頬杖をついて、スキーヤーたちを見守るように笑いかける。 その服装、どうやら土地の者だろう。 ![]() 彼女の表情が変わったのは、 スキーヤーに交じって担架に乗せられてきた、遭難救助者を見た時だった。 彼女はあわてて起き上がり、救助隊が向かうロッジとは反対の方向に まるで逃げるかのように走り出した。 救助隊はロッジにたどり着き、救助者を暖かい部屋へと運んだ。 「おい、着いたぞほら。しっかりしろほら!」 救助隊の一人が大声で呼びかける。 「いやあ、発見が1時間遅れたら、凍死しているところだ」 「一体どうしたんだ!?」 「さあ知らん。イイダ山の麓で倒れてたんだよ」 救助者は雪山の中で気を失っていたらしい。 救助隊の一人が救助者の口にウィスキーを流し込む。 「おい!しっかりしろ!マチムラ!しっかりしろ!」 すると、マチムラ、と呼ばれた男は、 それが気つけ薬だったかのように意識を取り戻した。 どうやら一命は取りとめたようだ。 「どうしたんだ。お前のようなベテランの猟師が遭難するなんて、変じゃないか」 救助隊のリーダーがマチムラに話しかける。 マチムラは夢の中を彷徨うかのような曖昧な口調で、 信じがたいことを口にした。 「ウーに・・・やられた・・」 「ウーだって!?バカを言うな。 今時そんなものがいるわけない。凍死寸前で幻でも見たんだろう」 マチムラの言葉は即座に否定される。 だが彼はうわごとのように話を続けた。 「本当に、見たんだ」 確信があるのだろう。 彼は朦朧とした意識の中で、 雪山で遭った信じがたい、そして恐ろしい現実を話し始めた。 「オレは熊の親子を追ってるうちに、いつの間にか鬼門のイイダ山に迷い込んでいた。 オレは気が焦っていた。なにしろもう3日も獲物を追い続けていたんだからな」 そう、マチムラは膝まで潜ってしまうような雪原を獲物を求めて彷徨い歩き、 やっとのことで獲物の影を発見したのだった。 「とうとう見つけたぞ。 オレはそう思って銃を構えた。 だがよく見るとそりゃ熊じゃなかった。雪ん子だったんだ。 またかと思ってオレは腹が立ってきた。 もう何度となく、オレたち猟師の仕事を邪魔してきたんだ。 よし、とっちめてやろうと思い、脅かしに一発ぶっ放したんだ」 雪ん子とは、さっきゲレンデで楽しそうにスキーヤーを見つめていた、あの女の子のことだ。 マチムラが見つけた時、雪ん子は白い野ウサギを抱いていた。 彼女は猟師たちに追われたケモノを守り逃がしていたのだ。 おかげで猟師たちの収穫は渋り、雪ん子は村人から迫害されるようになった。 マチムラは逃げる雪ん子の後を追いかけた。 「こら!待て!!雪ん子!!こら!逃げるな!!」 雪原を割って雪ん子は走る。 「おい!逃げるんじゃない!!」 マチムラが威嚇の号砲をあげる。 逃げ切れないと知った雪ん子は、 突然白銀の山々に助けを求めるように叫び声をあげた。 「ウー!ウーよ!!助けて!!」 ![]() その叫びが何を意味するのか、マチムラには理解できなかった。 しかし雪ん子が二度目の叫び声をあげた時、 マチムラは信じられない事実を目の当たりにした。 「ウー!ウーよ!!」 雪ん子の叫びに誘われるかのように風が雪を運ぶと、 白くかすんだ山の向こうに、とてつもなくでかい、白い怪物が姿を現したのだ。 ウーだ。 雪ん子が呼んだウーが姿を現した。 マチムラは驚き、ウーに向けてライフルを発砲しながら今来た道を後退していった・・・ ![]() 「幻じゃない。あれは確か昔、バア様から聞いたことのある、ウーだ」 「本当かね!?」 「オレには信じられないなあ」 ロッジで話を聞いた救助隊・・村人たちにとっては、マチムラの話は信じがたいものだった。 話をしながらマチムラは、意識もはっきりしてきたのだろう。 力をこめ、あまりに真剣に話すその表情に、 だんだんと村人たちもざわつき、誰もが心に一抹の不安を覚え始めた。 「しかし、もし本当だとしたら、スキー客も大勢いることだし、大変なことになるぞ。 すぐ警察に調べてもらおう」 「警察よりこういうことは科学特捜隊に頼んだ方がいいぞ」 村人たちは話し合った末、 この事件を科特隊に通報することにした。 この時、窓の外でその一部始終を聞いていた雪ん子のことなど気づく者もなく・・・ 雪山で、ベテランのハンターが遭難したというニュースは、 地元の警察から科学特捜隊に急報された。 ムラマツ隊長はこの事件を調査するため、 ハヤタ、アラシ、イデの3隊員を現地に派遣した。 「すると『ウー』って怪物は、海坊主とか雪女のような架空の生き物なんだなあ」 現地に向かうビートルの中、『ウー』の情報を聞いたイデ隊員は、 おとぎ話を語る心境だった。 「しかし、猟師は確かに見たと言い張ってるらしい」 そう答えてはみるものの、アラシ隊員も『ウー』の存在に疑問符を打っている。 ![]() 「雪山は人間の心を惑わすっていうからなあ。 山の神秘が猟師にそういう幻を見せたんだろう」 「ボクも、そう考えたいね」 おとぎの世界のイデ隊員の言葉にハヤタ隊員が同調した。 夢まぼろしであってほしい。できることなら戦いたくはない。 ハヤタ隊員の本心から出た言葉が、ビートル機内の『会議』にピリオドを打った。 どこまでも白い雪原を走る雪ん子。 木の陰では数人の男の子たちが隠れ、雪ん子の行動を見張っている。 村の子供たちだ。 雪ん子は男の子たちの姿を見つけ、嬉しそうに走り寄る。 が、彼女は男の子たちが仕掛けた落とし穴に体ごと落ちてしまった。 「やーい落ちた落ちた」 「いいぞいいぞ」 口々にはやし立てる男の子たち。 どうやら彼らは雪ん子を嫌っているようだ。 男の子の一人が、穴の中で倒れる雪ん子の前に立った。 「やい雪ん子。オレのあんちゃん、ウーのためにもう少しで死ぬところだったんだぞ。 雪ん子じゃなくて、怪獣っ子だよ。ウーはお前がいるから出てきたんだろ。 早くこの村からどっか行っちまえ」 マチムラの弟だ。彼は危うく凍死しかかった兄、マチムラの仇で 雪ん子を落とし穴に誘い込んだようだった。 男の子たちは足元の雪を蹴り、雪ん子に浴びせかけた。 その雪をまともに顔に受けた雪ん子は、 悲しそうな顔で男の子たちに向かって叫んだ。 「ウーは何もしないわ。どうしてこんな意地悪をするの? みんなと仲良く暮らしていきたいのに・・・なぜ私だけ除け者にするの!?」 しかし男の子たちがそんな雪ん子に耳を貸すことはなかった。 ![]() 「雪ん子は雪女の子だってみんなが言ってらあ。仲良くなんか出来るもんか!」 「早くどっか行っちまえ!」 口々に雪ん子を罵り、足元の雪を蹴って雪ん子にぶつける男の子たち。 その上空を科特隊のビートルが通過していった。 「アッ!科学特捜隊だ」 「かっこいいなあ」 「雪ん子、科学特捜隊が、ウーを退治しにきたんだぞ」 羨望のまなざしでビートルを追う男の子たち。 だが雪ん子は科学特捜隊に、彼らとは全く違う思いを持っていたのだった。 「着陸スタンバイ」 ハヤタ隊員の号令で、赤いジェットビートルは純白の雪原に着陸した。 ビートルを降りたハヤタ、アラシ、イデの3人は早速、 スキー片手に被害のあったというゲレンデに急行した。 「ほぉー、すごいなあ。空気がおいしいなあ。 絶景かな絶景かな」 あまりの景色にイデ隊員の頬は緩みっぱなしだ。 そんなイデ隊員をあとに残し、ハヤタ、アラシの両隊員は、 ゲレンデの責任者=先ほどの救助隊のリーダー=アキタに事情聴取を求めた。 「あれが問題のイイダ山です」 アキタ氏はイイダ山を指差し、説明を始めた。 「幻の雪山と言われる不思議な山でしてね。 どういうわけかあの山だけが、夏でも雪に覆われてるんですよ」 「特殊な気流が流れ込んでるんですか?」 ハヤタ隊員が聞いてもアキタは渋い顔をするばかり。 「さあ・・・気象台の先生方も、ミステリーゾーンと言って、サジを投げてしまってるんです」 「イイダ山に行くにはどの道を?」 「あのコースを伝っていけば行けるんですが・・・」 「相当危険ですね」 あまりの難コースに、アキタ氏もハヤタ隊員も眉をひそめる。 それでもとにかく行ってみるしかない。ハヤタ隊員は決断した。 「ウーはこの地方の伝説の怪獣ですから、まさかと思うんですが、 ウーの噂を聞いてお客さんは減るし、村の山岳救助隊も怖気づいて協力しないし、困ってるんですよ。 どうか科学特捜隊の力で真相を突き止めてください」 アキタ氏も今回の騒動で村人たちに突き上げあれ、 かなり参っているらしい。 藁をもすがる表情で科特隊に泣きついた。 「分かりました!こんな美しい雪山を汚す怪物は、 もし本当にいたら、科学特捜隊の新兵器でたちどころに退治して見せます。 ま、任しといてください」 ロマンチストなイデ隊員が、またしてもお調子ぶりを発揮する。 ![]() 「猟師がウーを見た場所は?」 「はい、この谷間です」 あくまで現実の世界に身を置くハヤタ隊員は、アキタ氏に正確な場所の確認を求め、 広げた地図をしっかり記憶しようと見入り込んだ。 もちろん、『ウー』に集中するあまり、 雪原に隠れるように4人の話を聞き込んでいた雪ん子の姿に気づく者はなかった・・・ 科特隊はただちに『魔の山』に向かってスキーを滑らせた。 雪山に建てられたナンバー入りのフラッグを目印に、 3人は快調にスキーを滑らせ『魔の山』へと向かっていった。 しかし、なぜだろう。 地図で見た地形、場所とは全く違うところに進んでいく。 「おっかしいなあ、地図と全然違うじゃないか」 最初に気づいたのはハヤタ隊員だった。 「そういえば、イイダ山がだんだん遠くなっていくなあ」 アラシ隊員がイイダ山を指差した。 「雪のエンゼルが、あの山は危険だぞ、って標識の方向を変えたのかな」 相も変わらずロマンチストなイデ隊員だが、 アラシ隊員はすでに疑いを持ち始めていた。 「いや、誰かが妨害しているとしか思えん」 「頂上を見ながら進もう。行くぞ」 ハヤタ隊員の号令と共に再び滑り始める3人。 ![]() だが・・・ 「あっ!うわ!!おーい助けてくれ!!」 ハヤタ隊員が落とし穴に落ちた。アラシ隊員がすぐさま滑り寄る。 「あっ、おい!ハヤタ!誰だこんなとこに穴を掘ったのは」 アラシ隊員が滑り寄り、ハヤタ隊員を穴から引き揚げる。 近くのモミの木の陰から走り去る人影をイデ隊員が見つけた。 「待て!」 叫ぶと同時に飛び出し後を追う。 その距離は急速に縮まり、イデ隊員はすぐに逃げる人影を確保した。 それは雪ん子だった。 イデ隊員は捕えた雪ん子の両肩をつかみ自分の方を向かせた。 「犯人は君だな。なぜあんなことをやったんだ。 ボクたちが誰だか知っているのか」 イデ隊員の詰問に、しかし雪ん子は敢然と立ち向かった。 「何でもかんでも怪獣呼ばわりして殺してしまう、恐ろしい人たちだわ!」 「恐ろしい人たち? 違う。我々科学特捜隊は、人類の平和を乱す怪獣だけを退治するんだ」 「嘘!ウーを殺しに来たクセに!」 「ウー!?君!猟師が見たというその怪獣は、本当にいるのか」 「ウーは怪獣じゃないわ!」 雪ん子はイデ隊員の顔に雪玉をぶつけ、イデ隊員がひるんだ隙に走り去ってしまった。 「なんだあいつ」 顔についた雪を払いながらイデ隊員は逃げた雪ん子を睨みつけていた。 中編に続く |